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米国のミーンズ・プラス・ファンクションクレーム

2000年3月7日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(文責:新 井)

クレーム中に means-plus-function を文言することは、米国特許法 35 U.S.C.§112, sixth paragraphの規定により認められている。 しかしながら、means-plus-function の範囲を決定することは非常に難しく、しかも、その解釈が適切か否かは、時として論争を巻き起こす。
means-plus-function Claims に関し、米国特許法律事務所である BIRCH,STEWART, KOLASCH & BIRCH, LLP の特許弁護士である Darin Bartholomew 氏の論説(“Taking the Mystery Out of Means-Plus-Function Claims" written by Darin Bartholomew,Vol. 13, Issue 2, Fall 1999)を引用しながら以下に説明する。

1.AL-Site 事例
AL-Site 事例 (50 U.S.P.Q. 2d 1161 (Fed. Cir. 1999))では、クレームにおいて、“fastening means" が文言されている。 明細書中には、リベット又はボタンとホールの組み合わせが、“fastening means"として定義されている。 また、明細書中には、“adhesive"(粘着部材、接着部材)は“fastening means"として言及されていなかった。
CAFCは、『糊等の接着部材は、 35 U.S.C.§112, sixth paragraph下で、リベット又はボタンとホールの組み合わせと文言上の均等物である』との陪審員の評決を支持し、イ号装置が文言上侵害している旨の判決を下した。

2.Chiuminatta 事例
一方、Chiuminatta 事例 (50 U.S.P.Q. 2d 1752 (Fed. Cir. 1998))では、“means ... for supporting the surface of the concrete"(コンクリートの表面を支持する手段)が文言されている。明細書中には、平坦な“skid plate"(摩擦板)が上記支持手段として定義されている。
イ号装置は、同様であるが不一致の機能を果たすために、摩擦板の代わりにローラーを使用していた。
CAFCは、クレームした手段がローラーを含むものであることが明細書中に開示も示唆もされていないという理由で、means-plus-function による文言がローラーと摩擦板の両方を含むというふうに解釈できない旨の結論を示した。
明細書中には、摩擦板が、コンクリートを支持するためのブレードに近接した小さな回転ホイールで置換できる旨の示唆がなかった。しかも、明細書中には、コンクリートを支持する目的ではなくて、回転歯を安定に支持するという他の目的でローラを使用する旨の開示がなされていた。これらの事実に鑑み、CAFCは、35 U.S.C.§112, sixth paragraph 下の文言上の侵害ありとの下級裁判所の判決は違法である旨の判決を下した。

3.“interchangeability"
35 U.S.C.§112, sixth paragraph 下の文言上の均等物を解釈する上で、上記2つの何れの事例においても、イ号装置の構成要素と、クレームされた構成要素との間の“interchangeability"(交換可能性)が考慮された。
AL-Site 事例では、“interchangeability" は均等に肯定的であった。これは、おそらく、侵害ありとの陪審員の評決に対して敬意を表したためであると推測される。これに対して、Chiuminatta事例では、“interchangeability"が重要な要素と判断された。つまり、Chiuminatta 事例では、“interchangeability"は、均等に、否定的であった。

4.AL-Site 事例とChiuminatta 事例の相違点
AL-Site 事例と、Chiuminatta 事例とで結果が異なったのは、陪審員の評決か略式裁判による判決かの違いで説明のつくものなのか? このような疑問が存在するという事実は、最終回答よりも重要である。
35 U.S.C.§112, sixth paragraph 下の文言上の均等を判断する事例から明らかなように、means-plus-function を文言したクレーム発明をイ号装置が侵害していることを示すために、特許権者が明細書の開示内容を根拠にできないならば、means-plus-function クレームは予測不可能な方法で解釈され、矛盾した結果をもたらす可能性がある。
たとえ、クレームされた means-plus-function の要素がイ号装置の要素と機能的に交換可能な場合であっても、明細書中の構成とイ号装置の構成との間に実質的な構成上の差異があれば、35 U.S.C.§112, sixth paragraph 下の均等は成立しない。
means-plus-function を文言したクレーム発明が所望のように解釈されるためには、次の措置を講ずることが好ましい。

(a) 構成上の又は手順上の例を多く挙示して means-plus-function の要素を定義すること
(b) より広いクレーム解釈がなされるようにクレームを分化(claim diff erentiation )させること
(c) means-plus-function 解釈ルールの範疇外になるようにクレームを作成すること
ただし、これらの措置を講ずれば、クレームが必ず所望のように解釈されるとは限らないことに留意すべきである。以下に、上記(a)乃至(c) の各事項について説明する。

