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実用新案制度の見直しについて

2004年3月4日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 松村 一城

去る平成16年2月10日、「特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、その殆どは平成17年4月1日から施行される予定となっている。本改正は、平成14年に成立した知的財産基本法、並びに平成15年7月に発表された「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」等により近年急速に進められている「知財立国」化実現のために講じられるものである。

法律案に盛り込まれる措置としては、先行技術調査の外注可能化、審査官の増員、職務発明制度の見直し等があるが、その一つとして、実用新案制度の見直しがある。本格的な改正は、平成5年以来11年ぶりのことである。

実用新案制度は、特許発明の水準を一定以上に保ちつつ、特許制度では保護されないようないわゆる小発明を保護することを目的とし、わが国の技術水準が低かった時代には、特許制度を補完する制度として有効に機能してきた。しかし、わが国の技術水準の向上などにより1981年以降は特許出願数が実用新案登録出願数を上回るようになり、多項制の改善以降、実用新案登録出願数は急減した。その一方、玩具、生活用品、スポーツ用品等、製品寿命の短い技術分野が拡大してきたことから、実用新案登録制度は、出願後極めて早期に実施が開始され、ライフサイクルの短い技術の適切な保護を目的として、平成5年に無審査登録制度へ移行した。

当時は、これにより実用新案制度の利用増加が期待され、特許出願のうち、早期実施を希望するものについては相当程度が実用新案登録出願に移行し、その結果、特許出願の審査の迅速化に寄与するものと予測されていた。しかし、実際には、実用新案登録出願数は無審査登録制度への移行後も減少の一途をたどり、平成14年度の特許出願件数約42万件に対し、実用新案登録出願件数は昭和60年頃の約20万件から平成14年度は約8千件にまで落ち込んだ。そして、もっと使いやすい制度にすべきであるという意見が高まる一方、制度を廃止すべきだという見方もあった。

このような状況下、今回、実用新案制度の存続が決定され、その魅力向上により、特許出願の代替効果のある実用新案登録出願の奨励が図られることとなった。その存続意義としては、

(1)特許出願の審査待ち期間は平成14年現在約24月まで短縮されているが(平成3年:約31月)、近年さらに製品のライフサイクル、企業の開発リードタイムが短縮化する傾向にある中、事業化のタイミングが早い技術についての適切な保護の要請が根強いこと。
(2)特許制度では、出願後設定登録までの期間は補償金請求権による保護しかないが、実用新案制度では、制限はあるが早期権利行使が可能であること。
(3)特許制度よりも登録までにかかるコストが低いこと。
(4)無審査登録制度ゆえの権利濫用のおそれは、評価書提示義務、損害賠償責任の強化の制度により抑制されていること。
が挙げられている。

そして、制度をさらに使いやすく、早期権利保護に資するものとするため、以下の点を柱とする改正が行われることとなった。
(1)存続期間を出願日から6年→10年に延長。
(2)実用新案登録に基づく特許出願制度を導入し、実用新案登録後でも特許出願への変更を可能とする。
(3)一定要件下、実用新案登録請求の範囲の減縮を認める。
(4)登録料の減額。
(5)刊行物以外の無効理由の情報提供を可能とすることによる情報提供制度の拡充。

柱となるのは(1)〜(3)である。(1)は、実用新案権の存続期間が特許権と比較して短すぎることが制度利用の妨げの一因となっていると考えられたこと、全事業分野平均の製品のライフサイクルが約8年であることから延長されたものである。

もっとも大きい改正点は(2)であろう。これは、出願時は実用新案権で十分と考えていた場合でも、出願後の技術動向の変化や事業計画の変更により、安定した権利行使が可能な特許権を取得すべきであったと考える場合が少なくないため、実用新案登録後であっても実用新案権に基づく特許出願ができるようにするものである。

