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ライセンスについて

2011年1月14日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
山下 広大

1.はじめに

平成20年特許法改正により、ライセンスに関する規定が大幅に改正された事は記憶に新しいかと思います。

同改正では、仮専用実施権、仮通常実施権及びその登録制度を設け、さらに、通常実施権等の登録制度について、特許原簿への登録を通じて一般に開示される登録事項のうち、企業等において秘匿ニーズの強い事項(対価の額や通常実施権者の氏名・名称等)の開示制限が設けられました。

本稿では、企業等の経営戦略の中核にもなり得るライセンスについて、その性格等を考察してみようと思います。

余談ですが、我が国に存在する特許権に係る通常実施権の総数は未登録のものを含め約10万件と推計され、そのうち特許庁に登録されている件数は1,315件であり、登録率は約1%と推計されております(1)。つまり、登録制度利用者が少なすぎることが顕著に数字に現れています。その背景にはやはり登録事項の開示により、競業他社に研究動向や商品開発動向を推測させる可能性があることが挙げられると思います。

従って、登録制度の開示制限を改正事項に加えたことは、企業等におけるライセンス活動の活発化及びライセンシー保護のニーズに応えるものといえるでしょう。



2.ライセンスの類型と内容について

ライセンスとは、一般的には、ライセンサー(実施権許諾者:特許権者又は特許を受ける権利を有する者)がライセンシー(実施権受諾者)に対して、対価の支払いを条件として実施権を設定・許諾することをいう。

ライセンサーは対価を受け取ることや、研究開発費の一部をライセンス料から回収できる点でメリットがある。

一方、ライセンシーは、莫大な研究開発費用を投資することなく、特許発明を実施でき、ライセンス契約の範囲内においては、差止請求等の権利を行使される事もないというメリットがある。


ライセンス(実施権)の類型を列挙すると、おおよそ次の通りである。

  • ①専用実施権
  • ②通常実施権(許諾・法定・裁定)
  • ③仮専用実施権・仮通常実施権(特許出願段階における実施権)
  • ④再実施権

その他、ノウハウライセンス等も一種のライセンスに挙げる事ができると思われる。


(1) 専用実施権とは、特許法77条第2項に規定する通り、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利をいい、専用実施権者は前記範囲内において、特許発明を実施する権利を専有する。

従って、たとえ特許発明を独占的に実施することができる特許権者であっても、専用実施権の設定がされている範囲内で、特許発明を実施した場合は、専用実施権の侵害となる。

専用実施権を侵害された場合、専用実施権者は差止請求や損害賠償請求の請求ができる。

ここで、注目すべき点は、特許権者は専用実施権を設定している場合、その設定行為で定めた範囲と同じ範囲内では特許発明の実施が制限されるにも関わらず、特許権が侵害された場合は、特許権者自らが侵害者に対して、差止請求・損害賠償請求の権利を行使する事が出来る点である。

これは最高裁判例で説示された通り、

①特許法100条1項の文言上、専用実施権を設定した特許権者による差止請求権の行使が制限されると解すべき根拠がないこと、

②実質的な側面から、専用実施権の設定契約において専用実施権者の売上に基づいて実施料の額を定めるものとされているような場合には、特許権者には、実施料収入の確保という観点から、特許権の侵害を除去すべき現実的な利益があること、

③専用実施権が何らかの理由により消滅し、特許権者が自ら特許発明を実施しようとする際に不利益を被る可能性があること

等を考慮し、差止請求権を失わないものとして解すべきとの判決がなされた(2)。

なお、これはあくまでも私見であるが、実際問題として、専用実施権者の売上に基づいて実施料の額を定めるという事があるのであろうか?もちろん、売上高が多い場合にライセンス料を増額するという事は考えられるが、その逆はどうだろうか?仮に私が特許権者であれば、実施権設定契約の際に、地域的制限や実施期間、ライセンス料を予め定めた上で契約を締結するだろうし、対価についても一括で支払ってもらうだろう。それを考慮すれば、特許権者としては、既に十分な利益を得ているので、差止請求まで認める必要はなさそうにも思える。従って、最高裁判例が示した上記②の理由にはあまり賛同できないところである。


(2) 通常実施権とは、特許法78条第2項に規定する通り、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利をいう。ここで注意すべき点は、専用実施権とは異なり、業として特許発明の実施をする権利を「有する」と規定されている点である(特許法78条第2項)。

すなわち、通常実施権は排他性のない債権的権利である。したがって、重複する範囲について複数人に通常実施権を許諾することができる。また、通常実施権の範囲内で特許権者も業として特許発明を実施することができる。この点が物権的性格を有する専用実施権と大きく異なるところである。

ここで、注目すべき点は、通常実施権は、排他性のない権利であるため、通常実施権の侵害に基づく差止請求権(100条第1項)を行使することはできない。しかし、独占的通常実施権(3)については、事実上は市場を独占できる利益があるので、民法709条の「法律上保護される利益」に該当し、損害賠償請求権(民法709条)を行使することができると解されている。

