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ビジネスモデル特許の実状

2000年7月15日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 原 謙 三

ビジネスモデル特許の話題性
1 コンピュータ/インターネットの普及
2 少ない投資でビジネスチャンス
3 儲ける仕組みが特許化
4 特許成立の容易性
5 国際紛争に巻き込まれる危惧

1.インターネット等の普及
①IT革命により、パソコン、インターネット、モバイル等の普及が急成長。IT革命の覇権争いが激化。先行の米国、後を追うアジア、欧州の各国、特に最近、IT大国を目指す中国(モバイルの普及率は世界3位、数年中に1位)、国を挙げて産業育成に取り組むシンガポール、マレーシア、世界的なソフト輸出国として定着したインド(バンガロール、ハイデラバードを中心として8年連続50%以上の上昇率を記録、昨年のソフト輸出額40億$、今年63億$予想)等のアジア各国が政府の振興策をバックに急成長。〔①〜③参照〕
②日本のネット利用者人口は昨年末時点が2700万人、5年後には7670万人と予測。人口当たりのインターネット普及率は21.4%、5年後には60%と予測。
③米国では、契約書類への署名が必要だった取引をインターネットで行っても法的効力を認める電子署名法が今年10月から施行→電子商取引に拍車。
④IT技術者不足が深刻。特に、独、米は、外国(特にインド)からIT技術者を導入する計画(ハイテク移民政策)。

2.IT産業の種類
IT産業とは、インターネットを使った電子商取引などに必要な機器、設備、ソフトウエアを製造したり関連サービスを提供する産業。
①ハードウエア(コンピュータ、半導体等)、②ソフト及びサービス(プログラミング、コンピュータ修理等)、③通信機器(音響機器、電話、テレビ等)、④通信サービス(電話通信、ラジオ・テレビ放送等)

3.少ない投資で事業化
「技術」開発の競争社会が実現し、これは主として製造業を中心として発展してきたが、IT革命によって、企業の競争の舞台は、「技術」から「事業のアイデア」に拡大した。電子商取引では、立地条件、販売チャンネル、研究所、実験設備、試作品等が不要なので、ベンチャーにとって参入障壁が小さい。

4.儲ける仕組みが特許化
(1)代表例1
プライスライン社(親会社はウォーカーデジタル社)の創業者ジェイ・ウォーカー氏は、逆オークション方式のeコマースで急成長。1997年創設、株式から換算した個人資産は約1兆円。同社の発行済み株式資産(市価)は約2兆円。非特許化の場合の市場占有率が50%と予測すると、約300件のパテントポートフォリオの財産価値は約1兆円、1件当りの特許価値は約33億円。(同社の取扱い航空券は現在、毎週8万枚、昨年秋より6割増加。現在、航空券販売の約8割は既存の旅行会社経由、2002年には60%がネット経由と予測。)〔④⑪参照〕
〔要因〕
①逆オークション方式の普及(航空券/ホテル/自動車/レンタカー/スーパーマーケット/ガソリンスタンド等)。
②株式と特許の組み合わせ(特許→ベンチャーキャピタルから資金導入→企業化→株式上場)、即ちBMPを積極的に資金調達のツールとして用いている。
③パテントポートフォリオ戦略(同種の特許が多数網目状→競合企業の反撃意欲を絶つ→多額のライセンス料支払)、逆オークションだけで約40件の特許取得。
儲ける仕組みが特許化の図
(2)代表例2
ワンクリック特許のアマゾン・ドット・コム社は1995年に営業開始。CEOはJeff Bezos 氏。商品アイテムは300 万点、160 以上の国と地域に1700万人の利用者、従業員7500名。但し、現在の株価は最高値から7割ダウン(先行投資に売上が追いつかず)。インターネットの世界で一般的に使用されている「cookie」がクレームに明記されているので、迂回方法により特許価値が減衰。
(3)松下電工がBMPを社内公募(最高1千万円の報奨金)
(4)ブリヂストンがBMPを一般公募(賞金百万円+経営のパートナー)

5.特許成立の容易性
各国の法律/審査基準/運用指針の相違。
日米に格差あり。進歩性と非自明性の差も影響。

6.国際紛争の危惧
エーペックスビーアイネット社は、米特許事務所等と共同でビジネスモデル特許に関する専門コンサルタント事業を行うための新会社を日米に設立。BMPの侵害調査や検証等を業務とする。

