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特許法の分割出願制度および補正制度の改正について

2006年4月5日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 中尾 守男

1.はじめに
今般、特許法について、分割出願制度・補正制度、日本語翻訳文の提出期限などが見直され、平成18年3月7日に閣議決定後、平成18年通常国会に提出されました。
このうち、日本語翻訳文の提出期限の延長とは、最初に外国語で日本に出願した場合に追って提出すべき日本語翻訳文の提出期限を、現行の2ヶ月以内から、1年2ヶ月以内に延長するというものであり、実務上混乱を招くことは無いと思われます。
しかし、分割出願制度・補正制度の見直しについては、特に、現行補正で認められているシフト補正(詳細は後述)が禁止されることになることなどは、「知らなかった」では済まされない、今後の実務にも大きく影響する制度改正と言えます。
もちろん、国会で成立することが前提ではあります。しかし、過去の例を見ても閣議決定されたものはほぼ施行に至っております。そこで、分割出願制度・補正制度がどのように改正されようとしているのか、以下に概略を説明します。

2.分割出願制度の見直し
2-1.改正の趣旨
分割出願制度とは、出願の内容に複数の発明が含まれる場合に、それぞれの発明について特許を取得するため、複数の発明の中から一部の発明を切り離して、もとの出願日を出願日として、新たな出願をする制度をいいます。
今回の見直しの背景として、次のような指摘がされています。つまり、現在、革新的な発明であればあるほど、出願人が、特許請求の範囲に保護を受けようとする発明を多面的・網羅的に記載することは困難であり、特許請求の範囲が実効的な物でないまま特許査定されるか、あるいは発明内容を的確に表現することができないまま拒絶査定を受けてしまうことがあります。このような場合に、現行制度では、出願を分割してより的確な特許請求の範囲での権利化を目指す途が閉ざされてしまい、実効性のある多面的・網羅的な権利取得が困難となっていたという指摘です。
そこで、特許査定後や拒絶査定後の一定期間においても分割を可能とすべきとの議論が生じ、特許庁産業構造審議会での審議の結果、特許査定後及び拒絶査定後の一定期間、出願の分割を可能とするよう制度の見直しを図ったものです。

2-2.改正の内容
現行制度では、「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる期間内に限り」分割出願が認められています(特許法第44条)。
そして、今般閣議決定された新たな特許法第44条第1項は次の通りです。

 第四十四条 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる期間内にするとき。
二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。

 つまり、現行の分割出願可能期間に加え、特許査定の謄本送達後、あるいは拒絶査定の謄本送達後30日以内は分割出願が可能とするものです。

2-3.出願人のメリット
今回の改正の趣旨でもある多面的・網羅的な権利取得の容易化(換言すれば、多面的・網羅的な権利取得の機会の増大)は出願人にとってメリットとなるでしょう。
一方、現行制度では、拒絶査定後に分割出願を望む場合は、その機会を得るためだけに、拒絶査定不服審判を請求するということが行われていました。わざわざ審判を請求せずとも分割出願が可能となる点は、手続の無駄を省く観点から一つのメリットと言えます。
なお、欧州および米国で特許許可通知後、特許が発行されるまでの期間も出願の分割が認められており、さらに米国においては、拒絶査定に相当する通知後にも継続出願(我が国の分割出願に相当)を行うことが可能となっています。特許査定後及び拒絶査定後の分割可能化は、制度の国際調和の観点という背景も大きかったと思われます。

2-4.出願人の注意点
一方、分割出願制度の濫用を防ぐため、分割出願の補正に関して一定の制限が加わることを注意する必要があります。
もとの出願について最後の拒絶理由通知がされていた場合、分割出願についても同一の内容の拒絶理由通知がされた場合は、現行の最後の拒絶理由通知と同様の対応がされることとなります。つまり、分割出願に対して、もとの出願と同一の拒絶理由通知がされた場合、応答期間内にした補正が要件を満たしていなかった場合は、補正却下後拒絶査定を受けることとなります。

