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特許侵害訴訟事件における裁判の実状と注目判決

2001年1月26日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 原  謙 三

Ⅰ.法制度の基盤
(1)日本の法制度の基盤は大陸法の流れを汲む。
主要な法文や法典すなわち制定法をつくる。
(2)米国の法制度の基盤は英国のものであり、コモン・ローである。
慣習法=判例法であり、法典はつくらないことを原則とする。
法規範は一次的には判例から生まれるとする判例法主義がとられる。

Ⅱ.日米の裁判所組織

(1)日本の裁判所組織
・最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所、家庭裁判所の五種類。
・三審制度を採用。
〔注1〕近年、外国企業が当事者になる訴訟や、同じ内容の訴訟が各国裁判所で争われるケースが増加しているところから、最高裁は、2001年1月から若手裁判官をマックス・プランク研究所(独)に派遣して、知的財産権について研究させている。
〔注2〕マックス・プランク研究所(独)は、世界の知的財産専門家が集結している研究所である。
〔注3〕裁判所の構成員は、裁判官、書記官、事務官、調査官からなる。特許庁から派遣された元審判官等は、裁判官の技術的側面を支援する立場から「調査官」と位置付けられている。
〔注4〕知的財産専門部の裁判官は、2000年に、東京地裁が8名が12名に大阪地裁は3名が5名に増員された。

(2)米国の裁判所組織
・州裁判所と連邦裁判所の二重構造。
ⅰ,州裁判所
・各州が本来的な主権国家であり、包括的な権限を有している。
・各州に第一審裁判所、上訴裁判所(三審または二審)。
ⅱ,連邦裁判所
・連邦憲法によって託された事項についてだけ権限を有する。
・連邦地方裁判所、連邦控訴裁判所(CAFCを含む)、連邦最高裁判所の三審制度を採用
(原則として、第二審は法律審、連邦最高裁判所は裁量的にしか事件を取り上げない)。
〔注1〕連邦地方裁判所(District Courts)の管轄地区は、全91地区であり例えばカリフォルニア、ニューヨーク、テキサスにはそれぞれ4地区がある。通常、一人の裁判官で審理する。1990年の全裁判官数は539人。
〔注2〕連邦控訴裁判所は、合計13あり、1990年の全裁判官数は169人。
〔注3〕CAFCの裁判官は計12名、通常は3名でヒアリングを行う。ワシントンDCに所在。
〔注4〕連邦最高裁判所の裁判官は計9名、ワシントンDCに所在。
ⅲ,CAFC(連邦巡回控訴裁判所)
・全米を対象とする特許、連邦商標、著作権を専門に扱う連邦控訴裁判所として1982年に設立。設立目的は、技術的な案件を集めることによって事件処理の効率を高め、特許等についての判例法の統一を図ること(統一の内容はプロパテント的)。
ⅳ,国際貿易委員会(ITC)
・不公正輸入を取締り、国内産業を保護することを目的とする行政裁判所。
ITCの決定に対する不服申立は、CAFCに行う。

Ⅲ.日本の司法制度改革
・司法制度の空洞化
・日本の法曹界はギルド的との批判
・国際紛争が多発
・2003年以降に法科大学院を設立
・10年後の法曹人口を15〜16万人にする計画(人口比でフランス並み)。

Ⅳ.日米裁判の特徴

(1)民事訴訟事件数の絶対差
・日本 22万5千件(1990年比較)
〔注1〕1999年の知的財産訴訟は、計642件で、10年前の約2倍、うち、東京地裁又は大阪地裁への提訴件数は446件。
〔注2〕1998年の民訴法改正(民訴6条)により、特許等に限り、地方から東京地裁又は大阪地裁への提訴が可能となったが、地方から両地裁への提訴件数は、全191件のうち161件であり、全体の8割以上。
・米国 1840万件(1990年比較)

