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鑑定書を弁護士から入手していないことが侵害教唆(inducement)の意志があったと推定する根拠となり得ることが示された判例

特許業務法人 原謙三国際特許事務所
平成20年10月06日
(文責:新 井)

鑑定書を弁護士から入手していないことが侵害教唆(inducement)の意志があったと推定する根拠となり得ることが示された判例
(Broadcom Corporation v. Qalcomm Incorporated (Fed. Cir. 2008), 2008-1199, -1271, -1272、05-CV-467, DECIDED: September 24, 2008 リンク先:http://www.patentlyo.com/patent/2008/10/shaping-nuanced.html



1.概要
Qualcomm Incorporated (“Qualcomm”) は、Broadcom Corporation (“Broadcom”)が所有する3件の米国特許(USPNs. 6,847,686 (“686 patent”), 5,657,317 (“317 patent”), 6,389,010 (“010 patent”))をQualcommが侵害しているとの陪審裁判のDecisionを不服とし、連邦地方裁判所へ提訴したが敗訴し、連邦地方裁判所による恒久的に差止命令を不服とし、CAFCに控訴しました。
CAFCは、連邦地方裁判所による’686 patent のクレーム解釈に誤りがあったので、上記特許権侵害に係る陪審裁判のDecisionを破棄すると共に、クレーム3を適切に解釈した結果、クレーム3は無効である旨を判示しました。連邦地方裁判所の’317 patent に係る解釈には誤りはなかったので、且つ、実体的証拠が、侵害に係る陪審裁判のDecisionおよび’317 and ’010 patentsの有効性に係る評決をサポートしているので、CAFCは、’317 and ’010 patentsの侵害性およびこれらの特許に関する差止に係る連邦地方裁判所の判決を支持しました。

CAFCは、鑑定書を弁護士から入手していないことが侵害教唆 (inducement) の意志があったと推定する根拠となり得ることを判示しています。このように、侵害教唆(inducement)に関し、弁護士の鑑定書を入手しておくことが有効であるようです(リンク先:http://www.cafc.uscourts.gov/opinions/08-1199.pdf)。なお、Seagate判決 (In re Seagate Technology, LLC) においては、弁護士の鑑定書を入手していなかったからといって、故意侵害 (willful infringement) と認定されるとは限らない旨、判示されていました。

2.CAFCの判示
CAFCは、連邦地方裁判所の判決(Qualcomm に対する永久差止)を支持し、連邦地方裁判所が、衡平法上の裁量権内で適切に処理し、eBay v. MercExchange (2006)の連邦最高裁判決における差止救済ガイドラインに従って差止救済を行った旨、判示しました。

CAFCは、今回も、特許健が侵害されたとの認定が回復不能な損害の推定証拠としての役割を果たすべきか否かの決定を差し控えました。Quoting Amado (Fed. Cir. 2008)事件において、指摘されているように、回復不能な損害の反証可能な推定が、eBay事件後も残存しています。

(2-1) 回復不能な損害について
特許権者であるBroadcomは、問題の特許に記載のクレーム発明を製造、販売していないという意味で発明を実施していないが、代替のチップセットを製造している点においてQualcommと間接的に競合関係にありました。CAFCは、eBay事件が、実施していない団体に差止救済権を付与することを妨げる旨を一般ルール化するものではないことに同意しました。Broadcomが回復不能な損害の可能性を示すことができたことにも同意しました。

Broadcomは、特許クレーム発明を、これまでのところ実施していないという事実があるにもかかわらず、回復不能な損害の証拠を提示しました。これは、eBay事件と一致しています。eBay事件において、最高裁は、次のように警鐘を鳴らしています。すなわち、「伝統的な衡平原則は、特許権者が、ライセンスを供与する意志があること、または特許発明を実施することにおいて商業活動の意志があることに基づいて、特許権者が回復不能な損害を確立できないことを推定するほど広くない。」

(2-2) 回復不能な損害について
CAFCは、次のように判示しました。「Broadcom は、特許権に係るライセンスをVerizonに供与していました。特別な市場状況が考慮されなければならないことが重要なファクタであるが、ライセンス供与は、理論的には、金銭的な損害賠償として十分である。本件のばあい、Verizon へのライセンス供与は、垂直的な(縦関係の)ライセンス供与であり、Qualcomm に対するライセンス供与は、水平的なライセンス供与である。したがって、Verizon へのライセンス供与が、直接の競合者に対する強制実施許諾の効果にほとんど影響を与えない。」

(2-3) 窮状と公益について
連邦地方裁判所は、差止命令を下したが、これはサンセット条項(廃止期日が明記され、議会で再認可されなければ自動的に廃止される法律)でした。したがって、計画によれば、Qualcommは、強制実施許諾料を支払いながら、20ヶ月もの間侵害し続けることが可能です。ただし、この20ヶ月の満了以降は、更なる侵害行為をすることは許されません。これは、侵害者にとって有利であり、上記十分な期間に、業務を中断することなく、再設計等の措置を講ずることができます。

この判決は洞察に満ちたものです。なぜならば、差止命令を下すべきか否かという問題から、依然として財産権を保護しつつ公益の最善化を図る方法という特別な意味合いを持たせた問題へ焦点を巧みに移動させているからである。複雑な差止と進行中の強制実施許諾という関連する一つの問題は、連邦地方裁判所が継続してモニタし且つ状況に応じて判断を下さなければならない問題です。なお、本件の場合、連邦地方裁判所は、Qualcomm が$93 millionを超えるロイヤリティの支払を軽視して支払わなかったことを確認し、総収益金の支払をQualcommに命じたばかりでした。

以 上

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