BMPの代表例
1 逆オークション特許「プライスライン特許」
2 ハブ・アンド・スポーク型「シグナチャ特許」
  金融サービス特許  〔ステートストリート事件〕
3 ワンクリック特許  「アマゾンコム社」
4 ショッピングカート特許(個人)

1.逆オークション特許(米特許5794207)。プライスライン社。
従来は売り手が支配した価格を、逆に買い手による「競り」を行うためのソフトウエアに関する特許。このビジネス手法は、需要と供給のバランスという資本主義の原理に従う基本的な方式。〔④参照〕

2.ハブ・アンド・スポーク型金融サービス特許 (米特許5193056)。シグナチャー社。
複数の基金から資金を単一ポートフォリオにプールし、投資先の日々の変動や資金の変動をデータ処理し、それによって投資先の出資比率を決定することにより、資金の有効運用、管理費用の節約、税制上の利点を得るシステム。〔State Street Bank 事件〕
〔⑤参照〕

3.ワンクリック特許 (米特許5960411)。アマゾン・ドット・コム社
顧客がネット上で買い物をする際、最初に名前やクレジットカード番号、住所などの個人情報を一度入力すれば、二回目以降はマウスボタンを一度クリックするだけで済む(勿論、アドレスとパスワードの入力は必要)ソフトウエアに関する特許。注文のたびに個人情報(クレジットカード決済)を入力することの不安を緩和するのに有効。
4.ショッピングカート特許 (米特許5895454)。個人。
複数のサイトで買い物をした後、一回でまとめて支払いの手続を済ませるためのソフトウエアに関する特許。

〔最近の日本の注目BM〕
1.各国の証券会社をネットワークで結び、外国株式取引の仲介サービスをインターネット上で行う。既存証券会社(外国株取引手数料=国内取次手数料+現地売買委託手数料+為替手数料)経由に比べて1/5の手数料。(グローバルネット社)
2.インターネット上に、輸送スペースを取引する市場を開設し、トラック等の荷台の空きスペース利用を仲介するサービス。(フットワークエクスプレス社)

最近の重要な動向
1 BMPの審査運用指針の改定
2 三極間の認識一致
3 著作権保護
4 沖縄サミットでIT憲章採択

1.日米欧の三極特許庁専門家会合が6月16日に東京で開催され、BMPの審査基準を確認。ビジネスモデル特許の審査運用指針を今月(12月)にも改定。

2.三極の認識一致事項
①ITを活用しているという「技術的側面」が不可欠。
②公知の取引方法をインターネット上で実施するだけでは特許性ない。

3.著作権保護の動向
 著作権審議会は、HPで利用者が著作権侵害行為をした場合のプロバイダー(接続業者)の法的責任について免責規定を盛り込む方針を提言。

4.知的財産権条約の早期批准
 世界中のどの裁判所で訴えられるかわからないというネット業界の不満、安全対策、消費者保護、プライバシー保護、規制緩和による競争促進など、国際電子商取引の国際ルール作り(各国制度の調和)をOECD等に求め、各国が知的財産権条約の早期批准に取り組む方針(沖縄サミットでIT憲章が採択される予定)。
〔沖縄サミット〕7月21日〜23日
情報通信分野の競争促進と規制緩和
日米欧の特許当局による国際的な基準調和(各国の金融分野専門家も参加)
『IT革命の骨子』
1.IT革命は潜在成長率を上昇させることの認識一致。
2.金融の電子取引の国際ルールを整備。
3.利用者保護など5原則を定める。
4.独占防止の観点から金融BMPを協議。

日本の法制

1 プロパテント政策
2 特許要件〔発明成立要件/産業上の利用性/新規性/進歩性〕
3 ソフトウエアの特許要件
4 保護対象と認められる分野
5 保護対象にならない分野

1.プロパテント政策(早い権利化/強い権利効力/広い権利保護)
WTO(世界貿易機構)のTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)に基づく数次の法改正(権利期間の延長、明細書記載要件の緩和、特許権者の立証負担の軽減(計算鑑定人制度等)と損害賠償額の引上げ(特許権者の利益率×侵害企業の販売数量)等。
国(特許庁)としては、産業政策上、自国が主導権を握れる分野では特許重視政策、自国が劣る分野ではアンチパテント政策を実行したいのが本音。

