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特許法と準拠法 〜判例の紹介を通して〜

2004年12月28日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 上羽 嘉樹

1.はじめに
「国際私法」という言葉には馴染みがない人が多いのではないか。私もつい最近まで、聞いたことがある程度で、言葉の意味までは知らなかった。

我が国には、国家と私人との法律関係を規定した憲法、私人間の法律関係を規律した民法、人の行為を規制または規律する刑法など、多数の法律が存在する。大きな概念でくくってしまえば、「国際私法」もこれらの法律と同じであるが、実質的には、大きな相違点を有している。

「国際私法」とは、簡単に言えば、渉外的法律関係(2以上の国が関連した法律関係)において、どこの国の法律を適用するかを決定する法律である。そして、決定された法律のことを「準拠法」という。但し、六法では「国際私法」という文言は使われておらず、「法例」という文言が使われている。以下に、国際私法の世界のイメージを掴んで頂くために、1つの具体例を挙げる。

例えば、ドイツ人の甲がアメリカ人の乙と結婚して、韓国に在住していた。そして、甲の仕事の都合で、たまたま二人は、日本に短期滞在をしていた。日本滞在中に、甲は、フランス人の丙と不貞行為をした。このため、乙は、日本の裁判所に離婚請求訴訟を提起したとする。

この場合、離婚できるかどうかを決定する法律は、ドイツ法、アメリカ法、韓国法、フランス法、日本法のいずれであろうか。単純に決めることができないことを理解して頂けると思う。このような、どこの国の法律を適用するのかを決定する役割を「国際私法」は有している。逆から言えば、「国際私法」の役割は、例えばドイツ法とか、アメリカ法とかを指定するだけで、具体的な法律効果には原則として関与しない。

2.特許法との関係
グローバルな時代である昨今において、上記事例のように、どこの国の特許法を適用するか、などという問題が生じるようになってきた。具体的に、判例(最高裁判所の裁判例;最高裁平成14年9月26日第一小法廷判決)を用いて説明する。なお、事例の複雑さを避けるため、判例は適宜簡略化する。従って、多少正確さを欠く点をご了承願いたい。

(1)事案

日本在住の日本人Xは、アメリカにおいて、本件発明につき、米国特許権を有していたが、我が国では本件発明と同一の発明につき、特許権を有していなかった。これに対して日本法人たるY会社は、A製品(本件発明の技術的範囲に属するとする)を我が国において製造して、アメリカに輸出して米国法人Zに販売させていた。

そこでXは、Yに対して、(ⅰ)A製品をアメリカに輸出する目的で我が国で製造すること、我が国で製造したA製品をアメリカへ輸出すること等の差止め(ⅱ)Yが我が国において占有するA製品の廃棄(ⅲ)不法行為による損害賠償請求、を求めて日本の裁判所に訴えを提起した。

(2)判旨と私見

(2−1)(ⅰ)・(ⅱ)について

本件差止請求および本件廃棄請求は、私人の財産権に基づく請求であり、本件両当事者が住所又は本店所在地を我が国とする日本人及び日本法人であり、我が国における行為に関する請求ではあるが、米国特許法により付与された権利に基づく請求である・・・から、準拠法を決定する必要があるとされた。

ここからは、多少複雑な話になるが、準拠法を決定する際のプロセスとして、まず、法律関係の性質を決定しなければならない。おおざっぱに言えば、何についての問題であるかということを決定しなければならない。尚、法例の欄には、法律関係の性質ごとに、法律効果等が記載されている。

この点、上記請求は、・・・不法行為に基づく請求とは趣旨も性質も異にするものであり、米国特許権の独占排他的効力に基づくものである。・・・従って、法律関係の性質は、「特許権の効力」の問題と決定すべきであるとされている。ところが、法例には、「特許権の効力についての準拠法」の規定は存在しない。

そこで、当該特許権と最も密接な関係がある当該特許権が登録された国(最密接関係国と称することもある)の法律によると解するのが相当である。すなわち、準拠法は、米国法であると決定された。一般には、国際私法の役割は、ここまであり、あとは米国(特許)法を適用して上記の請求(ⅰ)(ⅱ)を認めるかどうか判断することになる。

しかしながら、例えば、米国特許法によって、差止請求(廃棄請求)が認められるとされている場合には、日本において上記差止請求(廃棄請求)が認められることになってしまう。これは、各国の特許権は、当該国の領域においてのみ効力を有する、といういわゆる属地主義の原則に反する。このため、結論において妥当でない。

ところが、法例には、公序良俗に反する場合には適用しない(法例33条)という規定が存在しており、結果的には、この規定を適用して米国特許法の適用を退けた。すなわち、上記(ⅰ)(ⅱ)の請求は、認められなかった。

(2−2)(ⅲ)について

まず、本件損害賠償請求は、本件両当事者が住所又は本店所在地を我が国とする日本人及び日本法人であり、我が国における行為に関する請求であるが、被侵害利益が米国特許権であるという点において、渉外的要素を含む法律関係・・・であって準拠法を決定する必要があると、された。

特許権侵害を理由とする損害賠償請求については、特許権固有の問題ではなく、財産権の侵害に関する民事上の救済の一環に他ならないから、法律関係の性質は、「不法行為の問題」とされた。

不法行為の準拠法は、法例11条に規定されている。法例11条1項には、「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、その原因たる事実の発生したる地(本件では米国)の法律による」とされている一方、法例11条2項には、「外国において発生した事実が日本の法律によれば不法ならざるときはこれを適用せず」とされている。すなわち、米国の法律において違法とされても、我が国の法律において違法でない場合には、違法とはされない。このように、米国法だけでなく、我が国の法律も累積的に適用される。

そこで、我が国の法律を見ると、米国特許法第271条(b)項のような、特許権の効力を自国の領域外における・・・行為に及ぼすことを可能とする規定を持たないため・・・特許権の効力は及ばない登録国の領域外において特許権侵害を積極的に誘導する行為について違法ということができない。

従って、不法行為の成立要件を具備しないとされた。すなわち、上記(ⅲ)の請求は、認められなかった。

3.まとめ
判例を挙げて説明したため、複雑な説明になったが、多少なりとも「国際私法」のイメージは掴んで頂けたのではないだろうか。上記判例は、結論においては妥当であるが、理由付けについては、まだまだ争いがあるようである。事実、第1審以降、理由付けは、目まぐるしく変化したようである。今後も準拠法と特許法との関係の動向を見ていきたいと思う。

4.参考文献
別冊ジュリスト 特許判例百選 No.170 2004/2 有斐閣

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