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プロパテント政策と東北アジア経済共同体の構想

2003年2月14日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
韓国弁理士 李 来鎬

目次

はじめに
1.今何故プロパテントであろうか
2.プロパテント政策が目指すべきモデルと成功の条件
3.東北アジア経済共同体の構想−真のモデル

はじめに
最近、日本の知的財産権制度は、読みこなせないほど急激な変化を重ねつつある。昨年特許法の主な改正内容だけを見ても、「(コンピュータ)プログラム等」を「物」に含める改正、発明の「実施」概念の拡大、公知文献開示制度の導入、間接侵害規定の見直しなど、ずいぶん画期的な内容を含んでいる。また、今後の改正を予定しているかあるいは目指して議論されているものもある。一部の医療行為を特許保護の対象としようとする動き、審査の充実化と共に特許権維持費用の軽減を図る方向への手数料・特許料規定の見直し、管轄集中による実質的な特許裁判所機能の創設、従業者発明制度の見直し、米国の懲罰的損害賠償制度のような損害賠償の強化等がそれである。全てではないがこれら変化は、特許権の強化を指向する「プロパテント政策」に基づいているといえる。

本稿では、プロパテント政策の背景を低迷が続いている日本の経済から検討したうえ、プロパテント政策の成功に必要な条件を無体財産の本質から考え、東北アジア経済共同体をプロパテント政策の目指す所として提案する。

1.今何故プロパテントであろうか
本来特許制度(以下、「特許制度」および「特許権」とは、「知的財産権制度」および「知的財産権」と読み替えてもよいだろう)は、国の経済産業政策において重要な地位を占めており、国の経済産業環境の変化に伴って急激にあるいは緩やかに変わるものである。「プロパテント」と、これに相反して特許権の制限を指向する「アンチパテント」とは、速かれ遅かれ産業環境の変化を反映するものに違いないだろう。また、プロパテントとアンチパテントは、特許制度を支える両柱である「発明の保護」と「発明の利用」(特許法第1条)とのバランスの問題でもある。

なお、特許権とは、発明すなわち技術思想という無体物に関する権利である。このような無体財産権は、あまりにも抽象的であり実質的な占有が不可能である。また、いくら持っていても誰かによって有体物の生産に用いられない限り単なる一片の紙切れにすぎない。

承知のように、日本の経済はバブル崩壊以降、前の見えない低迷が続いている。暴落して回復の気味もない不動産価格、中国等の途上国に追いつかれて作れば作るほど赤字になる物づくり。一言でいえば、今まで経済を支えてきた有体物経済の退潮である。

結局、プロパテント政策は、有体財産がこれ以上経済を支えてくれないという現実の認識から、無体財産の正当な評価およびより積極的な行使を通じて経済に活力を吹き込んで、長期的には経済を再生させようとする抜本的な経済改革プログラムの一軸であるといえる。
なお、多くの政策はどちらかを選択する行為であるが、そこにはそのどちらかを採らざるを得ない状況があり、この点では選択というよりは必然であるといえる。今のプロパテント政策も、物づくりの経済のみで日本の経済が再生できるといえない限り、ある程度必然であるといえるだろう。

2.プロパテント政策が目指すべきモデルと成功の条件
では、プロパテント政策をもって整えようとする経済環境、モデルは何だろうか。
プロパテント政策は、一国の経済産業政策の一部であるが、その及ぶ範囲を一国内に止めては決して成功できない政策である。プロパテント政策を招いた経済の低迷が、経済のグローバル化、中でも中国(ここでは単に「中国」とするが、韓国、台湾などの後発工業国を含む)の成長に大きな原因があるからである。そこで、今最も恐ろしい生産基地となった中国に対して明確な方向性を提示しない経済政策は、単なる症状治療にすぎない。
中国を考慮すると、好き嫌いを別にして、現在日本が持っている長所、つまり研究・開発能力の優位を生かす方向に行くだろう。すなわち、プロパテント政策が成功するためのモデルは、一応日本と中国を一塊にして「研究・開発は日本が、生産は中国で、そして中国からはローヤルティを」となるだろう。

このモデルができるためには次の2つの条件が要る。
第一は、国内の条件で、生産部門から研究・開発部門への人力の再配置である。これは、長期的には教育の課題(創造力のある人を育成−近年「生きる力、ゆとりのある教育」とのキャッチフレーズで立ち上がった教育改革プログラムがこれに該当するだろう)であり、短期的にはリストラの課題であろう。しかし、教育改革の実はあまりにも遠いものであり、構造改革はかなりの犠牲を伴う。
第二は、国外、つまり中国の条件で、中国の知的財産権の保護水準が期待とおり上がってくれるか、つまり中国が素直にローヤルティを払ってくれるかの問題である。これについては、中国の最近の知的財産権に対する態度の変化を見れば、ある程度楽観的に期待してもよいだろう。