2.特許要件
① 発明の成立要件
BMPの定義付けはないが、一般には、「コンピュータによる処理を前提としたビジネス手法を保護対象とする特許」といわれる。(米国では「Business Method Patent」と言われる)。「自然法則を利用した技術的思想」(法2条1項)の解釈の問題に帰着。
② 産業上の利用性
 特許法は、産業立法であってその最終目的は「産業の発達」にある(法1条)。法29条柱書き「産業上利用することができる発明(法2条1項)」
③ 新規性/進歩性
ⅰ.公知のビジネス方法を、単に、日常的作業で可能な程度の手法を用いてコンピュータに取り込んで実現しただけの発明は、「進歩性がない」として拒絶される。公知のビジネス方法であっても、新規要素たとえば新規なハードウエアとの組合せや新規なビジネス手法の部分的付加等によって特許性が認められる可能性あり。コンピュータを処理するにあたっては、通常、何らかの創意工夫が必須不可欠。商業上慣用的に行われているビジネス方法であっても、コンピュータで処理できるようなシステムを開発することにより、ハードウエア資源(コンピュータ)をどのように(how to)用いてビジネス方法を実現したかを具体化することにより、特許性が認められる可能性あり。
ⅱ.新規なビジネス方法は、コンピュータの用い方(how to)がクレームに示されていることを条件として、特許性が認められる。一つのクレームから一つの発明の概念が形成されるので、クレーム中に進歩性のある要素が含まれていれば、この要素がたとえ非技術的要素であっても、特許性が認められるものと考えられる。
④ 先行文献
三極特許庁は、既存のBMPを整理したデータベースを2002年までに共同で構築し、審査情報を共有する。特許になっていない情報も電子化して相互利用可能にする。情報は、ソフトウェア会社など民間企業に社内資料の提出要求、学術論文の入手、などにより得る。

3.ソフトウエアの特許要件
特許庁が1997年に公表した審査基準「特定技術分野の審査の運用指針第一章 コンピュータ・ソフトウエア関連発明」によれば、①ハードウエア資源に対する制御または制御に伴う処理、②対象の物理的性質または技術的性質に基づく情報処理、③ハードウエア資源を用いて処理すること、の3点のいずれかに該当する場合には、「自然法則の利用性」が認められるとしている。ハードウエア資源をどのように用いたか(How to)を請求項に記載しておく必要がある。
請求項の一部に非技術的要素が含まれていたり、自然法則以外の法則(経済法則等)が利用されていても問題とはならない。また技術的効果や経済的効果についても問われない。請求項のカテゴリによって発明の成立性判断が左右されることもない。

4.保護対象と認められる分野
①コンピュータ技術、通信技術、データ処理技術、ネットワーク技術
ソフトウエア技術を特定ビジネスに応用したもの
②電子商取引関連(「ショッピングカート」(米5895454)、「ワンクリック」(米5960411)、「ホテル価格適合システム」(米5794207)、等
③金融ビジネス〔銀行、保険、証券〕関連 (「投資信託管理」( 米5193056 )
④広告、流通、在庫管理、スケジュール管理、生産計画、生産管理、販売顧客管理、業務管理、仲介、娯楽、転職等、分析予測評価、等

5.保護対象にならない分野〔「自然法則の利用性」に該当しない〕
自然法則自体、数学(計算方法等)、論理学上の規則、経済法則、商慣習、心理法則(催眠術等)、経営手法、人為的取り決め(遊戯方法等)など。
但し、発明の内容に自然法則を利用しない部分が含まれていても、発明全体として自然法則が利用されていれば、「自然法則の利用性」という条件は満たされる。

6.コンピュータ・ソフトウエア関連発明の種類
(1)「方法」のカテゴリの発明
時系列的につながった一連の処理または操作の「手順」(アルゴリズム)。
(2)「物」のカテゴリの発明
a.ソフトウエアを一または二以上の機能で表現したクレーム。
b.プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
c.構造を有するデータを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体など。
d.音楽・映像などのオンライン配信方式(特許庁で検討中)
(3)コンピュータ・プログラム(2000年12月の審査基準改訂により容認)

BMPの明細書作成上の留意点

1 日本出願を基礎とした米国出願
2 審査基準等の改定を見込んだ出願
3 先願主義/巨額の利益

1.可能な限り広い概念的クレームと、実際に保護したいビジネス態様クレームと、利用態様や取引態様などの考えつくあらゆる態様のクレームを作成する。ビジネスモデル特許の特徴の一つは、クレーム数が多いことである。例えば、プライスライン社の「逆オークション」特許(USP5,794,207)ではクレーム数が44、ウォーカー氏の「外貨建て保険」特許(USP5,884,274 )では同64、アマゾン社の「ワンクリック」特許(USP5,960,411)では同26である。

