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商標制度についての検討事項 〜法4条1項11号の観点から〜

2004年4月26日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 松本 康伸

1. はじめに
昨年から商標制度小委員会において、現行の商標制度を改善する方法について検討がなされており、とりわけ、コンセント制度、異議待ち審査制度、不使用商標対策が議論されている。これらの制度は一見独立した制度として、それぞれ別個に導入することが可能であるように見える。しかしながら、これらの制度について議論を必要とするような背景には、互いに密接に関連した問題点があると言える。
そこで、以下、商標法4条1項11号という観点から現行の商標制度について、その現状と問題点を検討するとともに、改善策についても検討を試みることとする。

商標法4条1項11号は、先願先登録に係る商標・指定商品(役務)と同一・類似の後願については登録を受けることができない旨規定する。本号は、先願先登録に係る商標・指定商品と同一・類似の範囲を出所の混同を生ずる範囲と擬制して、そのような後願の登録を排除することにより、出所の混同を未然に防止すべく、設けられたものである。実務上、商標登録出願が拒絶される理由として本号は非常に多くの出願に対して適用されており、それゆえに現行商標制度の大きな問題点も本号は抱えている。

2.商標法4条1項11号の問題点

(1)商標及び商品(役務)の類否判断について
商標法は、商標の使用により業務上化体した信用の保護を目的としている(1
条)。かかる業務上の信用は、商標が実際に市場において使用される状況等に応じて変化するものであり、商標の類似及び混同の有無も本来、この信用の大きさ等に応じて変化する流動的なものである。
しかし、現行商標制度においては、商標登録出願の審査はすべて職権でなされ
ており(15条)、法4条1項11号に関しても、商標の類否判断は主に、先願・後願両商標から生ずる外観、称呼、観念を対比することによって一般的・抽象的になされている。このように、現行の職権審査制度のもとでは、商標の類否は、商標の構成そのものに基づいて判断されている。

また、商品の類否判断に関しても、出願においてはいわゆる包括指定が可能であり、実際の取引においての具体的な混同が生ずるおそれが認められるか否かではなく、迅速な審査という観点に基づき、類似群コードによって形式的になされているのが現状である。

そこで、商標の現実の市場における働きという点からすれば、審査においても構成のみならず、実際の取引の実情に即して個別・具体的な類否判断をおこない、商標の実態を反映させるべきではないか、ということが問題となる。すなわち、審決取消訴訟・侵害訴訟における判断と同じように、審査においても類似概念を具体的な出所混同のひとつとして位置づけることができないかが問題となるのである。
また、これに関連して、現実の市場においては類似しないと判断されているにもかかわらず、一般的・抽象的審査によって類似と判断されるとその後願者は登録を受けることができないので、結果として第三者の商標選択の幅を狭めており、先願者が後願者の商標登録に同意を与えている場合には特に問題である。

(2)不使用商標について
商標法は、商標の使用により業務上化体した信用の保護を目的としている
(1条)。したがって、法上、商標は使用されることを前提としている(3条1項柱書)。このことは、商標の市場における役割からすれば当然のことであるが、商標法は、出願の際に商標の使用をしていなくてもその登録を認める登録主義を採用しているため(18条)、先願先登録に係るもののなかには実際には使用されていないものも数多く存在している。そして、現行の職権審査制度のもとでは、上に述べたように、実際の取引の実情は十分には考慮されないので、全く使用のされていない先願に基づいて後願が拒絶されるという状況が存在している。このような事態に対して、出願人としては不使用取消審判を請求して拒絶理由を回避することも可能である。しかし実際には、拒絶理由をそのまま受け入れることも多く、また出願前の調査段階においては出願を躊躇するという事態が生じている。

また、商品の包括指定を認める現行制度のもとでは、包括指定されている一部の商品(役務)について取消しても、なお同一の類似群コードが付されている残りの商品(役務)によって拒絶されるという状況も多い。

そこで、このような不使用登録商標が先願に数多く存在する現状のもとでは、実際には出所混同のおそれがないにもかかわらず後願が拒絶されるということになり、第三者の商標選択の幅を狭めているのではないか、という点が問題となる。

3.改善策について
このような法4条1項11号の問題への対処方法として挙げられるのが、商標制度小委員会でも議論されている、コンセント制度、異議待ち審査制度、不使用商標対策である。
以下では、この3つの制度について簡単に検討したいと思う。

(1)コンセント制度について
コンセント制度とは、先行登録商標の類似範囲内にある後願がなされた場合に、その先行登録商標の権利者が後願の商標登録に同意しているときは、審査官が類似であると判断しても後願の登録が認められる制度であり、以前からその導入について議論がなされてきたものである。

コンセント制度を採用すれば、現行の職権審査制度を維持しながらも、法4条1項11号の審査に関して、実際の取引の実情に合った当事者の意向を反映させる要素を加えることができるというメリットがある。すなわち、現実の市場において、類似するものではないという当事者間の合意があれば、願書の記載に基づく一般的・抽象的類否判断において類似するとされる場合でも後願に係る出願人は登録をうけることができ、また、結果として第三者の商標選択の幅も広げることができるのである。