この場合、特許出願の明細書等の記載事項が登録実用新案の記載事項の範囲内であれば、もとの実用新案登録出願における出願日を確保することができる(特46条の2第2項)。基とした実用新案権は特許出願と同時に放棄することとされており、このとき、実用新案登録出願の先願の地位は既に確定しているものの、先願主義の例外が規定されている(特39条4項かっこ書)。ただし、特許出願は、特許出願の審査請求期間が出願日から3年であることから、実用新案登録出願日から3年以内にしなければならず(特46条の2第1項第1号)、実用新案技術評価書請求を既にした後は、実用新案権による保護を希望していると考えられることから、特許出願が禁止される(特46条の2第1項第1号、2号)。また、無効審判が請求された場合は、すでに行った審理が無駄になることを防ぐため、答弁書提出期間経過後に特許出願をすることはできない(特46条の2第1項第1号)。この改正により、同じ技術を特許権取得までは実用新案権で保護し、特許権取得後は特許権で保護することが可能となる。

さらに、(3)は、権利範囲の訂正が請求項の削除しかできないことが制度を使いにくくしていた一要因であるとして、権利者の利便性向上のため、第三者の監視負担が過大とならない範囲で実用新案登録請求の範囲の減縮等を認め、併せて訂正要件違反を無効理由とするものである(実14条の2)。この点では、平成5年改正法前の姿に近づいたことになる。

さて、私自身は、近年の出願数の激減という状況に加え、近年プロパテント政策が矢継ぎ早に実行へと移され、特許出願の審査期間も短縮化の傾向にあることを考えれば、早期保護が可能とはいえ、権利行使に大きな制限があるため「強い権利」となり難い実用新案制度は遠からず廃止されるのではないかと考えていた。今回、実用新案制度を廃止してしまうのではなく、もっと積極的に活用することを可能とする方向へと転換がなされることになったため、今後、新しい制度が有効に利用され、目的どおり特許審査の迅速化に寄与することを期待したいと思う。存続期間の延長により、製品のライフサイクルや権利者が必要と考える権利維持期間の実態に合った権利に近づけることが可能となるだろうし、従来より魅力のある制度になったのではないかと思う。また、実用新案登録後に特許出願への変更を認める制度は、実用新案権の放棄を伴い、しかも特許出願後の評価書請求はできないため実用新案権と特許権の二重の保護を受けることはできないという制限はあるが、平成5年法改正の趣旨である「早期実施される考案の適確な保護」をより具体化するものとして一定の効果が期待できるのではないかと思う。

一方、権利の濫用を防ぐための実用新案法29条の3については特に改正はされておらず、権利行使について相当注意義務を怠ったときは権利者が原則として損害賠償責任を負うという点については変わりがない。これは、無審査登録制度が現在の実用新案制度の根幹であり、無効理由を有する権利に基づく権利の濫用がなされる可能性がある限り仕方のないところであろうし、早期保護と安定した権利行使との両方を満足させることの難しさを感じるところでもある。権利行使のことを考えると、実用新案権を存置するよりも、特許出願に変更するケースが多くなるかもしれない。

今回、改正には盛り込まれなかった保護対象を物品の形状等から広げるか否かという問題については、早期保護が必要なケースが多いと考えられるコンピューター・ソフトウェア等との関係で引き続き検討がなされるとのことなので、最適な保護方法の実現を期待したい。

果たして、一旦あまり省みられることがなくなってしまった実用新案制度が、今回の改正により再び発明者・考案者の関心を引き付けることができるようになるのか、未知数なところも多いかとは思うが、今後の制度の運用状況、利用状況に注目したいと思う。

以上

<参考文献>
・ 「実用新案制度の魅力向上に向けて」特許庁ホームページ
  http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/kaisei/kaisei2/sinsa_jinsoku.htm
・ 特許法概説 第13版 吉藤幸朔著、熊谷健一補訂
・ 工業所有権法逐条解説 第16版 特許庁編

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