2.権利一体の原則により、サーバーコンピュータに限定したクレーム作成、及びクライアントコンピュータに限定したクレーム作成を心掛けることが重要。

3.ビジネス分野(電子商取引、金融、証券、保険、広告、流通等)の検討。
・ カテゴリー(物(装置/記録媒体)、方法、システムプログラム)の検討。
・ 通信手段(インターネット、e-mail 、LAN、ダイアルアップ、携帯電話等)検討
・ 決済手段(クレジットカード、デビットカード、電子マネー等)の検討。

4.クレームの記載は、ソフトウェア自体、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせを明確にし、実施の形態の記載では、ネットワーク全体の構成図、ブロック図、フローチャート、データ構造などを記載して、ハードウェア資源の用い方(how to) を詳細かつ十分に記載する。

5.米国出願対応も考慮して、経済的効果(例えば利益の出し方)も詳細に明記。
欧州出願対応を考慮して、技術的効果を詳細に明記。

6.将来の審査基準や運用指針の改訂を考慮して、チャレンジクレームを作成しておく。

7.BMPのどの部分から利益を得るのかの認識(サービス、仲介、販売等)。

8.特徴部分に特化したクレームは侵害訴追に有利であり、システム全体のクレームはライセンス交渉に有利であるから、どちらもクレーム化しておくこと。

9.ビジネス分野に特定しないクレームも併存させること。

10. 米国用としては、ハードウエア資源の用い方(how to) に関する無用な限定を除いたクレームも立てる。

権利の行使

1 権利侵害が国境を越えて発生
2 権利一体の原則
3 裁判管轄権と当事者適格

1.インターネット電子商取引がボーダーレスなサイバースペースで行われるため、サイバースペースでの日本企業の活動が米国特許により制限されることになる。米国特許の侵害を避ける手法として、米国からのアクセスを禁止することが最善策であるが、インターネット上では技術的に米国からのアクセスのみを禁止することは不可能に近く、事実上サイトを閉じるしか方法はないと言われている。

2.米国では日本と異なり「業として」は侵害の成立要件になっていない。

3.国際裁判管轄については、各国共通の統一規定がなく、日本の民訴法にも規定がない。ネット取引では、取引相手を事前に限定したり、不法行為や損害の発生場所を特定することが困難という特殊性。ヘーグ国際私法会議等を通じて国際ルール作りを急ぐ方針。ネット取引で不法行為があった場合、損害を被った買い手が居住する国の裁判所に管轄させる案。ヘーグ条約(民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約)によれば、インターネット商取引に関連した米国特許に基づく管轄権や当事者適格は、日本にも及ぶ。

4.インターネット著作権(第8条「公衆への伝達権」)が規定されたWIPO著作権条約(ベルヌ条約第20条「特別の取極」に該当)から類推すると、原則的には、サーバーが設置されている国の法律に則り、侵害性の判断がなされると考えられる。米国政府は、たとえ同条約の未加盟国にサーバーが設置されていても、米国在住者が被害をこうむったり、米国向けに配信された場合は「断固とした措置をとる」との強硬な姿勢を示している。日本も、無登録の豪州証券会社(サーバーも豪州)からのインターネットによる情報提供活動を勧誘類似行為とみなし、規制を検討しているが、強制排除する手段はない。

5.日本にサーバーを有し、米国からアクセスがあった場合、米国のユーザーがインターネットのサイトを介して、サーバーと直接取引を行った場合(ユーザーが業者と直接コンピュータにより取引を行うように設定されたプログラム)は侵害成立。米国のユーザーがインターネット・サイトから情報を得るだけであって、商取引は他の媒体(電話、FAX、手紙等)を利用した場合は非侵害。

6.Playboy 社 vs. Tattilo Editrice 社(伊)
Playboy 社は、イタリアの Tattilo Editrice 社が、インターネットのサーバー上で PLAYMENの名前のサイト(サーバーは伊国内)を運営し、米国民にもサービスを提供。商標権侵害として提訴。ニューヨーク地裁は、①サイト運営は継続できるが、米国内の顧客からのアクセスを承諾してはならない、②米国内顧客のパスワードの無効、③米国内利用者への未使用分料金の返還、④米国内顧客から得た利益のすべてをPlayboy社へ支払うこと、⑤米国内からのアクセスができないようにサイトを改良すること、⑥裁判費用のすべてをPlayboy 社に支払うこと、と判決。

