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US Case Brief (21) 非自明性の判断における教示-示唆-動機

特許業務法人 原謙三国際特許事務所
平成17年05月09日
(文責:新 井)

非自明性の判断における教示-示唆-動機


TELEFLEX, INCORPORATED Plaintiffs-Appellants, vs. KSR INTERNATIONAL CO.,
Defendant-Appellee. (判決:2005年1月6日)

1.概要
 Teleflex, Incorporated(以下、原告と称す。)は、自動車に用いられる位置調節可能ペダル(adjustable pedal)に関するU.S. P. N. 6,237,565(以下、565特許)を所有している。原告は、KSR International Co.(以下、被告と称す。)に対し565特許を侵害しているとして、連邦地裁に提訴した。被告は、争点である565特許のクレーム4が米国特許法103条(a)に規定の非自明性の要件を満たさないので、上記特許は無効である旨、開陳した。2003年12月12日、地裁は565特許のクレーム4は、非自明性の特許要件を具備しないとして無効と認定した。原告は、これを不服とし、CAFCへ控訴した。CAFCは、クレーム4の全ての構成要件は複数の公知技術に開示されていると認め、さらに、クレームされたとおりに発明を組み合わせるための教示(teaching)-示唆(suggestion)-動機(motivation)が上記複数の公知技術中に存在しないので、非自明性の特許要件を具備しないとの地裁の認定を破棄し、地裁に対して審理を行うよう命じた。

2.特許発明の概要
 565特許のクレーム4は、自動車用の位置調節可能ペダル(adjustable pedal)に係り、電子スロットル制御装置と共に電子的に制御されるものである。クレーム4の位置調節可能ペダルは、電子制御装置と協働して動作する。電子制御装置は、ペダル旋回軸に応じて、アクセルペダルの通常位置と踏み込み位置との相対位置を表す電気信号を生成する。
 クレーム4は特に、電子制御装置がペダル位置可変部品のサポートブラケットに据え付けられている点を特徴としている。この配置により、ペダル位置調整中にペダル位置可変部品上で電子制御装置が動いてしまうことを防止している。

3.地裁の判断
 原告は、被告が565特許クレーム4を侵害するとして、連邦地裁に提訴した。被告は、クレーム4が米国特許法103条(a)に規定の非自明性の要件を満たさず、特許は無効である旨、開陳した。
 地裁は、565特許のクレーム4と公知技術とを比較し、クレーム4の構成要件は全て公知技術に開示されている旨の認定を行った。公知技術U.S.P.N.5,010,782(以下、Asano特許と称す。)は、電子制御装置を除くクレーム4の全ての構成要件を開示している。一方、電子制御装置はU.S.P.N.5,819,593(以下、Rixon特許と称す。)に開示されているように公知技術としてよく知られている。
 地裁は、これら公知技術を組み合わせることの示唆または動機が存在するか否かについて、565特許のクレーム4の「解決すべき課題」に焦点を当てた。クレーム4は、低コスト化、シンプル化、コンパクト化を課題としている。一方、地裁は、Rixon特許が、複雑化した装置に対する課題を述べていると認定した。Rixon特許には、「ペダル位置センサーはペダルハウジング内に存在しており、ペダルの調整に伴う前後の動作によりワイヤ破損という問題が生じる。」と記載されている。この記載に基づいて、地裁は、ドライバーのペダルアーム調整中に、ペダルアームと共に移動することのない電子制御装置が必要とされていたことが課題となっていたと認定した。このことから、地裁は、Asano特許とセンサーの知識を持った当業者であれば、Rixon特許が抱える課題を解決するためにこれら先行技術を組み合わせることの動機付けになるであろうと認定し、特許は自明であるとして特許無効の判決をなした。

4.CAFCの争点
解決課題が、教示-示唆-動機にどのように適用されるかが争点の根底である。
本ケースにおいては、電子制御装置を除く全ての構成要件が、一の公知技術に開示されており、電子制御装置が他の公知技術に開示されている。この場合、公知技術中に、クレームされたとおりに発明を組み合わせるための教示、示唆、または動機が存在するか否かが争点となる。地裁は565特許の解決課題に焦点を当てたが、控訴審では教示-示唆-動機における解決課題の取り扱いが問題となった。

5.CAFCの判断
複数の先行技術が、特許発明の解決課題に正確に言及している場合、組み合わせることの動機が存在すると認定される。CAFCは、教示-示唆-動機に関し、「解決すべき課題、公知技術中の開示、または当業者の知識に基づき、クレームされたとおりに、Asano特許を電子制御装置に組み合わせるための示唆または動機が存在しているかどうかに関し特別な判断が要求される」との見解を示した。すなわち電子制御装置をAsano特許のサポートブラケットへ取り付けるための示唆または動機に関して特別な判断が要求される。
CAFCは、地裁が、「解決すべき課題は公知技術に開示された事項を組み合わせる示唆または動機の根拠となる」と認定した点を支持し、Ruiz事件を挙示した。Ruiz事件では、同様に2つの公知技術に特許発明の構成要件が開示されていた。それぞれの公知技術には特許発明の解決課題と同じ基礎構造の支柱に関する問題点が、正確に記載されていたことから、これら2つの公知技術を組み合わせることの動機が存在すると判示された。
 CAFCは、Ruiz事件を引用し、2つの公知技術が、特許発明の解決しようとする問題に正確に言及している場合、組み合わせることの動機が存在すると認定した。565特許の課題は、より小さく、より簡素で、より安価な電子ペダル部品を提供することにある。これに対し、Asano特許はコンスタントレシオ問題を解決することが課題であり、565特許と同じ問題点を記載していない。また、Rixon特許も565特許の問題点を記載していない。以上のことから、CAFCは、地裁が、非自明性の認定に当たり、誤った教示-示唆-動機を適用したと結論した。

6.結論
 CAFCは、地裁の決定を無効とし、非自明性に関し更に審理させるために地裁へ差し戻す旨の判決を下した。


以 上

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