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Inventorship とクレームの範囲に関する判例

特許業務法人 原謙三国際特許事務所
平成20年10月20日
(文責:新 井)

Inventorship とクレームの範囲に関する判例
Lucent Technologies, Inc. et al. v. Gateway, Inc. et al., Nos. 2007-1546, -1580 (Fed. Cir. Sept. 25, 2008) 



1.はじめに
inventorship の決定を活用することによって、企業に利益をもたらすことがあります。特許の所有権は異なるクレームの発明者間で分けることはできません。特許の一つのクレームの発明者は、その特許の全てのクレームの所有者です。このように、Inventorshipを考慮して、クレームの範囲を決定すべきです。本件は、inventorshipの興味深い活用を提示するものです。

2.簡単な経過説明
本件は、ディジタルオーディオファイルを圧縮する方法に係る2件の特許権の侵害に関係しています。特許権者は2件の特許権を侵害しているとの理由により陪審員裁判に提訴しました。これに対して、特許権者の言い分が認められ、侵害15億ドルを超える損害賠償支払を命じる陪審員評決が下されました。これを不服とし、被告は、連邦地裁に控訴しました。
連邦地方裁判所は、一方の特許に関する評決を支持するが他方の特許に対しては非侵害であるとの理由により、侵害被疑者が請求したJMOLによる判断を認めました。第1の特許に係る主張の根拠がないことに関し、連邦地方裁判所は、特許クレームの幾つかは特許権者段毒で開発されたものであるが、他のクレームは共同開発契約(JDA)下で特許権者と他の会社とによってなされた新しい研究に基づくものであると認定しました。このように本件特許は、共同所有の特許であるので、他方の会社が不在の状態で特許権を主張する根拠を欠いている旨、判示しました。

3.CAFCの判示内容
CAFCは、2件の特許に対する連邦地方裁判所の判決を支持しました。
共同開発契約(JDA)下で特許権者と他の会社とによってなされた新しい研究が何であるかを解釈する際、CAFCは、契約における既存技術の特別な定義に目を向け、既存技術がJDA前のパブリックドメインの技術までも広く含んでいるという特許権者の解釈を斥けました。
CAFCは、また、優先権主張の基礎となる明細書中に開示されていないことに依拠し、クレーム発明がJDAの期間に開発されたものである旨、認定しました。
具体的には、CAFCは、たとえクレームされた技術が当業者にとって自明であったとしても、自明性を示すことは発明を所有しているだけでは不十分であること、及び当業者の理解は、クレームの文言をサポートするのに十分な構成を開示する義務を解放するものではないことを強調しています。
特にその根拠に関し、Pope Mfg. Co. v. Gormully & Jeffery Mfg. Co., 144 U.S. 248 (1892)の判決を支持し、一つの特許の所有権をクレームごとに異なる当事者に分離することはできないと判示しました。
CAFCは、また、Israel Bio-Engineering Project v. Amgen, Inc., 475 F.3d 1256 (Fed. Cir. 2007) を引用し、一つの特許において1以上のクレームの発明者は、その特許の全てのクレームの所有者である旨を判示しました。
CAFCは、連邦地方裁判所が適切に上記判例に依拠して、特許クレームの幾つかは、JDAによってカバーされる期間において発明されたので、他方の会社は、上記特許の共同所有者であり、それゆえ、特許権者は、上記他の会社が不在の場合に特許侵害の訴訟を提起する根拠を有しない旨の適切な結論に達している旨、判示しました。

(参考資料)
CAFCは、クレーム1及び3がLucentの単独所有である(なぜならば、Lucentの複数の従業員によって発明されたものであったからです。)が、共同開発契約に基づきクレーム2及び4はLucentとその共同開発パートナーの共同所有である旨を判示しました。
CAFCは、プロセキューションを管理しているLucentが、複数のクレームを別々の特許に分割し、クレーム1及び3に記載の発明を単独所有できるようにしようと思えばできたはずであるとの判断を下しました。(裁判所は、残念ながら、特許可能な発明の主題とinventorship及び自明性の拒絶理由(obviousness under 35 UCS 103(c))とのバランスを取ろうとしている特許弁護士が直面している現実については何ら対応しませんでした。)

4.本件から派生する問題点
本件から次の問題点が浮かび上がってきます。
その一つは、実際に、共同開発契約を考慮してinventorship の決定をどのように行うべきかという問題です。たとえば、従来技術と微差が出る程度に広く特許出願をドラフトすべきか?あるいは、企業の発明者の貢献程度の広さに見合ったクレームを作成すべきか?inventorshipの線に沿って複数のクレームを現実的に分割した場合、自明性の拒絶理由(obviousness under 35 UCS 103(c))をやり過ごすことができるようになっているか? 本件判決は、inventorshipの決定とクレーム範囲の決定とが行われたときに、権利行使(enforcement)についても検討されるべきことを示唆しています。

他に考慮すべき事項は、共同開発契約書の作成です。本件は、交渉能力を備えた大企業が、共同開発パートナーに共同研究および共同開発プログラムの分野内の他者にライセンス供与をしないように求めるかも知れないことを暗示しています。

今回の判決に鑑み、以下の事項についても考慮すべきです。
・ 広いクレームを作成すると、追加発明者(共同開発パートナー)の貢献が、狭いクレームであってそれ程利用価値のないクレームにだけ存在する場合、この広いクレームをアクセスすることによって、追加発明者(共同開発パートナー)が予期せぬ収穫を手にする可能性があります。衡平法上の救済が不可能な場合も生じ得る。
・ 主要技術の所有者の貢献を保護するために、特許出願を別々にすることも検討すべき事項の一つである。
・ 特許出願のプロセキューションにおいて、キャンセルしたクレームが共同開発契約の相手方の発明者が発明したものである場合や、特許発行後の手続において権利の一部が放棄されたクレームが共同開発契約の相手方の発明者によって発明されたものである場合のことも想定しておくべき事項の一つである。

リンク先:
http://www.patentlyo.com/patent/2008/10/index.html http://www.winston.com/siteFiles/publications/FedCircSumVol1,Issue22.html

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