7.米国企業は、現在、米国内の競業企業への対応に追われており、米国内の訴訟等が一段落したとき、矛先は日本に向けられると考えられる。また、米国企業は、日本企業が米国特許を侵害していても、戦略的にこれを黙認し、しばらくはそのまま放置しておくことが予測される。戦略的にみて、日本企業によるネットビジネスがある程度の規模にまで成長してから、過去に遡って巨額の損害賠償を要求してくる可能性は十分にある。

8.今年4月、日米で特許取得「課金方法に関する特許」した日本のベンチャー企業から、国内のネット接続会社やオンライン証券会社など約60社に対して侵害警告。日本よりも米国裁判所に提訴される可能性あり。

9.日立の特許事業は98年度364億円の利益。特許を「商品」とみなして積極的にライセンス供与。

10. 米IBMは、安定的に毎年10億$を超えるライセンス収入を得ている。

日本企業の動向

1 日本出願を基礎とした米国出願
2 審査基準等の改定を見込んだ出願
3 先願主義/巨額の利益

1. ビジネスモデル特許が脚光を浴びてから、各社はビジネスモデル特許についての戦略を検討し、着実に実行に移している。科学技術情報誌「TRIGGER」2000年1月号には、「緊急特集 米国が仕掛けた特許爆弾 ビジネスモデル特許」と題して、各社の動向が詳細にレポートされている。

2. 同誌によれば、特に日本の電気メーカー等が中心となって、ここ約1〜2年の間に多数のビジネスモデル特許を日本出願して、自己防衛にあたっている旨が記載されている。しかし、これら出願には、米国では特許が成立しても、現行の日本審査基準や運用指針をクリアできない内容のものが多く含まれているであろうと推測される。それでは、なぜ、ビジネスモデル特許に関する日本出願が急増しているのであろうか。その理由はいくつか考えられる。第1は、日本で特許が成立しなくても、この日本出願を基礎として米国等の外国で特許化は図ることができること。第2は、日本のビジネスモデル特許に関する審査基準や運用指針等が、近い将来、さらに引き下げられる可能性が高いので、先願主義に則り、先行投資として出願を先行させておいた方が得策であり、これによって他社に対して優位を確保できること。第3に、米国ではビジネスモデル特許が乱立しており、これが日本に上陸してくる可能性も高いので、21世紀には基幹産業になるであろうネットビジネス上の活路を確保しておきたいこと。第4に、将来、米国企業等がビジネスモデル特許に抵触していることを根拠に、日本企業に対して高額の損害賠償を要求してくる可能性が高いが、これに対抗する手段として、クロスライセンスできるような特許を予め確保しておきたいこと。第5に、ビジネスモデル特許は「儲けの仕組みを生み出すビジネス手法」といわれるほど、巨額の利益を生み出す性質を有していること。

3. 日本のネット市場は未だ揺籃期にあるが、日本の数年先を走る米国ネットビジネス企業では、基本的なビジネスモデル特許の保有をベースに、豊富なビジネス・ノウハウの蓄積と、潤沢な資金(主として高騰した自社株の所有)とを駆使し、これが日本マーケットのオープン化とあいまって、日本への進出を考えているベンチャー企業が多く、実際にもヤフー(Yahoo)に代表されるように、米国企業が日本企業と合弁で進出してくるケースが目立ち始めた。(⑪参照)

米国の現状

1 特許の保護対象
2 特許要件〔§101 有用性/§102 新規性/§103 非自明性〕
3 特許件数の圧倒的優位
4 侵害訴訟の頻発
5 巨額な利益

1.米国は、知的財産権戦略が21世紀の企業や国家の盛衰を左右すると判断して、情報技術(IT)や遺伝子解析などの先端分野で積極的な特許政策を推進。95〜99年の米実質経済成長率に対するIT産業の寄与は、平均で推定30%。IT産業の米国内総生産(GDP)に占める比率は、今年8.3%の見通し。IT産業を除いた95〜98年の全産業の平均物価上昇率は 2.3%、IT産業を含めると1.8%(労働生産性が向上し物価抑制)。今年、全体の6%強のIT投資額で実質成長率の35%を稼ぎ出す予定。
〔⑥参照〕