3.補正制度の見直しについて
3-1.改正の趣旨
現行の補正制度においては、審査の対象となる発明を大きく変更する補正(以下、「シフト補正」と言う。)が許容されています。しかし、欧米の制度は、拒絶理由通知後に発明の内容を大幅に変更することを認めておらず、日本の現行制度と調和していないという指摘がされております。
また、シフト補正が許容されている現行制度においては、最初の拒絶理由通知後にシフト補正をすることにより、実質的に2件分の審査を受けることが可能となっており、最初から取得しようとする権利の的を絞っている出願人と、そうでない出願人との間で、出願の取扱いに不公平が生じています。
そこで、制度の国際調和および各出願間の公平性という観点からシフト補正を制限すべきとの議論が起こり、上記産業構造審議会で検討の結果、見直されることになりました。
ここでシフト補正とは主に以下の2ケースに分類することができます。以下、発明A、発明Bの間に単一性は成立しないものとします。

・ケース1
(補正前) 特許請求の範囲 A / 明細書 A・B
↓ 拒絶理由通知(進歩性違反など)
(補正後) 特許請求の範囲 B / 明細書 A・B

・ケース2
(補正前) 特許請求の範囲 A・B / 明細書 A・B
↓ 拒絶理由通知(単一性違反)
(補正後) 特許請求の範囲 B / 明細書 A・B
このとき、単一性違反のため、Aのみ特許要件が審査された後、拒絶理由が通知されます。よってBのみを残す補正はシフト補正の範疇となります。(これをシフト補正と言うかどうかは議論があります。産業構造審議会 知的財産政策部会 第19回特許制度小委員会の議事録をご参照願います。少なくとも特許庁側はこのケースをシフト補正と呼んでいます)

3-2.改正の内容
現行の特許法第17条の2に、第4項として以下の条文が入ることになります。(現行4項、5項は、それぞれ5項、6項にスライドする)

 第十七条の二
4 前項に規定するもののほか、第一項各号に掲げる場合において特許請求の範囲について補正をするときは、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。

 つまり、補正前後の特許請求の範囲においても、単一性の要件が課されることとなります。
したがって、上記ケース1では発明A、発明Bの間に単一性がないため、このような補正は認められなくなります。
また、ケース2でも既に審査された発明Aと、補正後に特許請求の範囲に残された発明Bは単一性を満たさないため、このような補正は認められないこととなります。
なお、ケース2の(補正前)の特許請求の範囲において、発明Bを削除し、発明Aを残す補正は認められることとなります。条文中、単一性の判断基準が「特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明」とされていることからも分かります。
なお、ケース2のように発明Bを残したい場合は分割出願をすることとなります。

3-3.改正のメリット
今回の補正制限の改正において、出願人に対する直接のメリットは無いように思います。しかし、間接的なメリットとして出願人間の公平が挙げられます。すなわち、シフト補正が認められると、結果的に2つの発明について、1の出願にかかる審査請求料で審査されていることになります。これはあらかじめ単一性を検討し明細書に記載する発明を絞って出願した出願人との間に不公平が生じる結果となります。今回の改正は、この不公平を解消するための改正と言えます。

3-4.その他
今回の補正制限は、無効理由とはしないこととなっており、また、産業構造審議会 知的財産政策部会においても、必要以上に厳格に適用すべきではないとの指摘がされています。よって、具体的な運用については、今後策定される審査基準において明確にされるものと考えられます。

4.最後に
本コラムでは、これからされるであろう分割出願制度・補正制度の改正について概要を述べてみました。しかし、特許庁 産業構造審議会では、引き続き、産業財産権制度の見直しが議論されています。例えば、今回の分割出願制度の改正では見送られましたが、分割出願に対する新規事項の追加を拒絶理由とするという議論もされています。
これらの議論は、産業財産権制度全体、ひいては世界中の産業財産権制度全体を考慮したものである以上、全ての見直し、改正がユーザーフレンドリーなものではないことは当然です。だからこそ、より早く今後の制度動向を察知し、より早く対策を練ることが必要と言えます。今後も産業財産権制度をめぐる動きを注視していかなければなりません。

5.参考文献
特許庁産業構造審議会知的財産政策部会「特許制度の在り方について」(平成18年2月)

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