(2)審理主体
ⅰ,日本
・計画審理〔訴えの提起⇒口頭弁論①⇒弁論準備①〜⑥⇒口頭弁論②(侵害論判断)⇒損害論〕
〔注1〕提訴から300日をめどに侵害論が終了する。
〔注2〕審理遅延行為があれば、勝訴しても裁判費用の支払い義務が発生。
〔注3〕当事者双方が欠席の場合、訴え取り下げの擬制(民訴263 条) 。当事者一方が欠席の場合、準備書面記載事項を陳述したものとみなす( 民訴158 条)
・侵害論と損害論
・訴額の追加の検討
・職業裁判官だけで審理を行う。
〔注〕過去には陪審制度を採用していたが(昭和3〜18年)、
①裁判官は、陪審の決定に拘束されない、
②被告の控訴が認められない、
③敗訴の時は、被告人が費用負担、
等の制度上の不備により被告が陪審を辞退するケースが増加したため陪審法は停止された。
・私的自治の原則に基づき、当事者主義(判断の基礎となる事実は当事者の弁論と証拠のみから採用、争点に限って判断)と、弁論主義(原則公開法廷、裁判官の面前で弁論であり、口頭で陳述されたことのみが判決の基礎とされる:必要的口頭弁論の原則(民訴87①)と任意的口頭弁論の原則( 民訴87①但書) )を基本原理とする。
・挙証責任:(原則)主張責任を負う者が挙証責任を負う。
(例外)挙証責任の転換(「・・・と推定する」の規定が該当)
・法務省は刑事裁判に限り参審制の導入を検討(職業裁判官三名と市民二名が議論し量刑も含めて判決内容を決定)
ⅱ,米国
・第一審に限り「陪審制」を採用(憲法修正第7条で保障)。
〔注1〕陪審員候補者として選挙人名簿からランダムに1000以上を選定
⇒⇒⇒陪審員適正質問状により、
①地区内に1年以下の居住者、
②英語の理解ができない者、
③肉体的又は精神的病者、
④犯罪歴者
を除外、
⇒⇒⇒陪審員パネルとして約50名を選定、
⇒⇒⇒絶対忌避(理由なし3名まで忌避)と理由忌避(利害関係、偏見等の理由により忌避)
⇒⇒⇒人種・職業・性別・学歴などに関係無く、市民から6〜12名の陪審員を無作意に選出。
〔注2〕裁判官は、裁判原則を陪審員に理解させ、判断材料の種類をアドバイスし、裁判が正当に行われるように審理を指揮。陪審員は、全員一致に至るまで評議(当事者が同意すれば多数決も可)して評決し(評決の理由は明示不要)、最終的に裁判官が判決する。
〔注3〕陪審員の評議の結果、どうしても全員一致に至らない場合は、新陪審員を選定し直す。
〔注4〕陪審員の決定できる事項(評決):
①事実認定(作用効果等を含む争いのあるすべての事実)。
②事実と法律の混合事項(同一性 102条、非自明性 103条、開示要件112条、特許の有効・無効、侵害・非侵害、故意の認定)。
③損害賠償額の判断
〔注5〕裁判官の決定できる事項(判決):
①法律解釈(全法律の解釈、クレーム解釈、立証責任、証拠基準)
②衡平法上判断(差止め、仮処分、三倍額賠償の認否、フロードによる執行阻止等 )

(3)賠償額
ⅰ,日本
・民事法は専ら被害の補償のためのものとされ、インセンティブが与えられることはない。
・不法行為(特許侵害を含む)では、原則として単なる過失と故意とを区別することなく、実損害を限度とする賠償を命ずる。
・特許事件における賠償額は、従前、数百万から数千万円程度。しかしこの賠償額は、近年高額化の傾向にあり、薬剤の製法特許に関して、総額30億円の賠償が認められた判決も現れた。
(東京地裁平5(ワ)11876号, 平10,10,12判決)
ⅱ,米国
・特許法は故意侵害に対する懲罰目的のため、三倍額賠償を規定(米国特許法284 条(35 U.S.C284))。プロパテントを反映して、三倍額賠償を課される事件は増加傾向にある。
〔注1〕懲罰規定としての「三倍額賠償」は、最高3倍までの意。
〔注2〕故意(willful)または不誠実(bad faith) の場合に適用。
・特許事件で最高額が認められたポラロイド対コダック事件の賠償額は約9億ドル。