2.米国特許法101条には、特許の保護対象について、「新規かつ有用なプロセス、機械、製品、組成物」と定めている。ここには、日本特許法が定めるような自然法則の利用性に関する条件がない。
電子商取引、金融、証券、保険商品、広告、在庫管理などのビジネスモデルは、法101条のプロセスまたは機械に該当し、特許の保護対象(法定の主題)に該当するか否かの判断基準は、「有用で具体的かつ有形の結果」(useful,concrete and tangible results) をもたらすか否かに置いている。〔この判断基準は、1998年にCAFC(連邦巡回控訴裁判所)によるステートストリート事件(ハブ・アンド・スポーク特許「USP5,193,056」)判決で初めて示された。また、長距離通話サービスに関するAT&T事件(USP5,333,184 )において、CAFCは先のステートストリート事件の判断を追認。米国は判例法〕「有用、具体的かつ有形の結果」とは、発明全体から「経済的効果」(利益の出し方等)が生まれれば、特許性が認められると考えられる。ビジネスモデル発明の多くは「儲けを生み出す仕組み」に関するものであって、元々、経済的効果を狙った発明であるところから、米国のビジネスモデル関連出願の大半は特許と認められることになろう。

3.米国特許庁は、97年に、ビジネスモデル発明に対する専用の技術分類番号として「705」(ビジネスに関連するデータ処理)を付与するなど、早くからビジネスモデル特許に対する重要性を認識している。この結果、上記分類に該当する特許は既に約4000件に達するといわれている(注.99年4月時点で4037件、日本は307件、日本のBMPは現在約2000件が出願中)。〔⑦⑧参照〕
特に、98年のステートストリート事件のCAFC判決の以後は、ビジネスモデル特許に関する出願が加速的に急増し、最近では毎週約30件もの特許が成立しているといわれ、侵害訴訟も頻発している。
ちなみに、97年は920件出願、98年は1300件出願、99年は2600件出願(内600件が既に特許成立)。BMPの担当審査官数は現在約40名。BMPの先行技術文献が不足しているため、「705」に属する特許の訴訟発生率は、他の分野の約2倍と予測されている。
98年のステートストリート事件のCAFC判決の以前は、1908年のホテル・セキュリティ「帳簿管理方法」事件を契機としてBMPは特許の保護対象にならないとの判例が続き、ビジネス方法除外の原則が確立されていた。その後、1930年代〜1980年代まではアンチパテントの時代。プロパテント政策に転換後、USPTOは徐々に門戸を開放。80〜86年は年平均50件、87年100件、90年以降急速に増加、93年は200件のBMPが成立しているが、権利行使された事例は皆無。「ビジネス方法除外の原則」により裁判所で無効と認定される懸念を持っていたからである。
このように、CAFCがBMPを特許の保護対象と認定したのは、ネット先進国である米国の強みを米国政府の戦略的知的財産権政策が支援した結果である。
ちなみに、1996年度に日本特許庁(JPO)に特許出願された件数は総計40万1千件であったのに対して、同年度のUSPTOに対する特許出願件数は総計22万4千件であった。この比率からすれば、日本のビジネスモデル特許に関する出願件数が7000〜8000件に達していてもおかしくはない。〔⑨⑩参照〕

4.米国では、上記のようなビジネスモデル特許の乱立により商業活動に弊害を生じる虞れがあるので、米国特許法が1999年11月29日に一部改正された。ビジネスの方法を、他人の出願の1年以上前に現に実施し、かつ、その出願以前に商業的に使用していた者は、特許権侵害の主張に対して非侵害の抗弁をすることができる〔35USC273(b)(1)〕。但し、米国内での実施および商業的使用に限定される点に留意する必要がある。(注.BMPの暴走を恐れた米大手金融機関が連邦議会の議員に陳情して法制化させたと言われる)

