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上記トレードマークの背景地図は、1991年当時の特許登録件数を陸地の大きさと形状に擬態化して、地図状に表現したものです。

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地域団体商標制度の概要について

2006年3月23日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 佐藤 由香理

1. 地域団体商標とは
地名を一部に有する商標について、事業協同組合や農業協同組合によって使用されたことにより複数の近隣都道府県に及ぶ程度の周知性を獲得している場合、通常よりも緩やかな要件の下で登録が認められる商標をいう。

2. 改正の背景
近年、他の地域の商品やサービスとの差別化を図るために、地域の事業者が互いに協力して地域ブランド(例;"夕張メロン","稲庭うどん","関サバ"等)を用いることによって、地域産業の活性化や地域おこしを目指す取り組みが全国的に盛んになっている。
その一方で、産地偽装や質の悪いサービスに同じ地域ブランド名を使用する等、知名度を獲得した地域ブランドの信用へのただ乗りや信用の毀損が問題となり、商標登録による地域ブランドの適切な保護への期待が高まっていた。
しかし、従来の商標法の下では、商品の産地、販売地、品質、役務の提供場所や質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標等に該当するとして(第3条第1項)、原則的に登録が認められなかったため、地域ブランドは適切な保護を受けることができない状況にあった。
そこで創設されたのが地域団体商標制度である。この制度を活用することにより、他地域の商品(役務)との差別化を図ることができるようになり、地域経済の持続的な活性化が期待される。

3. 地域団体商標の登録要件
(1) 主体的要件
地域団体商標の商標登録を受けることができる者は、法人格を有する事業共同組合その他の特別の法律により設立された組合であって、設立根拠法において構成員たる資格を有する者の加入を制限してはならない旨の定めがある組合、またはこれに相当する外国の法人である。 
団体商標と異なり、出願人たる団体の設立根拠法において不当に構成員の新規加入を制限してはならないことを要件に加重したのは、地域団体商標がもともと一事業者による独占に適さない等の理由により登録が認められなかった(第3条第1項各号)ものであることを鑑みれば、その登録を認めるに当たっては、商標の使用を欲する事業者に対して広く門戸を開放しておくべきだからである。
(2) 客体的要件
地域団体商標として商標登録が認められるためには、商標が以下の3つの要件を具備するものでなければならない。
① 構成員に使用をさせる商標であること
地域団体商標は、団体商標と同様に商品又は役務の出所が当該団体の構成員であることを明らかにするものである。そのため、地域団体商標は、団体が「その構成員に使用をさせる商標」であることが必要となる。したがって、団体のみが使用するものであってはならない。ただし、構成員に加えて団体自身が使用をする商標であってもよい。
② 周知性の要件
商標が使用された結果、出願人である団体又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることが必要である。
従来、周知性を獲得した商標については第3条第1項第3号から第5号に該当するとして登録が認められない場合であっても、同条第2項により周知性が認められれば登録が認められていた。しかし、第3条第2項の要求する周知性は実務上、全国レベルの浸透度であったため、全国的に周知とまではいえないような地域ブランドは保護を受けることが困難であった。このため第三者の使用に対する制限への配慮とのバランスをとりつつ、第3条第2項よりも緩やかな条件で独占権を付与したものである。
③ 商標が地域の名称及び商品又は役務の名称等からなること
地域団体商標として登録を受けられる商標は、以下のⅰ)~ⅲ)に示すように、第7条の2第1項各号に列挙されている、地域の名称と商品又は役務の名称等を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標である。
ⅰ) 地域の名称+商品(役務)の普通名称 (第7条の2第1項第1号)
ⅱ)地域の名称+商品(役務)の慣用名称 (第7条の2第1項第2号)
ⅲ) 商品(役務)の普通名称 産地等を表示する際に
地域の名称+ or +付される文字として慣 
商品(役務)の慣用名称 用されている文字 
(第7条の2第1項第3号)
これら一定の構成のものに限定した理由は、これらに該当しないものはもともと識別力を有すると考えられ、そのような商標は改正前においても登録可能であり、改めて地域団体商標制度によって登録を認める必要性が乏しいことによる。 
④ 地域と商品(役務)との密接関連性の要件 
商標中の「地域の名称」は、商品(役務)と密接な関連性を有する地域の名称であることが必要である。地域ブランドの保護強化のために商標の登録要件を緩和したこととの均衡を図ったものであり、地域との関連性がない商品(役務)に使用されている商標に対して安易な登録を認めるのは妥当でないからである。
⑤ その他一般的登録要件(第3条第1項第1号及び第2号、第4条等)
第3条の規定についての例外規定は設けられているものの、他の登録要件は通常の商標と同じである。通常商標及び団体商標と同様に独占的な権利(25条)が付与されるからである。 