(4)米国特有の訴訟手続
訴訟経済を最重視した法制度を採用。
ⅰ.ラッチス(Laches) (懈怠)
・訴訟提起が不当に遅れないこと( 特許訴訟要因を知ってから原則6年) 。訴訟提起の不当な遅延によって侵害者に不利益等が生じた場合、過去分の損害賠償が得られなくなる(将来分の損害賠償及び差し止めは可能)。
ⅱ.管轄権(Jurisdiction )と裁判地(Venue) の選定
・管轄権は、原則として訴訟当事者又は訴訟物件が管轄内にあることにより決定される。
・特許ライセンス契約違反の場合、州法の出訴期限制限法が適用(通常は4年)される。
・裁判地は、地理的人種的偏見等を考慮して決定する。
ⅲ,Clean Hand
・出願⇒和解交渉⇒裁判を通じて、Clean Handが要求される。
・不当な行為の例示:①フロード、②脅迫、③強い立場の悪用、④非良心的行為、⑤重過失
ⅳ,証拠開示手続(ディスカバリー)
・トライアルの準備手続であって、ディスカバリーの間に主張の整理や証拠の収集を行う。
・訴因に関連するすべての事実情報が対象。
・ディスカバリーに際し、訴訟の要件事実に関連する開示要求を相手方から受けた当事者は、弁護士特権に該当する場合を除いて、要求に応えて内部情報を明かさなければならない。
・長期間を要する(特許1件の訴訟の場合で約2年、ポラロイド対コダック事件では、基本特許 12件、ディスカバリーだけで約10年、訴訟全体で約14年を要した)。訴訟費用が高額化する原因はここにある。
・当事者同士が互いに一つの結論を認め合って約定書(Stipulation)を作り公判では争点のみに焦点を絞る。
ⅴ.証言録取(Deposition)
・当事者間で決定した任意の場所(通常はホテル、法律事務所等、但し、日本国内の場合はアメリカ大使館又は領事館)で、コートリポーターが立会いのうえ行われる。
ⅵ,公判(Trial)集中審理方式による事実認定手続。
(1) 陪審員裁判(Jury Trial)。
・訴訟経済を重視し、かつ陪審員を拘束する制約上、集中審理が必要とされる(ハネウエル対ミノルタ事件では約2カ月(特許4件)、コイル対セガ事件では1週間(特許1件))を要した。
・外部専門家証人や特許弁護士等の証人尋問⇒⇒⇒陪審員が評議⇒⇒⇒陪審員の評決⇒⇒⇒公判終了⇒⇒⇒裁判官が判決。
〔注1〕陪審員の評決は、陪審員説示書(通常数十頁にわたる)に陪審員が書き込むことにより行われる。
〔注2〕陪審員説示書とその結果が判決となり、裁判官は判決文を書かない。
 (2) 裁判官裁判(Bench Trial) 。
・裁判官が判決文を書く。

(5)特許の有効性判断
ⅰ,日本
・特許を無効とする処分は特許庁による特許無効の審決によってのみ行うべきものとされ、侵害訴訟の場面で特許が無効であるとされることはない。(特許庁と裁判所との権限配分)
〔注目判決〕
特許無効の主張を認めた判決(半導体装置事件:キルビー特許)が注目を集めている。
元出願は昭35.2.6出願( 現行法は昭35.4.1施行) 、昭39.1.30 分割出願 (原出願) 、昭46.12.21に分割出願( 本件出願)
〔富士通vs.TI社〕
〔東京高裁判決〕(平9.9.10判時1615-10)
〔注〕(判決要旨)本件出願は、原出願と同一の発明につき特許出願したものとして、特許法39条1項の規定により本来特許されるべきものではなかったものであるから、本件特許は無効とされる蓋然性がきわめて高いものといわなければならない。のみならず、原発明については、審決取消訴訟判決の確定により、公知の発明から容易に推考され発明として拒絶査定が確定しているのであるから、原発明と実質的に同一である本件特許についてもこの理由による無効事由が内在するものといわなければならず、このような無効とされる蓋然性が高い特許権に基づき第三者に対して権利を行使することは、権利の濫用として許されるべきことではない」
〔最高裁判決〕(平10( オ)364号、平成12.4.11 言渡)。
〔注〕(判決要旨)特許の無効審決が確定する以前であっても、裁判所は特許に無効理由が存在することが明らかであるか否かについて判断することができると解すべきであり、審理の結果、当該特許に無効理由が存在することが明らかであるときは、その特許権に基づく差止め、損害賠償等の請求は、特段の事情がない限り、権利の濫用に当たり許されないと解するのが相当。
右見解と異なる大審院判例は、以上と抵触する限度において、いずれもこれを変更すべきである。
ⅱ,米国
・侵害訴訟において裁判所で特許の有効性を争うことができる。