5.最近の報道
a.アマゾン・ドット・コムが、ネット業界で一般的に利用されている顧客紹介手法「アソシエイツ・プログラム」特許を取得。ネット上でサイトを運営する会社や個人が自分のサイトからアマゾンのサイトへ顧客を誘導し、顧客がアマゾンで商品を購入すればアマゾンから一定の手数料を得る仕組み。例えば、ネット上のサイトを持つ作家が自著の購入希望者をアマゾンへ差し向ける方法であり、40万以上のサイトが同プログラムに参加している。ネット上の電子商取引はクリック一つで別の店舗へ移れるので、サイト同士が顧客を紹介しあう手法は電子商取引の定番となっている。
b.アマゾン・ドット・コムのCEOであるJ・ベゾス(Jeff Bezos) 氏が、ビジネスモデル特許の有効期間を法改正により3〜5年に短縮すること、成立済の特許にも遡って期間短縮を適用することを提唱。新規性に乏しく、権利範囲が極めて広いビジネスモデル特許がこれ以上増えれば特許紛争が多発しネット産業の発展が却って阻害されると警告。しかし、この提案は、米国はWTO加盟国であるから20年未満に特許保護期間を短縮することができないこと、成立済の特許も短縮することは正当な補償なしで私有財産を制限することになるので米憲法違反になること、等の理由により実現の可能性は小さい。
c.米国当局は、審査基準を厳しくする方向で動いており、審査基準を日欧と調和する機運が高まっている。(注.ゴディチ特許局長は、「特許有効期間の短縮は議会が関連法を見直さない限りあり得ない」「法改正の動きはない」と発言。)
6.ビジネスモデル特許に関する主な侵害訴訟の事例を挙げると、以下のとおりである。
①「ステートストリート事件」。シグニチャー・ファイナンシャル(Signature Financial Group,Inc.) がステート・ストリート・バンク(State Street Bank & Trust Co.) を連邦地裁に提訴、同地裁の特許無効判決後、1998年、シグニチャー社がCAFCに控訴して特許「ハブ・アンド・スポーク特許」(USP5,193,056)の有効性が確認された。その後、ステート・ストリート社が最高裁に上告したが棄却された。
②AT&Tがエクセル・コミュニケィションズ・マーケティング(Excel Communications Marketing,Inc.) をデラウエア地裁に提訴、同地裁の特許無効判決後、1999年、AT&TがCAFCに控訴して特許「長距離電話の課金方法特許「(USP5,333,184)」の有効性が確認された。本件は、その後、デラウェア地裁に差し戻され、新規性が否定された。
③アマゾンドットコム(Amazon.com)がバーンズアンドノーブル(Barnesandnoble.com)をシアトル連邦地裁に提訴(1999/10/21)アマゾンドットコム社の特許「ワンクリック」特許(USP5,960,411)〔1997年9月出願、1999年9月28日登録〕 。特許成立後1カ月も経たないうちに提訴。連邦地裁はバーンズアンドノーブル社に対して使用中止の仮処分の決定(1999/12/1) (提訴から僅か42日後)を下した。バーンズ社は、HPの「簡易申込み」ボタンを消去し、注文ごとに個人情報を入力させた。
〔注記:①クリスマス商戦を前にしたあからさまなライバル狙い撃ちは一部消費者の反感を買った(不買運動)。②他のワンクリック類似サービス業者に対して現在のところ提訴していない。③「無料」がモットーのインターネット社会で、ワンクリック技術を用いた他社のオンラインショッピングサイトはすべて閉め出されるか、またはアマゾンとライセンス契約を結ぶ必要があることから、GNU主催者でフリーソフト財団(FSF)の設立者でもありLinuxに代表される無償ソフトウエアの基礎を作ったリチャード・ストールマン氏は、ビジネスモデル特許は特許性に欠けるものが多く、安易に特許を付与したことについてUSPTO及びCAFCを批判する声明を発表。〕
④プライスライン社(Priceline.com)[権利者はWalker Digital 社であり、本特許を活用して航空券やホテル予約の業務を行うPriceline社を設立] が、ネット上の「逆オークション」特許(USP5,794,207 、USP5,897,620他) を、マイクロソフト社(Microsoft)と子会社のトラベルサイトである「Expedia.com 」が模倣しているとして、特許権侵害でコネチカット州の連邦地裁に提訴(1999/10/13)。提訴前にライセンス交渉したが決裂して提訴に及んだ。
⑤SBH社(特許管理会社、本社:セントルイス)〔特許権者はハリントン(Harrington: ニュージーランド個人)〕が、ショッピングカート特許(USP5,895,454)でヤフー(Yahoo) を提訴(1999/11/10)。成功報酬契約に基づく裁判。既に、AOL(アメリカン・オンライン)やNTT等に対してライセンス供与している。
⑥ダブルクリック社(Double Click)がL90Inc.( マーケティング会社) をDART技術に対する特許侵害として提訴(1999/11/20)。
⑦E−DATE社が、「ソフトウエアのオンライン配信システム」特許(USP4,528,643)のライセンスを拒否した数十社に対して特許権侵害で提訴。1999年3月に非侵害の判決がでたが、E−DATE社がCAFCに控訴した。なお、IBMやアドビシステム社等はE−DATE社から本特許のライセンスを受けている。E−DATE社の特許は、ホストコンピュータにカタログコードを付してプログラムを記録しておき、カタログコード及び承認コードによりプログラムを指定してダウンロードし、ソフトウエアをオンライン上で販売するシステム。
⑧コンラッド氏(Allan M.Konrad) (個人)が、「クライアント・サーバ・サービスに基づくリモート・アクセス・システム」に関する特許(USP5544320,5696901,5974444)を侵害しているとして、コンピュータ・ハードウェア会社、航空会社、レンタカー会社、ホテル・チエーンなど合計39社をテキサス州の連邦地裁に提訴。被告企業には、米国のホンダ、マツダ、日産、トヨタ、NEC、東芝等の日系企業が含まれる。
⑨事務処理機器の大手、ピットニィ・ボーズ社は、郵便切手自動処理方法に関するBMP侵害でEスタンプ社を提訴。
⑩マリンバ社は、コード化されたソフトウェアのオンライン上のアップデート方法に関するBMP侵害で、ノヴァダイン社を提訴。
⑪NES社は、ソフトウェアパッケージに関するBMP侵害で、イーベイ社を提訴。

