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知的財産立国と大学

2004年1月14日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 福井 清

2002年2月、小泉首相が施政方針演説において「研究活動や創造活動の成果を、知的財産として、戦略的に保護・活用し、我が国産業の国際競争力を強化することを国家の目標とします。」と宣言して以来、「知的財産立国」への取り組みが本格化しました。

このような状況において、大学における知的財産を取り巻く環境も次第に変化しつつあります。本稿では、このような変化をもたらしている「知的財産立国」政策の流れをみてみたいと思います。

我が国に先駆け、米国では知的財産政策によって産業競争力を強化した実績があります。この米国における知的財産政策においても、大学における知的財産を取り巻く環境に変化がもたらされました。

米国では、1970年代に大学における研究成果の移転事業を行うためのTLO(Technology Licensing Office)が出現し始めました。特に有名なものとして、スタンフォード大学のOTL(スタンフォード大学ではOTL(Office of Technology Licensing)と呼ばれています)があります。スタンフォード大学のOTLは、技術移転の父と呼ばれるライマースによって設立され、コーエン教授とボイヤー教授の遺伝子組み換え特許のライセンス化を行って、莫大な収入をスタンフォード大学にもたらしたことで知られています。

また、米国では、1980年のバイ・ドール法(Patent and Trademark Act Amendments of 1980)の制定により、米国政府の資金によって大学が研究開発を行った場合について、特許権が政府のみに帰属していた従来の制度から、大学側や研究者に特許権を帰属させることが認められるようになりました。これにより、大学技術の移転が促進され、ベンチャー創業も盛んになりました。

我が国においては、上記2002年2月の施政方針演説に先駆けて、1998年8月に大学等技術移転促進法(TLO法)が施行され、TLOが設置され始めました。また、1999年10月には、日本版バイ・ドール条項が盛り込まれた産業活力再生特別措置法が施行され、政府資金による委託研究開発から派生した特許権等を民間企業等に帰属させることができるようになりました。
しかしながら、これらの政策によっても必ずしも十分な効果は得られておらず、さらなる知的財産政策の活性化が求められていました。

上記2002年2月の施政方針演説の後、同年3月に首相官邸に知的財産戦略会議が設置され、同年7月には「知的財産立国」の実現に向けた基本的な考えを示した知的財産戦略大綱が決定されました。この知的財産戦略大綱では、「知的創造サイクル」の確立が重要視されています。「知的創造サイクル」とは、知的創造活動の成果たる発明等を「創造」し、その成果を知的財産権として適切に「保護」し、その知的財産権を産業界において有効に「活用」し、これにより得られた収益によって新たな知的創造活動を起こしていく、という好循環のことをいいます。

また、知的財産戦略大綱を受け、2003年3月には、知的財産戦略を進めていく上での基本理念を立法化した知的財産基本法が施行されるとともに、「知的創造サイクル」の確立に向けた試作を推進するための知的財産戦略本部が内閣に設置されました。
そして、知的財産戦略本部により、知的財産戦略大綱の示す基本的な考えや、知的財産基本法の示す基本理念をより具体化した「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」(知的財産推進計画)が2003年7月に決定されました。

知的財産推進計画は、「知的創造サイクル」の各ステップに対応して「創造分野」、「保護分野」、「活用分野」に章分けされ、このうちの「創造分野」において、「大学等における知的財産の創造を推進する」と題して多くの事項が盛り込まれています。ここに含まれている事項の一部を以下に紹介します(知的財産推進計画より引用)。

大学、公的研究機関において知的財産の創造を重視した研究開発を推進する
基礎研究段階からその研究成果の応用、技術移転に至るまで一貫して実施する研究開発制度や、国として戦略的に獲得すべき重要な知的財産の取得に向けた研究開発を更に充実させる。

知的財産に関する総合的な評価指標を用いる
知的財産に関する指標を評価、研究費配分その他の研究資源の配分に活用するに際しては、特許等の(出願)件数を参考としつつも、ライセンス実績(件数、収入)、特許等における特許・論文の被引用度といった質的な側面、さらには共同研究実績、起業実績、コンサルティング件数といった点を重視した「総合的な評価指標」を用いる。

社会貢献が研究者の責務であることを明確化し、業績評価において知的財産を重視する
社会貢献が研究者の責務の一つであることを、大学・公的研究機関において明確に位置付ける。さらに、知的財産の創造が想定される分野においては、研究者の業績評価として研究論文等と並んで知的財産を重視する。

公募型研究費の申請項目及び事後評価項目に追加する
科学研究費補助金その他の公募型研究費について、公募申請に際して申請者の知的財産に関する状況を申請させることにより、研究課題の採択における評価の参考とするとともに、成果報告においても知的財産に関する状況を報告させる。

研究者個人への実施料を還元するルールを明確化する
大学・公的研究機関においては、研究者の発明に関する権利を承継し、実施料収入を得た場合に、発明者個人に還元すべき金額の支払ルールを明確化する。

知的財産への取組状況を研究資源の配分に反映させる
知的財産の創造を奨励する一環として、研究資源の配分に当たり、その一部に、知的財産に関する取組状況を反映させる仕組みを設ける。

大学の知的財産本部を整備する
各大学の創意工夫に基づく知的財産本部の機能の一層の充実・強化を図るとともに、各大学の状況に応じた多様な形態の知的財産管理体制が実現される支援を行う。

大学の知的財産活動への学生の参加を奨励する
大学の知的財産に関する活動に、企業、大学等の関係者に加えて学生の参加を奨励する。

機関一元管理を原則とする
大学、公的研究機関において特許等の効率的な活用が図られるよう、大学等の機関一元管理を原則とした体制を整備する。その際、大学で特許出願等を行わない発明等に関する権利の研究者への還元を可能とするルールを整備する。

大学発ベンチャーを促進する
大学等において大学等の発明等を基にした起業の促進を図るため、大学等の機関一元管理を原則とする場合にあっても、利益相反に配慮しつつ、起業しようとする研究者の求めに応じて権利の移転や実施権の設定を可能とする柔軟なルールを整備する。

このような政策を踏まえて、各省庁では具体的な事業が進められています。
例えば、文部科学省では「大学知的財産本部整備事業」が進められています。この事業は、知的財産の機関帰属への移行を踏まえ、大学等における知的財産の創出・取得・管理・活用を戦略的に実施する大学知的財産本部の整備を支援するものです。現在、選定された30余りの大学等において、大学知的財産本部の整備が進められています。
また、特許庁では「大学における知的財産管理体制構築支援事業」が行われています。この事業では、大学が知的財産管理部門を構築することを手助けするための知的財産管理アドバイザーを大学に派遣し、大学のスタッフの方々に知的財産管理実務を享受して体制整備を進めています。

以上で紹介しました大学における知的財産を取り巻く環境の変化は、まだ始まって間もないものですが、比較的早い動きを呈しているように思われます。このような変化に多くの研究者の方々が素早く対応され、「知的財産立国」による日本の再建が実現することを期待します。

《参考文献一覧》
 ・「知的財産戦略大綱」
   http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki/kettei/020703taikou.html#2-2
 ・「知的財産基本法」
   http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki/hourei/021204kihon.html
 ・「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」(知的財産推進計画)
   http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/030708f.html
 ・内閣官房 知的財産戦略推進事務局「知財立国への道」(株式会社ぎょうせい、平成15年12月1日)

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