4. 商標権の移転、使用権の設定について
(1) 地域団体商標に係る商標権は、譲渡することができない(第24条の2第4項)。
商標権の自由な譲渡を認めた場合には、特定の事業者のみに当該商標の使用を認めた趣旨が没却されることになるからである。一方、組合の合併のような一般承継の場合には移転が可能である。出所そのものが全く異なる性質の主体に変動するわけではなく、その商品の品質・役務の質に対する信用も維持されるからである。
(2) 地域団体商標に係る商標権について専用使用権を設定することはできない(第30条但書)。
譲渡の場合と同様の趣旨に基づく。また、地域団体商標について専用使用権を設定できるとすると、設定された範囲内では構成員の使用も制限されるため、地域における事業者の使用を確保しようとした趣旨を没却するおそれがあるからである。他方、通常使用権の設定については商標権者たる団体及びその構成員が商標を継続して使用できることから、地域団体商標に係る商標について独占を認めた根拠が没却されるおそれもないため認められる。 

5. 第三者の使用について
商標法は、商標登録出願前から使用されていた同一・類似の商標については、未登録であっても、周知となっている場合には、継続して使用することができる権利を認めている(先使用権:第32条)。
地域団体商標については、従前から商標を使用している第三者の利益を害することのないよう、地域団体商標の商標登録出願前から不正競争の目的なく継続して使用をしている商標については、周知性を有しないものであっても、引き続き使用する権利が認められる(第32条の2第1項)。このような場合に先使用権を認めないとすると、団体に属さない事業者が現に行っている事業活動を継続することができないこととなり、権利者と第三者の利益の衡平を失するからである。 

6. 異議申立・無効審判について(第43条の2、第46条)
地域団体商標の商標登録が登録要件である第7条の2に違反する場合を、異議申立事由及び無効審判請求事由とするとともに、当該商標が事後的に周知性を失っている場合及び地域団体商標に係る商標権者が事後的に主体的要件を満たさなくなった場合等を無効審判請求事由に追加している。これは組織変更等により事後的に主体的要件を満たさなくなる場合や適切な営業努力を怠ったことにより、あるいは需要者の関心・嗜好が変更したことにより一旦獲得した周知性が失われる場合には、再び第三者の自由な使用を認め、かつ新たな地域団体商標の登録の途を開くのが妥当であるからである。
ここで注意すべきは無効審判の除斥期間(第47条)についてである。地域団体商標の登録要件(第7条の2第1項)を満たしていなかった場合については、無効審判の除斥期間(登録から5年)の対象としていない。すなわち、地域団体商標に係る商標登録が存続している限り無効審判を請求することができる。除斥期間とは、登録に瑕疵ある場合でも一定期間が平穏に経過すれば、公益的な見地から判断して既存の法律状態を尊重し維持する制度である。こうした観点からすれば地域団体商標として登録される商標は本来、その地域において商品の生産や役務の提供等を行う者が広く使用を欲するものであり、独占に適さないとされてきたものであるから、登録要件を満たしていないにも関わらず過誤登録された場合に除斥期間を適用すべきではない。
ただし、周知性の要件を満たしていなかったことを理由とする無効審判の請求については、登録から5年を経過し、かつ請求当時においては周知性を獲得するに至っている場合には、請求できないこととしている(第47条第2項)。周知性の要件に関しては、登録時には満たしていなかった場合でも、その後の営業努力等によって事後的に周知性を獲得していることも考えうる為、こうした場合の具体的妥当性を図る必要があるからである。

7. 考察
(1) 周知性の登録要件に関して 
以下のような事例を考えてみよう。
例えば"備後の履物"というマークを「靴類」に使用している団体が備後地方に複数あると仮定する。これらのうち、Aという団体が地域団体商標として"備後の履物"を商標登録出願した。ところが続いて同じく"備後の履物"を使用する団体Bも地域団体商標登録出願をしたとする。ちなみに"備後の履物"は備後地方において周知性を獲得しているがA・Bいずれとの関係で周知となっているかは定かでない。
このようにある地域ブランドを使用する団体が同一地域内に複数ある場合に、その中の一つの団体が地域団体商標として商標登録出願をしたとする。その際、そのマーク自体の認知度が高いとしても、いずれの団体の商品又は役務との関連で周知となっているのかの判別が困難となるのではないだろうか。つまり、7条の2の条文上、団体の正当性という観点からは周知性の要件が明らかとなっていないため、事例の場合で言えば先願主義(8条)を論ずる以前に、A・Bのどちらが正当権利者となるべき者であるかの判別が問題となるのである。
(2) 密接関連性の要件に関して
地域団体商標の登録要件の一つである商品(役務)と地域との密接な関連性の有無は、商品(役務)の種類、取引者・需要者、取引の実情等に応じて、社会的通念上妥当と認められるか否かにより判断されることになっているが、基準として少々曖昧と思われるため今後の具体的運用に注目したい。
(3)将来のアウトサイダー(団体に属ず地域団体商標を使用する事業者)に対して
将来に渡って同一地域内にアウトサイダーが出現した場合、当該アウトサイダーと地域団体商標の権利者との間で生じうる、権利侵害・使用権の設定・団体への加入・第26条の適用の可否等といった問題に対する細やかな対応が必要になってくると考える。 
以上
〈参考文献〉
・ 特許庁説明会テキスト「平成17年 商標法の一部を改正する法律について」
・ 社団法人発明協会「平成17年 商標法の一部改正 産業財産権法の解説」
・ 日本商標協会誌(第57号)

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