この点、類似範囲の重複登録が増加すると、出所混同を生ずるおそれがあるという指摘もある。しかし、当事者間においては、出所の混同を生じないから後願の登録について合意に至ったと考えることができるし、また、権利化後においては類似商標の分離移転・同一商標の分割移転が、所定の担保措置のもと認められている(24条の2、24条の4等)。そして、権利化後の移転に関して特に問題が生じていないことからすると、同様の担保措置のもとにコンセント制度の採用を認めても特に問題はないと思われる。

(2) 異議待ち審査制度について
異議待ち審査制度とは、既に登録されている商標と同一又は類似であること、他人の業務にかかる商品・役務と混同を生ずるおそれがあるものであること等のいわゆる相対的拒絶理由について現行制度のような職権での審査は行わず、先行商標権者等の異議申立てがあったときに、当事者の主張・立証に基づいてはじめて審査するという制度である。本制度と後述の不使用の抗弁はCTM制度においてすでに採用されているものである。

本制度によると、当事者の主張・立証に基づいて類否判断がおこなわれるという点で、具体的な混同の有無という観点から審査がなされることとなり、実際の取引の実情も反映される。また、不使用の抗弁制度をあわせて採用すると、不使用に係る先願登録商標によって後願が拒絶されるということもなくなる。それにより実際の使用態様にあわせた出願が増えることも期待できる。

もっとも、異議待ち審査制度の採用にあたっては、法4条1項11号という観点からみても、検討すべき大きな問題点が幾つかある。
まず、類似範囲の後願に対する先願商標権者の監視負担の増大である。異議待ち審査制度になると先行の商標権者等が商標権管理の一環として後願商標について調査しなければならなくなる。かといって、先行商標の調査が不要になるというわけでもない。この点、異議待ち審査制度の採用によって、出願料や登録料のコストの軽減が図られるという意見もある。さらには、調査・異議申立てコストについても、異議申立てによって出願が登録されなかった場合には、申立て費用を出願人側が負担するといった策が、衡平の観点からも必要である。
また、類似範囲内における重複登録の増加も問題である。これにより出所混同の可能性が大きくなるからである。もっとも、これには先願の類似範囲内にある後願について異議申立てがなされずに重複登録になる場合と、登録後の使用により類似と判断されるに至るような場合の二つのパターンがある。このうち前者については無効審判で対処できる。ただし、除斥期間は不要である。後者については現行法上の規定を欠く。したがって、商標の持つ動的態様を登録後においても反映させるために、法4条1項11号又は15号を後発的無効理由にするといった規定が必要と思われる。

なお、審査において個別・具体的に類否判断を行うとすれば、商品(役務)の包括指定は改められることになろう。

(3) 不使用商標対策について
商標小委員会において不使用商標対策として議論されている手段として、不使用の抗弁制度がある。この不使用の抗弁とは、異議申立て、無効審判等において、先願商標権者に対して不使用の主張がなされた場合に、先願商標権者のほうで登録商標の使用が証明できない場合には、申立て等が却下されるという制度のことである。

本制度によれば、不使用に係る先願登録商標によって後願が拒絶されるということもなくなり、第三者の商標選択の幅が広くなるという利点がある。

しかしながら、本制度と、現行の不使用取消審判のみでは、不使用登録商標の数自体を減少させることはできない。そうすると、類似範囲の重複登録の数が増加するということになる。そして、後願登録後に不使用に係る先願の商標権者が使用を開始すると、出所混同のおそれが生じるということになり、その使用が不正目的の場合には特に問題である。

この点、異議待ち審査制度と併用すれば、商標権者は監視負担の軽減を図るため、不使用商標の減少が期待できるという意見もある。
しかしながら、そもそも不使用商標対策は、使用予定のない出願数を減少させるか、不使用登録商標の数を減少させなければその根本的解決にはならない。前者については、登録主義という法制度を採用する限り、その制限にも限界があるので、後者の方法によって解決を図るほかない。したがって、不使用の抗弁によって単に申立て等が却下されるという制度だけではなく、より強力な制度が必要であると思われる。具体的には、一定期間経過後の使用証明などが考えられる。
なお、不使用取消審判の活用ということを考えると、第三者の商標選択の幅を広げるという当該審判の趣旨からしても、商品(役務)の包括指定は改められるべきであろう。

4.おわりに
以上のように、現行商標制度にも問題点は存在するが、改善策として掲げられている新制度にもまだ検討すべき事項が多く残っている。
異議待ち審査制度に関して言えば、権利の安定性・実効性を維持するという点から、職権審査によって具体的混同の有無を判断できる制度が理想的ではある。しかし、審査官がすべての審査資料を収集するのは困難であるし、審査期間の長期化等にも配慮する必要がある。はじめに職権審査をして、中間処理において当事者間に資料を提出させるという方法も考えられるが、当事者を引用商標権者に限定する必要性も乏しい。
そうすると、企業等による市場経済活動の一要素であるという商標の実態をできるだけ重視するという観点から、法4条1項11号などの相対的拒絶理由については当事者間に委ねる方向でもよいのではないかとも思われる。ただし、先願商標権者の監視負担及び権利の安定性・実効性に関わる問題については十分注意を払う必要がある。

以上

<参考文献>
・産業構造審議会知的財産政策部会第3回商標制度小委員会配付資料
・産業構造審議会知的財産政策部会第5回商標制度小委員会配付資料
・同議事録

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