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寄託制度について

2008年1月
                        特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
                               文責:弁理士 長谷川 和哉

1.はじめに
 バイオの分野の特許に関する特有の制度の一つとして「寄託制度」がある。寄託制度については特許法施行規則第27条の2および同 第27条の3に規定されている。かかる寄託制度は、特許を受けようとする発明に係る微生物を第三者が入手することを出願人が担保することによって、当該発明の実施可能要件(特許法 第36条第4項)を充足するための制度である。また寄託制度は発明の公開代償に対して一定期間の独占権の付与するという特許法の制度趣旨そのものに関連する制度であるともいえる。

(2)米国制度との比較
 日本の現行制度を米国における特許権存続期間の延長制度と比較すると以下の通りである。

 特許法施行規則 第27条の2第1項「微生物に係る発明について特許出願をしようとする者は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその微生物を容易に入手することができる場合を除き、その微生物の寄託について特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(以下この条において「条約」という。)第二条(viii)の国際寄託当局の公布する条約に基づく規則第七規則の受託証のうち最新のものの写し又は特許庁長官の指定する期間にその微生物を寄託したことを証明する書面を願書に添付しなければならない。」

 特許法施行規則 第27条の3第1項「前条の規定により寄託された微生物に係る発明を試験または研究のために実施しようとする者は、次に掲げる場合は、その微生物の試料の分譲を受けることができる。〔以下省略〕」

近年、遺伝子工学の発展に伴い、特許を受けようとする発明を塩基配列やアミノ酸配列で特定することができるようになったり、有用物質を遺伝子組み換え技術によって生産することができるようになったりしたため、寄託制度の必要性が薄れてきたともいわれている1)。しかし、遺伝子組み換え技術に対して消費者から慎重論が唱えられている食品業界等においては、遺伝子組み換えではなく、交配や突然変異などの古典的な育種技術を用いて有用形質を有する微生物を取得しているのが現状である。そしてその微生物が市場を流通する場合もある。よって、古典的な育種技術によって取得された微生物について特許を取得したいというニーズは依然高いと考えられる。
 そこで本稿では、バイオ分野の特許において今なお有用である寄託制度について解説したい。

2.わが国の寄託手続
 わが国における寄託手続の概略は下記のとおりである。なお、寄託手続の詳細については、「http://www.nbrc.nite.go.jp/npmd/how-to_depo.html」または「http://unit.aist.go.jp/ipod/ci/procedures/deposit/new_deposit/new_deposit.html」を参照されたい。なお、The Budapest Treaty: Code of Practice 1998(ブタペスト条約の実行指針)の記載事項に鑑み、平成16年4月1日より、国内寄託手続が変更された2)。

(1)特許庁長官の指定する寄託機関及びブダペスト条約上の国際寄託当局(以下「寄託機関*1」という)に対して、所定の寄託申請書、微生物条件記録書および寄託微生物を提出する。
(2)寄託申請書・微生物条件記録書の内容に不備がなく、寄託微生物が規定の形態・本数であると確認された時点で「受領書」が交付される。
(3)生存確認試験の結果、寄託しようとする微生物の生存が確認され次第、「受託証」が交付される。

 当業者が容易に入手することができない微生物に係る発明について特許出願をする場合、明細書等において特許を受けようとする微生物を受託書に記載された受託番号で特定するとともに、上記の寄託手続きによって交付された「受託書の写し」を特許出願の願書に添付して特許出願すればよい。なお、微生物を明細書において十分に説明するとともに、受領書に記載された①受領機関名、②受領日、③受領番号を明細書に記載することによって、「受領書」が発行された時点で特許出願することは可能である。
 平成16年3月31日までは寄託申請書および寄託微生物の受領後、直ちに受託証が発行されていたが、平成16年4月1日から生存確認試験後に受託証が発行されることになった2)。

 *1寄託機関:(独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター(IPOD:Internatinal Patent Organism Depositary、http://unit.aist.go.jp/ipod/ci/index.html)、および(独)製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD:NITE Patent Microorganisms Depositary、http://www.nbrc.nite.go.jp/npmd/)。

3.わが国における寄託手続に関する主な留意事項
(1)わが国では寄託手続は特許出願前に行っておく必要がある(特許法施行規則第27条の2第1項)。これに対して米国では特許発行料金支払いまでに寄託手続きをすればよいことになっている(37CFR1.809(b)(1))。欧州ではわが国と同じく特許出願前に寄託手続を行っておく必要がある(EPC Rule 28(1)(a))。
(2)受領書が発行された時点で特許出願可能であるが、受託書が発行され次第、受託書の写しを特許庁へ提出する必要がある(特許法施行規則第27条の2第2項)。
(3)受領書をもって特許出願を行った場合、寄託微生物の生存確認試験の結果が否定的であった場合には、受領書に記載された受領日に寄託されなかったものとして扱われる2)。この場合、寄託微生物を寄託機関に再度提出することになる(この時、新たな受領書が発行される)。再提出後に得られた受託証に記載された微生物は、出願当初の明細書に記載された受領書の受領番号で特定された微生物とは異なるため、当該受託書の写しを提出してもその効力は認められない。また優先権主張出願を行って、特許を受けようとする微生物を受託番号によって特定し、受託証の写しを特許庁に対して提出したとしても、受託番号によって特定された微生物に関して優先権の利益を享受することはできない。よって、時間的な制約もあるが、できるだけ受託証受領後に特許出願すべきである。

4.おわりに
 地下資源に乏しいわが国においては、物質を生産する技術(物質生産技術)がわが国の産業の礎となってきた。このような資源事情から、わが国では、みそ・醤油・日本酒をはじめとする微生物を用いた発酵技術が物質生産技術の1つとして古くから注目され発展してきた。現在では微生物を用いた発酵技術が食品産業のみならず、医薬品をはじめとする有用物質の生産手段として利用されており、わが国の産業の基幹技術の一つとなっている。石油資源の枯渇が危惧されている昨今においては、石油資源に替わるバイオ燃料の生産が重要であり、それに奏効する発酵技術が今後益々注目されるはずである。長い歴史に裏付けられたわが国の発酵技術は、諸外国に対して優位性があることは言うまでも無く、まさに、わが国にとっては「地下資源」にかわる「知的資源」と言える。この「知的資源」を今後さらに発展させるためには「知的資源」を守り、「知的資源」を有効活用するための法制度が重要となる。かかる「知的資源」を守る法制度として特許法がある。そして、発酵技術に係る特許発明を支えるのは微生物である。本稿では微生物に係る発明に関する特許権取得に必要な寄託制度について触れた。今後も寄託制度が国内外問わず有効に活用され、わが国の「知的資源」である発酵技術、ひいてはわが国の産業が益々発展することに期待したい。
以上
<参考文献>
1)竹田 稔 監修「特許審査・審判の法理と課題」 社団法人発明協会
2)特許庁ホームページ「国内寄託手続きの変更について」
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/kitaku_kokunai.htm>

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