そもそも、特許法等の法律は民法の特別規定という位置づけであるから、特許法に規定が無い以上は原則に立ち返り、民法が考慮されるのは自然の流れである。

思うに、独占的通常実施権について、「独占的」であることを登録する事はできないところ(4)、どの様にして「独占的」であることを第三者に対して証明するのであろうか。実際、独占的通常実施権者から損害賠償請求権を行使された場合、被告は、原告に対して、損害賠償請求権は無いと主張する事が考えられるが、原告は反論としてどの様な書類を提示するのであろうか。ただでさえ、如何様にも解釈されるライセンスの内容について、被告の反論を論破する程の証拠が提示できるのであろうか。

ライセンス契約締結時にはこのような点にも留意して、契約書を作成する事が望ましいであろう。

(3) 仮専用実施権と仮通常実施権は、特許出願段階における実施権であり、その法的性質はそれぞれ、対象特許権の設定登録を停止条件とする専用実施権/不作為請求権を中核として構成されるものである。

これらの権利は、独占排他性を有さない「特許を受ける権利」に基づいて取得すべき特許権について設定/許諾される権利であることから、特許権成立後に発明の実施を可能とし、特許権者からの権利行使を受けないという確約の下に事業の準備を行うことを担保するものとなる。

この新制度により、特許出願段階における特許権として成立していない特許を受ける権利が貴重な財産権として活用できるようになった。

制度利用者層は、ベンチャー企業、個人発明家や学術機関の研究者が多いと考えられる。

ここで、いくつかの疑問点がある。例えば、特許権成立前のライセンス契約により、ライセンス料を支払っている場合において、特許権が成立しなかった場合は、既に払ったライセンス料の返還請求は出来るのか。もちろん、契約書にその旨が記載されていれば特段の問題も生じないであろうが、仮に契約書にその旨が記載されていなければ、返還請求をすることはできないのであろうか。

また、出願人の責めに帰す事情により、出願が却下されてしまった場合や取下げとなってしまった場合にはどうなのであろうか。

いずれにしても、ライセンス契約時にはあらゆる事象を念頭に契約を締結する事が肝要であるといえる。


(4) 再実施権(サブライセンス)とは、ライセンシーが第三者にライセンスを許諾する権利をいう。

特許法に規定する再実施権は、専用実施権者(ライセンシー)が特許権者(ライセンサー)の承諾を得て他人に通常実施権(再実施権)を許諾する場合である。(特許法第77条第4項)。

しかし、契約自由の原則に基づく場合、再実施権は、これに限られるものではなく、通常実施権者は、前記原則に基づいて、特許権者との特約によりサブライセンスを行うことができるとされている。これは、実務上は特許権者の承諾を得ている以上、これを制限すべき理由は無いと考えられているからである(5)。

ただし、この場合の実施権は、特許原簿の登録事項に該当しないため、その事実関係を登録することはできない。

そのため、契約自由の原則に基づき、実施権を取得した者(サブライセンシー)が、後から特許権を譲り受けた者に対抗するためには、特許権者から直接通常実施権を取得する必要がある。


<サブライセンスの主な類型>


  • ①通常実施権者がサブライセンサーとして子会社や第三者(サブライセンシー)との間でサブライセンス契約を締結するという場合

  • ②権利譲渡に伴い従前のライセンシーがサブライセンシーとなる場合

これはライセンス契約の対象となっている特許権が第三者に譲渡される際に、新権利者が従前の特許権者に対して通常実施権を許諾する場合があるが、さらに、従前の特許権者からライセンスを受けていた従前のライセンシーは、新権利者からみると、従前の特許権者を介したサブライセンシーとなる場合である


  • ③第三者のためにする契約によるライセンスの場合

これは、大企業をライセンシーとするライセンス契約において、契約当事者ではないライセンシー の子会社に対しても通常実施権を許諾する場合があり、ライセンス契約において、子会社を個別に特定せず、「直接又は間接に議決権付き株式の過半数を保有する法人」などと定義し、特許権者と親会社のライセンス契約が民法上の「第三者のためにする契約(民法537条第1項)」に該当することにより、子会社に通常実施権が発生するものとして考える場合である(6)


何れにしても、サブライセンスについては、特許法上規定はなく、今後の法改正により、サブライセンスの登録について規定されるかもしれない点で注目すべきライセンス類型である。



3.終わりに

上述のライセンス類型はほんの一部であり、細分化していくと、更に多くの類型が存在するだろう。

そういう意味で、多種多様なライセンス制度が更に利用しやすく整備され、かつ法的保護がより明確になれば、制度利用者も増加するであろうし、我が国産業の発展に多大な影響を及ぼす可能性もある。

私個人としても、知的財産権を取り扱う者として、今後のライセンス制度の動向に注目していきたい。




<注記>

  • (1)特許庁平成18年「知的財産活動調査報告書」特許庁調べ
  • (2)生体高分子事件(最高裁〔二小〕平成17年6月17日判決
  • (3)当事者間の契約により、その者のみ実施を許諾し、他の者には実施を許諾しないという特約を付した通常実施権をいう
  • (4)登録事項は、特許登録令に定められているところ、独占的であることの登録項目は存在しない
  • (5)中山信弘著「注解特許法上巻」(青林書院、第三版、2000年)
  • (6)最判昭和37.6.26民集16巻

<参照>

  • 「平成20年特許法等の一部改正産業財産権法の解説」 発行:社団法人発明協会
  • 「知財管理vol.59 №6 2009」
  • 「産業財産権の活用:http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/pdf/h19_syosinsya/01_4_2.pdf
  • 「特許権に係るサブライセンスの保護の在り方について」特許庁資料

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