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U.S. Case Brief (37) 引用文献の組み合わせに基づく新規性に係る判断および新規事項導入に係る判断が示された判例
特許業務法人 原謙三国際特許事務所
平成20年09月29日
(文責:新 井)
引用文献の組み合わせに基づく新規性に係る判断および新規事項導入に係る判断が示された判例
(CSIRO v. Buffalo Technology Inc., and Buffalo, Inc., (Fed. Cir. 2008) DECIDED: September 19, 2008, リンク先:http://www.cafc.uscourts.gov/opinions/07-1449.pdf)
1.はじめに
CSIRO(Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization)(オーストラリア政府の研究機関)は、特許を保有しているが、特許発明を実施していませんでした。CSIRO は、直接競合関係にないBuffalo Techを相手取った侵害訴訟(テキサス州東部連邦地裁に提訴)に勝訴し、判決において、spread spectrum WLAN technologyを保護すべく、Buffalo Techに対して恒久的な差止命令が出されました。
この際、テキサス州東部連邦地裁は、差止の判断基準である4要件(*)に関し次のように判示し、CSIROによる差止請求を認めた。
(*)
(i) 取り返しがつかないほどの損害
知財のライセンス料を先端的なR&Dに用いているCSIROは、Buffaloとの間において市場で競合していない。しかし、CSIROは、他の研究機関とは競合関係にある。過去に被った損害賠償のみでCSIROが被る損害を救済することはできない。
(ii) 法的に可能な救済の十分性
差止を認めなかった場合、CSIROは、今後ライセンスを供与する以外に救済する術がなくなってしまう。許諾実施条件の決定権をCSIROは有しているが、差止を認めなかった場合、過去の損害賠償を算定する際に用いられる条件が、将来の許諾実施条件となり得るので妥当性を欠くことになる。
(iii) 当事者間の困窮の収支
差止を認めた場合、Buffalo Tecは、米国での製品を販売できなくなるが、これは金銭的損害として捉えることができる。
(iv) 公益性
特許権の正当な行使は、原則的に公益に適合する。
これを不服とし、Buffalo Tech はCAFCに控訴しました。CAFC では、差止請求について争われましたが、CAFC は、上記侵害訴訟の判決を破棄しました。ただし、差止請求については後日争われることとなりました。上記破棄は、連邦地裁による引用文献の組み合わせの動機付に係る厳格な要件を根拠とするものでした。
2.引用文献の組み合わせに基づく新規性の判断
CAFCにおいて、引用文献の組み合わせに基づく新規性について争われました。Buffalo Tech は、2つの引用文献の組み合わせに基づいて新規性の有無が判断されるべきことを主張した。なぜならば、これら2つの引用文献は、一方が他方の脚注において引用され説明されている関係にあったからです。CAFCは、この主張を斥けました。その理由が、「一方の引用文献の脚注において他方が記載されているだけでは、2つの引用文献を組み合わせるには不十分である。」にあることが示されました。具体的には、CAFCは、Advanced Display Systems, (Fed. Cir. 2000).”の判例を引用し、「特に、一方の引用文献が、どのような特定材質が含まれているかについて詳細に示されておらず、種々の文献のどこにその材質が記載されているかについても明確に示されていない」ので、2つの引用文献の組み合わに基づいて新規性を判断することは不適切である旨、判示しました。
3.新規事項について
35 USC 132には、特許出願後に新規事項を導入することを禁止する旨が規定されています。上記の侵害訴訟において、Section 112に規定の記載要件を根拠に、新規事項が導入された本件特許が無効である旨、Buffalo Techが開陳しました。新規事項に係る制限は厳しくなく、むしろ、出願当初の明細書が、当業者であれば、発明者が発明したクレームに記載の発明の主題を十分認識できる程度に記載している場合に限り、その特許は無効であるとすべき旨が判示されました。しかも、PTOが審査段階の補正を許可したことが、その補正の適正さを示す重要な推定を形成するものであるとの判断が示されました。
CSIRO は、審査段階で「10 GHz を超える周波数」から単に「無線周波数」にクレームを補正しました。CAFCは、連邦地方裁判所における事実認定である、「上記補正が、許されないほどの新規事項の追加には該当しない(明らかな誤りはない。)。」旨の認定を支持しました。特に、本件当事者は、低域周波数の取扱いにおける技術的な差異を提示していませんでした。更に、CAFCは、当初明細書において、「10 GHz を超える周波数」に限定していないことを確認した。
Claim 42. A transceiver for operation in a confined multipath transmission environment, said transceiver comprising antenna means coupled to transmission signal processing means and to reception signal processing means, said transmission signal processing means in turn coupled to an input data channel, said transceiver being operable to transmit and receive data at radio frequencies, said transmission signal processing means comprising modulation means for modulating input data of said input data channel into a plurality of sub-channels comprised of a sequence of data symbols such that the period of a subchannel symbol is longer than a predetermined period representative of the time delay of significant ones of non-direct transmission paths, means to apply data reliability enhancement to said data passed to said modulation means and means, interposed between said data reliability enhancement means and said modulation means, for interleaving blocks of said data.
4.判決
CAFCは、非自明性について連邦地裁において再考するために、本件を差し戻す旨の判決を下した。