欧州の現状

1 特許の保護対象
2 特許要件
3 現行法の見直し

1.EPC52条2項には、産業上の利用性、新規性、進歩性のあるすべての発明は特許の保護対象となるが、以下に示す抽象的で知的な活動は、直接的な技術効果を目的としないので、保護対象から除外される旨が規定されている。すなわち、発見、科学理論、数学的方法、美的創作、頭脳活動用の計画・規則・方法、遊戯用の計画・規則・方法、経済活動用の計画・規則・方法、コンピュータプログラム、情報の提示である。
但し、上記の除外項が適用されるのは、上記の活動に限られた内容「のみ」しか含まない場合である〔52条3項〕。
このように、精神的行為を行い、遊戯を行い、又はビジネスを遂行するための計画、規則、及び方法、並びにコンピュータプログラムは、それ自体に関する限りにおいてのみ、特許性が排除される、旨が明確に規定されている。

2.EPCでは、発明を構成する内容に技術的側面が存在しているか否かが重視され、これによって特許性が判断される。ビジネスの方法(例えば金融方法、保険方法、広告方法等)「それ自体」に該当しないためには、発明の主題が「具体的でかつ技術的性質を有し技術的貢献をなすもの」であれば、この発明に非技術的部分が含まれていても、特許性が認められることになる。

3.EPO審判部は、「技術的性質」は発明の課題、手段、または効果の中に存在しうるとし、コンピュータプログラム製品を特許の対象と認めた最近のIBM審決(T1173/97)では、更なる技術的効果をもたらすものであれば特許性がある、との判断が示された。技術的貢献は、従来技術において知られたものであっても良い。
この結果、コンピュータを用いたビジネス方法であっても、通常のコンピュータの機能や動作を越える「更なる技術的効果」があれば、特許性が認められると考えられる。(プログラム特許、プログラムプロダクト、プログラム媒体、プログラム要素、すべてが特許の対象となるものと思われる。)
審決の要旨は、次のとおりである。
「あらゆるコンピュータプログラムプロダクトは、当該プログラムがコンピュータ上で実行された場合に一定の効果を生じさせる。その効果は、プログラムが実行されている間のみ物理的現実の中に現出する。したがって、コンピュータプログラムプロダクトそれ自体が物理的現実の中で前記の効果を直接開示することはない。プログラムは、それが実行されている間に効果を発現させるのみであり、したがって、前記の効果を生じさせる「可能性」(potential)を持っているというだけである。これはコンピュータプログラムプロダクトが「二次的な」技術効果を生じさせる可能性を持ち得るということである。
特定のコンピュータプログラムプロダクトがコンピュータ上で実行された場合、前述したような意味での技術的効果をもたらすことが立証されたとすれば、直接的な技術的効果と「技術的効果を生じさせる可能性」(間接的な技術的効果と考えられる)との間に殊更に区別を設けることを正当化する理由があるとは思われない。
それゆえ、コンピュータプログラムプロダクトが技術的特徴を持つことはあり得る。そうした製品は、前述したような意味での予め定められた二次的な技術的効果を発生させる可能性があるからである。」
4.なお、現在、EPC52条に関し、「あらゆる技術分野の発明」に特許を認める内容の改正についての議論がなされており、コンピュータ・プログラムやビジネス方法を排除している現行法の見直しが行われている。

5.EPOの代表的な審決例を挙げると、以下のとおりである。
①材料分配方法及びその方法に使用する装置(T636/88)
②自動セルフサービス装置の操作方法(T854/90)
③財務・在庫管理のためのコンピュータシステム(T769/92)
④顧客順列決定システム(T1002/92)
⑤IBM特許(T1173/97)

6.ドイツ特許裁判所が、コンピュータを用いていれば保護対象になる旨の判決。

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