Ⅴ.特許侵害訴訟の流れ(日米共通)

1.訴訟提起前
・警告書
警告書を受け取った相手方は確認訴訟を提起できる
(米国は場合、裁判地の選定やディスカバリーで主導権を握ることができる)。
・和解交渉(内外国調査/提案額の根拠付け/特許の強弱/証拠の強弱/裁判費用/
信頼関係の構築/期間(時効を考慮)/相手の立場/設計変更/交渉記録、「誠意」が重要)
〔注1〕日本では、交渉中に認めた事項は証拠となるが、米国では、和解交渉の奨励を重視する配慮から、交渉中に認めた侵害等の情報は原則として証拠にならない(証拠規則408)
〔注2〕ミノルタ対ハネウエル事件では、訴訟前の和解交渉での提示額は約30億円であったが、評決では約120億円。
〔注3〕日本では、時効(民法 724条、時効の中断: 民法 147条/149条、民訴 147条)で消滅した損害部分は、不当利得返還請求(通常は実施料相当額程度)できる(民法703条〜 ) 。
〔注4〕米国では、侵害者側の故意を回避する目的で、事業展開前に鑑定書を求めておく。複数の鑑定書が有効。
・和解契約

2.訴訟提起後

(1)原告側
ⅰ,訴え提起
〔注1〕日本の差止請求の訴額算定基準:(被告の年間売上額)×(被告の利益率)×(特許権の残存年数)×1/8
〔注2〕仮執行の宣言(民訴259)、年五分の利率 (民404)
〔注3〕本案訴訟は合議制、仮処分は単独制。
〔注4〕損害賠償:侵害品の単なる使用者は実施料相当額がベース。侵害品の製造者は権利者の逸失利益がベース。
ⅱ,技術的範囲の認定
ⅲ,イ号物件(方法)の特定
ⅳ,対比
ⅴ,文理解釈上の同一の主張
ⅵ,文理解釈上同一でない場合の「均等論」の主張「均等論」に関する日米の注目判決。

〔日本の注目判決〕
最高裁判決(ボールスプライン事件:平6(オ)1083 号、平10.2.24 判決、判タ969 号105 頁) において、均等論の五つの成立要件が示された。
①異なる部分が本件発明の本質的部分でないこと。
②異なる部分を対象製品におけるものと置き換えても、本件発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであること。
③異なる部分に置換することに、当業者が対象製品の輸入、販売等の時点において容易に想到することができたものであること。
④対象製品が、本件発明の出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に推考できたものではないこと。
⑤対象製品が、本件発明の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がないこと。

〔米国の注目判決〕
米国では、対象部分が互いに、①同じ方法(same way) 、②同じ機能(same function) ③同じ効果(same result)であり、かつ、出願経過禁反言に該当しないときは,均等物として認定される。
昨年、CAFC : Festo Corporation v. SMC Corporation et al. (95-1066, 判決2000.11.29) において、均等論の概念を転換する判決がなされた。

