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動作ステップの主体を英文請求項の中にどう盛り込むか?

平成20年2月1日
                        特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
                               文責:籔田仁一、福岡佳恵、松川哲広

 日本のコンピュータ・ソフトウェア関連発明の審査基準では、請求項に係る発明が特許法上の「発明」であるためには、「ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」必要があります。
 そのため、一連の動作ステップよりなる方法発明の請求項を、各動作ステップの主体を明示せずに記載した場合には、各動作ステップを人間が行うとも、コンピュータが行うとも解釈できるために、請求項に係る発明を明確に把握することができないとして、拒絶理由が指摘されます。そこで、日本出願の際には一般に、方法発明の請求項を、動作ステップを実行する主体を明示して記載しています。
 ここで、IT以外の分野では、方法発明については、日本出願、米国出願とも、各ステップを実行する主体を明示せずに特定可能なケースが多いです。そのため、「○○○するステップと、△△△するステップとを含む方法。」という日本語を、「A method comprising the steps of ○○○ing; and △△△ing」と訳すのが普通です。しかし、IT分野では、上記のような事情から、各ステップを実行する主体を記載する必要があり、他の分野と同様には対応しきれないケースがあります。
 本稿では、日本出願の明細書に記載された「動作ステップの主体」を、英文に翻訳する際に、そのまま主体として訳すのか、他の形式をとるのかについて、例を見ながら考えてみます。

 米国の登録特許公報を見る限りでは、「動作ステップの主体」を、
1主語として表現することで明示している記載
と、
2主語以外の形式で表現することで暗示している記載
とが見受けられます。

① 明示している例

〔例1-1〕米国特許6,584,450
1. A method for renting items to customers, the method comprising the computer-implemented steps of:
receiving one or more item selection criteria that indicates one or more items that a customer desires to rent;
providing to the customer up to a specified number of the one or more items indicated by the one or more item selection criteria; and
in response to receiving any of the items provided to the customer, providing to the customer one or more other items indicated by the one or more item selection criteria, wherein a total current number of items provided to the customer does not exceed the specified number.
...

この例では、transitional phrase 中の steps の直前に、全てのステップを実行する主体(“computer” )を記載しています。

 では、ステップごとに主体が交替しながら処理が進む場合はどうか?

〔例1-2〕米国特許6,031,836
1. A method of accessing telephony features ..., comprising the steps of:
(1) the client requesting ...;
(2) the server responding ...;
(3) the server further responding to ...;
in response to the request to connect to the provider, the client effecting ...;
(4) in response to the request from the server to provide the individual telephony feature, the provider providing ...

この例では、ステップ(1)と(3)のthe client、(2)のthe server、(4)のthe provider のように、、各ステップの主体を動詞の直前に記載しています。
こうすれば、例えばシステムの請求項で、ステップごとに主体が替わっても簡潔明瞭に表現できます。

② 暗示している例

〔例2-1〕米国特許5,960,4111. A method of placing an order for an item comprising:
(a) under control of a client system,
(1) displaying information identifying the item; and
(2) in response to only a single action being performed, sending a request to order the item along with an identifier of a purchaser of the item to a server system;
(b) under control of a single-action ordering component of the server system,
(3) receiving the request;
(4) retrieving additional information previously stored for the purchaser identified by the identifier in the received request; and
(5) generating an order to purchase the requested item for the purchaser identified by the identifier in the received request using the retrieved additional information; and
(6) fulfilling the generated order to complete purchase of the item
whereby the item is ordered without using a shopping cart ordering model.

この例では、下線部(a)の文言で、それに続くステップ(1)と(2)の主体を記載しています。また、下線部(b)の文言で、それに続くステップ(3)から(6)の主体を記載しています。
主語という文法形式は取っていないものの、“under control of ・・・”の文言から各ステップの動作主体が明確に読み取れます。

〔例2-2〕米国特許6,041,308
1. A method of using a computer to compensate buyers who make conditional purchase offers, comprising:
(1) receiving, (a) using a computer, a conditional purchase offer from a buyer for a product, said conditional purchase offer containing at least one buyer-defined condition and a variable condition;
(2) processing said conditional purchase offer to determine if said conditional purchase offer is accepted by a seller; and
(3) compensating said buyer if said conditional purchase offer is not accepted by a seller.

この例では、下線部(a)の文言で、ステップ(1)の主体を記載しています。一方、ステップ(2)と(3)の主体は形式上明らかではありませんが、請求項の出だしに”A method of using a computer”と記載してあり、内容から考えても、全てのステップをコンピーュタが行うと解釈できる記載となっています。
各ステップの主体が異なる場合は(a)に倣って、ステップごとにusing … device という文言を挿入すればより明瞭な記載になります。

〔例2-1〕と〔例2-2〕では、文法的には動詞の主語という形式をとらず、別の表現方法でいわば暗示していると言えます。

 最後に、同じ発明の請求項の記載を日米でを対比してみます。

〔例3〕日本:特開2002-358289、米国:公開2002/0135582
1.プロセッサ装置内で、前記プロセッサ装置によって受信されるデータを処理するために一時的に専用パイプラインを設定する方法であって、…
1. A method for establishing a temporary, dedicated pipeline in a processor apparatus for processing data being received by said processor apparatus, …said method comprising:

(1) 前記制御ユニットが、前記複数の処理ユニットの第1処理ユニットに対して、第1プログラムを実行して、前記プロセッサで受信された前記データを処理して付加データを生成するように命令するステップと、
(1) designating from said control unit a first processing unit of said plurality of processing units to run a first program for processing said data being received by said processor to produce further data;

(2) 前記制御ユニットが、前記第1処理ユニットに対して、前記第1処理ユニットによって前記データが受信されていない期間は、予約状態に入るように指示するステップと、
(2) instructing from said control unit said first processing unit to enter a reserved state during periods in which said data are not being received by said first processing unit;

(3) 前記制御ユニットが、前記複数の処理ユニットの第2処理ユニットに対して、第2プログラムを実行して、前記付加データを受信して前記付加データに追加処理を実行するように命令するステップと、
(3) designating from said control unit a second processing unit of said plurality of processing units to run a second program for receiving said further data and for performing additional processing upon said further data;

(4) 前記制御ユニットが、前記第2処理ユニットに対して、前記第2処理ユニットによって前記付加データが受信されていない期間は、予約状態に入るように指示するステップと、を有することを特徴とする方法。
(4) instructing from said control unit said second processing unit to enter a reserved state during periods in which said further data are not being received by said second processing unit.

 この例では、日米どちらも動作主体(制御手段ユニット/control unit)を各ステップに記載していますが、それ以外の主体は記載されていません。
日米の請求項の際立った違いは、動作主体の記載形式にあります。すなわち、日本語では明示的であるのに対し、英語では暗示的です。

まとめ
 以上、5つの具体例を、言語形式の面から見て主体であると判断しやすいものから順にあげてみました。
 〔例1-1〕のように、「動作ステップの主体」を動詞の主語として記載するのが最も単純でしかも理解しやすい形式だと思われますが、意外なことに、米国公報にこの形式で書かれた請求項を目にすることはあまりありません。暗示的表現を用いることがむしろ普通のようです。

 翻って考えてみると、「動作ステップの主体」が装置であると特定した請求項が、米国公報を始め、一般に英語の特許文献には比較的少ないように思われます。よって、「動作ステップの主体」を記載する必要があるときには、動詞の主語として明示するのではなく、うまく言い換えて暗示する、例えば、
XX装置が...する
というステップを
XX装置で...する
と読み替えて英訳したほうが好ましいと思われます。

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