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中国の商標についてのいくつかの考察

2005年7月22日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
文責 李 麗莎

2001年のWTO加盟にともなって、中国では知的財産関係の法整備及び改正が大幅行われていた。中華人民共和国商標法(以下「商標法」を言う)は特許法等の改正に後れて2001年12月に改正された。そして、商標法実施細則及び「著名商標の認定と保護に関する規定」(*1)が改正商標法に従って改正・公布された。本稿では、中国の商標実務について以下幾つかのポイントを掴み、考察してみたいと思う。

1 類似性判断
中国における商標の登録要件には、「登録を出願する商標は、顕著な特徴を有し、容易に識別できるものでなければならず、且つ先に取得した他人の合法的な権利と抵触するものであってはならない」(商標法第9条)がある(*2)。これは、一般消費者の注意を引く顕著な特徴を有し、かつ自己商品・サービスと同一或いは類似商品・サービスとを区別することができる商標に関して、登録を認めることができるという商標の登録要件に関する規定である。一方、長期間の使用及び大量の広告宣伝により事実上一般消費者が識別できる商標は、顕著な特徴がなくても登録を認めることができるとしている(*3)。
商標の同一性又は類似性について、一般消費者の注意力を判断の基準として、2つの商標の文字、読み方、意味あるいは図形の構成及び色彩、並びに各要素を組合せた全体の構成比較と、要部比較とを結合した観察方法を行い、総合的に判断するという考えが取られている。商品の出所に対する視覚的な認知を通じて一般消費者が混同を生じれば2つの商標は類似商標と判断される。
ただし、通常の商標に関する「一般消費者」については、法律上規定がないが、著名商標については、「関係公衆」の概念を導入し、その範囲は「使用商標を表示するある種の商品又は役務と関係を有する消費者、前記商品を生産し又は役務を提供するその他の経営者、及びその販売ルールに関わる販売者と関係者」(*4)を含むと定められている。上述の「関係公衆」の概念は著名商標のみならず、通用の商標の認定にも使用されうると考えられる。
実務的には、混同の可能性が絶対にないとはいえない場合であっても、相対的に少ないという場合に、「個々の消費者」ではなく、「一般消費者の認知習慣」に基づくより客観的な基準を導入して行った人民法院の判断がある(*5)。

2 著名商標 (*6)
1996年に国家工商行政管理局が「著名商標の認定及び管理に関する暫行規定」を公布し、パリ条約の加盟国として著名商標に対する保護義務を履行し始めた。また2001年改正の商標法(*7)では、著名商標に通常の商標よりも強力な保護が与えられている。
中国未登録の外国著名商標について、同一・類似商品について無断で商標登録を行う、又は無断で使用する行為を禁止している(同法第13条第1項)。さらに、中国で登録された著名商標について、使用される商品の分類に関わらず、他人の商標登録や使用を禁止している(同法第2項)。ただし、このような著名商標としての保護を享受するには、関連部門より著名商標としての認定を受ける必要がある。
しかし、現在、著名商標の認定にはケースバイケースによる認定方法が取られている。そしてその認定は、上述の商標法第13条の違反行為に対し、行政・司法によるエンフォースメントを行う際に初めて考慮されるものである。
具体的な手続きについては、2003年に国家工商行政管理総局より公布された「著名商標認定及び保護規定」に規定されている。同規定第4条では、登録商標の権利者が、他人の商標の登録、又は他人の商標権侵害行為が商標法第13条の規定に違反すると認める場合は、関連部門に異議を申し立てる際にその商標の知名度を証明する関連資料を提出することができると定められている。当該又は関連資料を受理した部門は、それが商標法第13条の規定に違反する状況であるか否かを審理した上で、全ての資料を商標局に送付する(同規定第6条)、商標局は当該資料を受領した日より6ヶ月以内に当該商標が著名商標か否かを認定する(同規定第8条)。なお、商標の審査においては、商標法第14条に掲げられた下記の要素が全面的に考慮される。
① 関係公衆の当該商標に対する認知度
② 当該商標の継続的な使用期間
③ 当該商標の宣伝活に使った全ての継続期間、程度及び地理的範囲
④ 当該商標の著名商標としての保護の記録
⑤ 当該商標が著名であることのその他の要素
著名商標として認められなかった場合、その認定の日より一年以内は、当事者は同一の商標について同一の事実・理由に基づく著名商標認定の請求を行うことはできない(同規定第9条)。
言うまでもなく、著名商標として認められれば、損害賠償の請求の際にも、権利者により有利な算定が行われる可能性が高い(*8)。実務上、賠償額算定の困難な事件においても、侵害を受けた商標が著名商標であることを証明できれば、侵害者が被害者の商業上の名声等を利用して利益を得ようとするいわゆる「フリーライド」の意図も容易に証明し得ることとなる。これによって人民法院の賠償算定において有利に働くのが当然である。