(CAFCの判決要旨)
1.クレームの範囲を減縮する補正は、補正されたクレーム要件に対して出願経過禁反言の対象となる。それゆえ、上記クレーム要件に対しては均等論の適用を享受できない。
2.出願経過禁反言の対象となる補正は、従来技術に係る拒絶理由を克服するためのもの(35USC §102,§103,§11)に限定されない。クレーム範囲の減縮が自発補正によるものであっても、補正されたクレーム要件に対して出願経過禁反言の対象となる。
3.出願経過記録に、補正がクレームの減縮のためのものではない旨の釈明がなされていない場合、この補正は均等論の適用を享受できない。(裁判で釈明しても認めらない。)
4.出願当初の独立クレームを削除し、その従属クレームを独立クレームに書き直したものも減縮補正とされ、このクレーム要件に対しても均等論の適用を享受できない。
5.要約すれば、出願経過禁反言の対象にならない補正とは、クレームの減縮でない補正(クレームの拡大補正、等)や、明らかに些細な文法上の修正等に限られ、かつ、補正がクレームの減縮のためのものではない旨の釈明が存在するものをいう。

(上記判決の問題点)
ⅰ.特許権者の技術を模倣しようとする者は、先ず出願経過を検討し、特許性に係る減縮縮補正を特定できれば、クレームの減縮補正事項に対応する箇所に小改良を加えるだけで、容易に侵害を免れることが可能となり、その他のクレーム要件についてはそまま模倣することが可能となる。
ⅱ.模倣を企てる者は、上記判決を悪用する衝動にかられると推測される。なぜなら補正クレームの減縮事項に対して、公知の代替手段を置き換えるだけで、非侵害を主張できるからである。
ⅲ.特許権者は、補正クレームの減縮事項について、将来の技術に関する均等論の適用を享受できない。

(上記問題点に対する対策)
ⅰ.出願明細書の作成に先立って、将来の減縮補正を未然に回避すべく、従来技術に関する注意深い検索及び検討が必要となる。
ⅱ.出願クレームの作成にあたり、出願当初クレームが特許の法定要件を満たさない場合の措置として、予め、考え得るすべての補正事項を考慮しておく必要がある。

〔注〕
・出願当初から上位・下位クレームだけでなく、広範囲に、多数の中位概念クレームも立てておく。
・出願当初から多面的クレームを立てておく。
ⅲ.First O.A.に対する応答時に、クレームの範囲を拡大した新規の独立クレームを追加する。(但し、このクレームに均等論を適用できるか不明)
ⅳ.クレームの減縮補正は極力避け、必要に応じて審判請求で争う。
ⅴ.審査官とのインタビュー時は、不要に長いインタビューサマリ記録が作成されることを避ける。
ⅵ.減縮補正を避けることができない場合、公知技術に近づく方向であって、公知技術との間に差異が認められる範囲内に止める。
ⅶ.あらゆる補正について、理由を付記する。
ⅷ.ケースによっては、単一出願とせず、複数出願の形態をとる。
(分割も補正の一種であるから、分割出願しても、原出願のクレームをそのまま立てるしかないと考える。)
ⅸ.可能であれば、structural termsと、 means plus function termsとの双方のクレームを作成しておく。(structural termsを減縮補正しても、 means plus function termsを補正しないですむケースがあり、この場合、 means plus functionクレームは均等論の適用を享受できる。)
x.クレームなしで仮出願し、1年以内にファイルする。クレームの減縮理由の記載を回避するのに有効。
ⅶ,反訴(日本)
〔注1〕日亜化学対豊田合成事件は、日亜化学が約100件の「青色LED(発光ダイオード)に関する特許を取得。東京地裁で、豊田合成の反訴を含め9件の訴訟合戦。昨年、日亜化学が二つの訴訟で第一審勝訴。
〔注2〕「反訴」(民訴 146) とは、継続中の訴訟手続内において被告が原告を相手として提起する訴訟をいう。反訴の要件は次のとおり。
①本訴が事実審に継続し、口頭弁論終結前であること。
②請求の併合要件を充足。
③本訴請求又はこれに対する防御方法と関連すること。
④著しく訴訟手続を遅延させないこと。
⑤控訴審では、反訴被告の同意を要する(民訴300 ①)
〔注3〕特許権侵害訴訟における反訴の例:
①虚偽事実流布禁止請求(不競法2 ①13)
②流布行為の差止め、損害賠償、信用回復

