地理的表示(GI)保護制度のご紹介

地理的表示(GI:「Geographical Indication」の略)保護制度は諸外国では広く認知されている制度であり、日本でも2015年6月から登録申請を受け付けています。
世界では100カ国以上の国々で既に制度化されており、その地域は、アジア、中東、欧州、北米・中南米、アフリカ等と広範な範囲にわたります。

日本における地理的表示は下記の様に定義されており、2017年12月現在、58産品が既に日本で登録されております。

定義:「地理的表示とは、農林水産物・食品等の名称で、その名称から当該産品の産地を特定でき、産品の品質等の確立した特性が当該産地と結び付いているということを特定できる名称の表示をいう。」

地理的表示として保護を受けると、例えば、地域団体商標で保護を受けることによる商標的保護の側面とは異なる保護を受けることが可能です。
本ページでは、地理的表示保護制度の概要と、地理的表示として保護することの利点を中心に、以下説明させて頂きます。

 

 

地理的表示保護関係知財情報

地域団体商標と地理的表示 (作成 2018.02.09 更新日 2023.12.29) New

 

 

地理的表示の登録申請について

(1)農林水産省に下記の書類を提出して登録申請を行います。

①申請書:名称や生産地等を記載。
②明細書:生産者団体ごとの産品基準の説明等(*)を記載。
③生産行程管理業務規程:明細書に適合した生産方法等の規定を記載。

    * 明細書の作成には当該産品における専門知識が求められることが多く、特許出願における明細書の性質に近い作業が必要となります。

 

(2)登録審査においては、下記の点が審査されます。特に、①、②、③の順に審査項目としては重要になります。

①産品:特性と生産地の結び付きや、生産実績(*)の審査
②生産者団体:生産者団体において、加入の自由が規定されているか否か等
③名称:産地や産品を特定できているか、登録商標との抵触があるか等

    * 生産実績は概ね25年程度という長期にわたる生産期間が求められるのに対し、名称の使用実績の要件は、それよりも緩やかに審査されます。

 

(3)審査手続のフローは下記の通りです。

(出典:地理的表示保護制度 中央相談窓口(愛称:GIサポートデスク)のHPより引用)

登録後の取扱い

(1)登録産品についてGIマークの貼付が義務付けられます。一方、登録産品を用いた加工品にはGIマークの貼付は禁止されます。

(2)登録をうけた生産事業者は、明細書に定められた生産地、生産方法等を遵守する義務が生じます。生産者団体においては、生産行程管理業務規程に従って、明細書に適合した生産が実施されていることを確認する必要があります。
また、生産者団体には、毎年1回、国への実績報告が義務付けられています。1年に1度程度、国から当該生産者団体の元へ出向いて確認する現地調査も実施されているようです。

(3)地理的表示として保護を受けると、模倣品の排除を国が行ってくれる他に、GIマークの貼付により、一種の宣伝広告効果が生じ、登録産品の取引の拡大や取引価格の上昇等の効果が表れているようです。

 

地域団体商標制度との違いについて

 2006年4月より導入された同制度は、2016年12月31日の時点で、約600件の地域団体商標としての設定登録がなされています。
一方、地理的表示として保護を受けた登録産品は、上述の通り、2017年12月現在、58産品に留まっております。

しかしながら、地理的表示の保護の強化は、国際的な見地から日本においても強く求められており、諸外国との相互保護の利点を考慮すると、日本での登録産品も今後増えていくものと考えられます。

地理的表示保護と地域団体商標制度の違いは、下記の通り説明されます。

・地理的表示保護の大きなメリットとしては、「国が模倣品等の取締りを実施してくれる」、「相互保護が実現すると保護の範囲が諸外国にも及ぶ」、「特性のある品質を有する産品であることを対外的に示すことができる」という点が挙げられます。

・両制度は併用して登録することで、保護が強化されるという側面があります。

副所長  弁理士 今野 信二


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