(a) 構成上又は手順上の例を多く挙示することについて
通常、クレームは、裁判所や第3者が、同じ機能を果たす構成上の均等物を明細書中に見出せるように、機能と組み合わせた “means"という文言を含んでいる。明細書中には、上記“means"を定義し、更に、構成上または手順上の代替物を挙示する。このような代替物の少なくとも一つは、特徴を図示し、発明の理解を容易にしておくことが好ましい。
means-plus-function クレームは、出願時に発明者がもくろんだもの以外の機能を果たす全ての“means"を含まない。明細書が一つ又はそれ以上のmeans-plus-function の文言に見合う構成や手順の例を開示している場合、イ号装置やイ号方法との比較の重要な根拠として、それらの構成や手順を使用できる。これら構成上又は手順上の例は、35 U.S.C.§112, sixth paragraph の文言上の均等のもと、及び均等論のもとで、合理的な制限の範囲内で、本発明をイ号装置として特徴づけ得る余地を残すものである。発明者は、出願明細書中に開示した特許性を有する要旨に対する権利が保証されている。開示内容の範囲を越えて特許権を行使できるとは限らない。そのような権利行使が可能か否かは、機会または運の問題であると考えられる。
しばしば、 means-plus-function の文言は、特許出願の構成上の壁に存在する穴等を外面的に覆い隠す壁紙のように使用される。
means-plus-function の文言は、発明の真の技術的な実体を明らかにするための松葉杖として使用されるべきである。明細書中に means-plus-function structures の例が開示されていない場合、特許審査官、将来の実施許諾者や訴訟を提起する者をして本件発明の権利行使に対して懐疑的ならしめることになるだろう。

(b) クレームの分化について
means-plus-function の文言をより広く解釈してもらうためには、クレームを分化させることが好ましい。クレームの分化とは、同一出願または同一特許における異なるクレームが、異なる発明、又は同一発明の異なる範囲をカバーすることを意味する。
35 U.S.C.§112, sixth paragraph の下で、文言上の均等の範囲を最大にするという状況下において、means-plus-functionに係る構成上の多数の例が明細書中に開示されている場合、クレームの分化は最も有効である。
Darin Bartholomew 氏の指摘するクレームの分化とは、発明を一面的にとらえるのではなくて、多面的にとらえてクレームすることを意味すると解される。もともと、発明を一義的にとらえることは難しい。むしろ、積極的に、多面的な発明のとらえ方を行い、クレーム化することによって、より強い発明の保護を図ることが好ましいと思料される。

b-1). クレームの分化の有用性を示す事例
Laitram 事例 (50 U.S.P.Q. 2d 1367 (Fed. Cir. 1991))は、クレームの分化を適切に戦略的に使用することが潜在的に重要であることを示すものである。この事例では、独立クレームがmeans-plus-function の形態で定義されており、 means-plus-function の特徴が更に従属クレームで限定されている。
CAFCは、means-plus-function element limitation に係る他の構成上の変形例が明細書中に記載されていなければ、独立クレームのmeans-plus-function element を定義または説明している従属クレームを本件の独立クレームとする旨を判断している。しかしながら、CAFCは、クレームの分化論が35 U.S.C.§112, sixth paragraph の法目的に合致する場合、独立クレームの文言上の均等が確立されることの可能性を排除していない。
クレームの分化論の適用が、適切で、 35 U.S.C.§112, sixth paragraphの法目的に合致する場合、より広い独立クレームは、狭い従属クレームに規定の特定の構成以外の何かを含むものと解釈されるべきである。クレームの分化に基づいて、独立クレームのmeans-plus-function を更に規定する多様な従属クレームをたてることが好ましい。或いは、独立クレームの means-plus-function element の別の構成または手順を明細書が多数記載している場合、クレームの分化は好ましい。