3 「商品装飾」 (*9)
権利侵害に該当する行為として、①同一又は類似商品について侵害商標を使用する行為(同法同条第1項)、②侵害商品の販売行為(同法同条第2項)、③他人の商標標識の偽造又無断製造及びそれらの販売行為(同法同条第3項)、④他人の登録商標の取り替え及び取り替えた商標にかかる商品の販売行為(同法同条第4項)、⑤他人の商標権にその他の損害を与える行為(同法同条第5項)が掲げられている。
さらに、商標法実施条例第50条は、同一又は類似の商品に、他人の登録商標と同一又は類似の標章を商品名称または商品装飾(*10)として使用し、かつ公衆に誤認を生じさせる場合を、商標法第38条第5項にいう商標権侵害行為として規定している。同旨の規定が中国不正競争防止法にも規定されている(*11)。
それに対して、日本の商標法には、商品装飾についての定めはない。ただし、「日本不正競争法第2条第1項第1号に規定されている混同惹起行為がこれに近似する規定であるといえる。つまり、登録商標を用いた「商品等表示」に該当し、かつ誤認混同を生じさせる場合は、間接的に商標権侵害に該当する」(*12)というのである。
日本商標法は、商標の出所表示機能に焦点を当てた「商標としての使用」、「商標的使用」という考え方がある。すなわち、登録商標権者以外の者が形式的には商標権侵害に該当する行為をなしたとしても、「指定商品、役務を識別する機能をまったく発揮していないことが明らかであれば、これを商標権の侵害とする必要はない。物理的には類似商品に類似商標が付されていても、それがおよそ出所識別機能を果たしていないことが明らかである場合に、商標として使用されていないということを理由に商標権侵害が否定される」(*13)。
しかし、この点については、中国商標法では、日本で言われる「商標としての使用」に該当しなくても、消費者に誤認を生じさせる範囲内という条件つきで、商標権侵害が肯定される。「商標としての使用ではない」という抗弁が認められない(*14)。

終わりに
以上、中国の商標法について若干の考察を試みた。今後とも、商標権における類似判断及び保護範囲等を、実務上及び法理上の視点から研究していきたいと思う。

【注釈】
*1 中国工商行政管理総局令第5号
*2 これ以外、商標の登録要件としては、「商標登録出願は既に存在している他人の権利を侵害してはならず、又は不正な方法で他人より先に他人が既に使用している且つ一定の著名性を持つ商標の登録出願をしてはならない」(同第31条)、「複数の商標登録出願人が、同一又は類似の商品に、同一または類似の商標を登録出願した場合は、最先商標出願に対し初歩審査を行い、且つ公告する。同日に出願された場合は、先使用の商標に対し初歩審査を行い、且つ公告する。その他の者の出願を拒絶し、公告しないものとする」(同第29条)などの規定がある。
*3 黄赤東、梁書文「商標法及配套規定新訳新解」 1999年 中国民主法制出版社 124頁
*4 中国国家工商行政管理総局により公布された「著名商標の認定及び保護に関する規定」に定められている。
*5 資生堂の商標行政訴訟の判決 中国北京市第一中級人民法院行政判決 2003−中行初字第664号人民法院は、個々の消費者の認知習慣が類似性の認定基準になるべきではないという判断で、商標局評審委員会の復審決定を、事実認定及び法律適用に誤りがあるとし、取り消した行政判決である。
*6 中国では、「馳名商標」という
*7 改正前著名商標に対する保護についての規定がなかった。
*8 中国の人民法院が「商標の知名度、権利侵害者の故意損失の程度、権利侵害期間の長短及び地理的範囲等の要素を十分考慮して」算出した事件として、著名商標“報喜鳥”の商標権侵害事件がある。
*9 中国では「包装と表面装飾」という
*10 中国商標法上、「商品装飾」という概念については定義されていないが、不正競争防止法において、保護の対象とされる周知商品の「装飾」の定義については、「商品を識別させ、美化させるために、商品又は包装に付加される文字、デザイン、色彩及びそれらの組合せをいう」とされており、商標法上の「商品装飾」の定義についても、実務的にはほぼ同様の理解がされていると考える。
*11 中華人民共和国反不正競争法第5条第2号には、不正競争行為の一様態として、「著名な商品に特有な名称、包装、表面装飾を許諾を得ずに使用し、又は著名な商品に類似する名称、包装、表面装飾を使用し、他人の著名な商品と混同させ購買者にその商品を誤認を生じさせる」行為が規定されている。
*12 岩井 智子 「中国初の外国企業に対する商標権侵害事件」AIPPI (2002) Vol.47 No.3 193頁
*13 田村善之 著 「商標法概説」141−142頁
*14 他人の商標の商品装飾への利用が商標権侵害と認定された事案として、日本A社が、カメラに2000年龍年を示すために、「千*(衣へんに喜)龍」の標章を装飾した行為について、商品装飾としての使用であり、かつ関連する公衆に誤認混同を生じさせるもので、商標権侵害行為に該当するとした北京高級人民法院の判決がある

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