(2)被告側
ⅰ,技術的範囲の限定
ⅱ,抗弁事由の検討
ⅲ,特許無効の主張と特許無効審判の請求

(3)訴訟費用を考慮し(特に米国訴訟)、常に和解のタイミングと和解条件に配慮しながら訴訟進行することが重要。

Ⅵ.商標事件の特異性

〔注目判決〕
商標の特異な事件として注目を集めたのが、下記の最高裁判決(小僧寿し事件:平6(オ) 1102 号、平9.3.11判決)である。

(判決要旨)
「登録商標に類似する標章を第三者がその製造販売する商品につき商標として使用した場合であっても、当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず、登録商標に類似する標章を使用することが第三者の商品の売上げに全く寄与していないことが明らかなときは、得べかりし利益としての実施料相当額の損害も生じていないというべきである。」

〔注〕特許の場合、不実施でも実施料相当額以上が損害賠償として認められ(特102 ③④) 、商標の場合も、過去の判例では、不使用であっても0.2〜3.0%の使用料相当額が認められていた。

Ⅶ.Q & A

1.生産方法などの特許で特許侵害の疑いがあるものの立証をすることが困難な場合において米国のディスカバリー制度とまではいかないものの、国内においても、開示義務に関する法体系が整いつつあるようです。実務上、どの程度有効か、又は注意すべき点などについ
て、ご教授頂きたい。
ⅰ.損害賠償額の算定
(1)特許権者等の実損害額
(2)特許権者等の損害額として認定
§102 ①・・・侵害者側の譲渡数量×自己の単位数量当たりの利益額(但し、特許権者等の実施能力の限度内)
(3)特許権者等の損害額の推定⇒⇒⇒侵害者の利益額§102 ②
(4)特許権者等が不実施等の場合は、実施料相当額以上§102 ③④
ⅱ.過失の推定§103
ⅲ. 生産方法の推定§104
ⅳ. 侵害者による具体的実施態様の明示義務§104 の2(侵害行為立証の容易化)
特許権者による侵害品特定の困難性を解消したもの。公正迅速と信義誠実の原則(民訴2条)に基づき、当事者の訴訟遂行上の協力義務を明確化した。
ⅴ. 文書提出命令の申立§105 ①とインカメラ§105 ②
ⅵ. 損害計算鑑定人制度§105 の2
ⅶ. 損害立証困難な場合の裁判所による相当損害額の認定§105 の3

2.不正競争防止法、著作権法関係の最近の注目すべき判例について紹介願いたい。
(1)H11.9.20東京地裁平11 (ヨ)22125不正競争民事仮処分(アップルコンピュータ v.ソーテック)
債権者商品のパソコン「iMac」の形態に周知商品表示性を認め、これに類似する債務者商品は債権者商品と混同のおそれがあるとして、不正競争防止法3条1項、2条1項1号に基づき、その製造販売等の禁止を認めた事例。
(2) H12.12.6富山地裁平10 (ワ)323不正競争民事訴訟事件(ジャックス v.日本海パクト)
ドメイン名の使用を不正競争防止法2条1項1号及び2号の「商品等表示」の「使用」と認め、同法2条1項2号に基づき、原告の著名な営業表示「JACCS」に類似する、被告の登録ドメイン名「http://www.jaccs.co.jp」及び被告のホームページに表示の「JACCS」の使用の差し止めを認めた事例。現在、控訴審理中。
〔注1〕ドメイン名の登録は先着順で決定されるので、有名企業に高額買取を求めるケースが続発。
〔注2〕国際紛争の仲裁機関はWIPO。ソニーや任天堂が勝訴。WIPOでは、末尾に「com」が付くドメイン名に関する紛争のみを扱っている。
〔注3〕WIPOの示した不正判断基準は次のとおり。
①誤認混同性があるか否か。
②使用者側に正当な権利があるか否か。
③悪意で使用しているか否か。

3.ビジネスモデル特許関係の最近の日本での注目すべき判例について紹介下さい。
米国では多数の訴訟が発生しているが、日本では未だなし。

以上

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