b-2). クレームの分化の限界を示す事例
しかしながら、クレームの分化の有用性は、依然として、出願当初明細書の開示の範囲によって制限される(Gentry Gallery事例 (45 U.S.P.Q. 2d 1498 (Fed. Cir. 1998)参照)。すなわち、明細書に限定して記載してあれば、クレームも限定して解釈される。
上記Gentry Gallery事例は、2個のリクライニングシートを有する組立式のソファに係るものであり、発明の一つの特徴は、2個のリクライニングシートの間にコンソールがあり、このコンソールに設けられたリクライナ制御装置が両端のリクライニングシートを制御することにある。これに対して、従来技術はソファの両端で制御している。
最も広いクレームは、コンソールにリクライナ制御装置を設けたことを明示的に限定していない。しかし、複数の従属クレームにおいては、リクライナ制御装置がコンソールに限定されている。
訴訟において、特許権者は、クレームの分化論によれば、最も広いクレームがリクライナ制御装置がコンソールに限定されたよりも広いものをカバーしていることが確立されている旨の反論を行った。
これに対して、CAFCは、最も広いクレームが出願当初の明細書の記載範囲外であり、 35 U.S.C.§112,first paragraph を満足しないので、該最も広いクレームを無効にした。CAFCは、『出願当初の明細書が、2個のリクライニングシートの間のコンソールに設けられたリクライナ制御装置を備えた組立式のソファを開示しているのみであり、したがって、これに対応するクレームよりも広いクレーム(リクライナ制御装置がコンソールに設けられていないことを規定するクレーム)を支持するものではない。それゆえ、means-plus-function の文言を含むクレームは、ク 35 U.S.C.§112, first paragraph 下でクレームの分化の利点を受けるためには、出願当初の明細書によって十分に支持されていなければならない。

(c) means-plus-function と解釈されることを避けるルール
means-plus-function の文言は、種々の解釈論に基づいて解釈される。means-plus-function として解釈されないようにするために、means-plus-functionの表現に代えて、別の機能的表現を使用することが考えられる(“means" や“means for" という表現を避ける)
しかしながら、単に“means" という文言を除くことは、機能的文言でクレームされた要素がmeans-plus-function 限定の法規下で解釈されないことを必ずしも保証するものではない。
或る means-plus-function クレームは、他の形態のクレームよりももっと好意的に扱われることもある。例えば、means-plus-functionの文言が、それ自体、クレーム中において、構成上の限定によって定義されている場合、クレーム解釈の際のガイダンスのために明細書を参照することは必要とされない。
しかしながら、 means-plus-function 限定を十分に定義することなしに、構成上の限定が単に付随的な構成上の限定を規定しているだけならば、クレームの解釈にあたって必ず明細書が参照される。

以上より、 means-plus-function限定を構成上の限定によって十分定義することによって、クレームはクリアに解釈され、裁判所は、クレームにおける原告の最も広い意図をくみ取ってくれるであろう。

Darin Bartholomew 氏の上記指摘は、次のことを意味していると思料される。
すなわち、たとえ means-plus-function の表現を使用せずにクレームを文言したとしても(例えば、“control means for controlling ..." に代えて、文言上、単に、“controller that controls ..."という表現を採用したとしても)、明細書中に開示した定義が不十分であれば、means-plus-function の表現の場合と同様の解釈(明細書の開示の内容に限定された解釈)がなされてしまうことになると思料される。
また、たとえ、means-plus-function の文言が、それ自体、クレーム中において、構成上の限定によって定義されている場合でも、クレーム解釈の際のガイダンスのために明細書が参照されない保証はないので、クレームに係る事項については、できる限り明細書の内容を充実させておくことが好ましいと思料される。
したがって、クレームをどのように文言したとしても、前述のように、構成上または手順上の代替物をできる限り多く挙示し、このような代替物の少なくとも一つは、特徴を図示し、発明の理解を容易にしておくことが望ましいと思料される。

5.均等論下の『均等』との関係

均等論下の『均等』と、 35 U.S.C.§112, sixth paragraph 下の『均等』とが正確に同じ手法で検討されるものであるか否かについて、幾つかの回答がCAFCの判決(
Odetics, Inc. v. Storage Technology Corporation (51 USPQ2d 1225 (Fed. Cir. 1999) )で示された。
この Odetics 事例において、CAFCは、 means-plus-function 限定の文言上の侵害を確立するために、以下に示す比較的柔軟なルールを幾つか提示した。ただし、均等論下の means-plus-function クレーム限定の解析に関しては、本事例でも未だ完結されておらず、米国特許法の不確定な法域は未決のまま残されている。