ともかく、何とかしてこの2つの条件を満たしたとしよう。では、先述のモデルが順調に動き日本の経済は再生するのであろうか。

まず、念頭においておくべきものがある。生産部門を中国へ移転した場合、中国への技術移転は必然的であり、中国は次第に生産基地から研究・開発部門の比重が大きい国となるということである。もちろん日本の技術水準も同時に上がるだろうがその速度は中国の方が遥かに速く、究極には両国の技術水準の格差が縮まり中国が払うローヤルティも次第に減るだろう。これは、今でも見られる現象であり、プロパテントの先進国であるアメリカを見ても明らかである。
アメリカが本格的なプロパテント政策に取り組んだのは、長期不況が続いていた1980年代である。当時アメリカは、生産部門の途上国への移転が進んでいて途上国からの模倣品が流入していた。そこで、特許権の保護を強化することによって自国の産業および知的財産を保護しようとしたのがプロパテント政策であったといえる。プロパテント政策のおかげでアメリカは1990年代に好況になったが、21世紀に入っては憂慮の声が高いのが現状である。そこには複合的な原因があるわけであるが、簡単にいえば途上国も次第に技術的にアメリカから独立してきたからであろう。要するに、生産があるところに技術の発展があり研究・開発も生まれる。

このような事態を乗り越えるためには、絶え間なく新しい技術分野の開拓および特許保護対象の拡大が必要である。近年ブームとなってきた、ビジネスモデル特許を含めたIT(情報技術)分野、バイオテクノロジー分野がそれである。しかし、新しい分野でも途上国に追いつかれるのは時間の問題であろう。また、いつまでも新しい分野の開拓ができるのであろうか。
より根本的な方策は、先述した「無体財産権は、生産につながらないと無用」とのことから始まる。すなわち、皆が研究・開発のみをしたら誰が生産するのか、および生産に裏付けられていない研究・開発がいつまでも可能であるのかとの疑問から、研究・開発とバランスをとって生産部門を復興させる方策である。結局、如何に経済のグローバル化が進んでも、各経済部門ごとに最小限の割合を守らなければならないといえる。
なお、生産部門の復興または維持は、もはやプロパテント政策といえないかも知れない。必ずとはいえないが、生産部門の復興には特許権の制限がある程度必要となるからである。言い換えれば、有体財産の浮上は無体財産の相対的な沈降を伴う。

3.東北アジア経済共同体の構想−真のモデル
一方、各経済部門ごとの最小限の割合は、必ずしも一国単位で守らなければならないものではない。日本と中国とを一塊にして守ればよいだろう。すなわち、ヨーロッパに見る経済共同体あるいは経済連合のモデルである。ヨーロッパにおいては、ずいぶん前から準備を進めてきてユーロ貨の立ち上げまで成功したが、これに比べたら日本と中国との経済共同体は始まってもいない状態であるといえる。しかも、経済システムの異質性、文化・歴史の異質性、地理的な距離など、山ほどの課題が積もっている。さらに、地理的距離という課題の解決に役立ち得る朝鮮半島まで念頭に入れれば、特に、最近北朝鮮の核開発問題をめぐる東北アジアの情勢を見れば、課題は手を挙げるほど複雑になる。

しかし、グローバル化、ブロック化という流れに反して一国主義に戻ることができない現時点で、東(北)アジア経済共同体の構想は、その実現にいくらの時間と努力が必要であっても、日本、ひいては東(北)アジア諸国が共に勝ち得る唯一の解法ではないだろうか。判断はまだ時機尚早であるが、最近アメリカ経済に暗い気味があるのと、併せてプロパテント政策が後退しているように見えるの(最近のアメリカにおける特許侵害訴訟の判決では、権利行使により厳しい条件を付しているものが多いようである)は、共に勝ち得る共同体を目指していなかったあるいは目指せなかったからではないだろうか。

プロパテントかアンチパテントかという問題が、正しいか正しくないかの問題ではなく、与えられた経済環境の下でどちらか必然的に採らざるを得ない政策であることと同様に、今日本経済の再生の問題は、少なくとも東北アジア諸国と共に解決して行くべき課題であると思われる。今必要なのは、その必然性に対する共感とファイティングである。ファイティングがあれば、経済共同体はさほど遠い話ではないと思う。
なお、東北アジア経済共同体が順調に進んでいくと、経済、知的財産権における国境は無意味なものとなるだろう。そして、日本の経済再生の問題はもう日本だけの問題ではなく共同体経済全体の問題となり、日本のパテント政策も目途が立つ地域の統一特許制度のあり方のもとで考えるものとなるだろう。この点で、先述のモデル「研究・開発は日本が、生産は中国で、そして中国からはローヤルティを」も変えるべきであろう。国を問わずに経済共同体の内で「バランスをとった研究・開発と生産、そして知的財産の正当な尊重」へ。

以上

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