5-1). means-plus-function 限定の均等性の判断

・35 U.S.C. §112, sixth paragraph の規定
35 U.S.C.§112, sixth paragraph によれば、 means-plus-function 形式で文言されたクレーム限定は、クレームの機能と対応する、明細書中に記載の構成及びその均等物を包含するように解釈されるべきことが規定されている。

・ means-plus-function 限定の文言上の侵害
35 U.S.C.§112, sixth paragraph に従って、 means-plus-function限定の文言上の侵害が成立するためには、イ号装置中の該当する構成が、
(a) クレームで記載された機能と同一の機能を奏し、かつ
(b) 明細書中に記載の対応する構成と同一であるか、もしくは明細書中に記載の対応する構成と均等であるかを満足しなければならない。

・コンポーネント毎の均等性判断の要否
35 U.S.C.§112, sixth paragraph に基づき、イ号装置の該当する構成が明細書中の対応する構成と均等であるか否かを明らかにするための基準として、2つの対応する構成同士でコンポーネント毎に均等性を判断することは必要とされない。

クレームされた機能に対応させて明細書中に記載された構成において、個別のコンポーネントは、それ自体がクレームの限定ではない。むしろ、クレーム限定とは、クレームされた機能に対応する構成全体の包括的な構成である。このため、イ号装置の該当する構成が明細書中に記載された対応構成と、コンポーネントの数で異なる場合でも、means-plus-function限定の文言上の侵害が成立し得る。

CAFCは、 Odetics事例において、クレームに係る『回転手段』に対応して明細書に記載されている構成のうち、コンポーネント部分に焦点をおいて、地裁が35 U.S.C.§112, sixth paragraph の均等構成を分析したことは誤りであると結論した。CAFCによれば、上記均等構成を特定するための基準は、明細書中に記載された対応構成と、構成上均等であると主張されているイ号装置の該当部分との間で、コンポーネント毎の均等性の判断は必要とされない。

これの代わりに、 35 U.S.C.§112, sixth paragraph の均等構成を特定する基準には、争いに係る具体的な構成について、両者間の差異の非実質性に関わる法則を適用する必要があるだけである。したがって、CAFCは、地裁がJMOL(post-trial motion for Judgement as a Matter of Law)を認可した法的根拠は誤りであると判断した。さらに、CAFCは、侵害ありと判断した陪審員の評決を支持する実質的証拠が存在すると認定した。このため、CAFCは、地裁のJMOL認可を逆転し、陪審員の評決を復活させるよう命じた。

5-2).均等論に基づく『均等』と、 35 U.S.C.§112, sixth paragraph に基づく『均等』について

・両者の類似点
CAFCは、 35 U.S.C.§112, sixth paragraph でいう均等な構成を明らかにするための評価基準と、均等論侵害を明らかにするための評価基準との関係を説明している。これによれば、両者の評価基準は、共に、クレーム発明とイ号装置との相違点につき、非実質的な相違点の検討を含む点で類似しているが、同一ではない。

・ three-part-function test
均等論侵害を明らかにするための評価基準として、“three-part-function test"(『機能』、『方法』、『結果』が実質的に同じか否かを評価する3要素テスト)がある。これら3つの要素のうち、何れかに、クレームで定義されるものと実質的な相違点があれば、均等論に基づく侵害は成立しないことになる。

・ two-part-function test
これに対して、 35 U.S.C.§112, sixth paragraph でいう均等な構成を特定するための評価基準として、“two-part test"(『方法』、『結果』が実質的に同じか否かを評価する2要素テスト)がある。

この評価基準においては、『機能』の類否判断は含まれない。なぜなら、 means-plus-function 限定の文言上の侵害には、イ号装置の構成で果たされる機能がクレームで定義される機能と、単なる類似ではなくて、常に同一でなければならないからである。


したがって、『方法』、『結果』ともに、各相違点が非実質的である場合には、均等物に該当すると判断される。換言すると、イ号装置の構成が、明細書に記載された構成と実質的に同一の方法で、完全同一の機能を果たすならば、当該イ号装置の構成は、35 U.S.C.§112, sixth paragraph でいう均等物に該当する。

〔参考文献〕
(1) BSKB NEWS(“Taking the Mystery Out of Means-Plus-Function Claims" written by Darin Bartholomew, Vol. 13, Issue 2, Fall 1999)
(2) 米国特許判決最新情報5(『ミーンズ・プラス・ファンクション・クレーム限定の文言侵害に関する比較的柔軟なルール』、AIPPI (1999) Vol.44, No.12, p694〜p699)

以上

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