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上記トレードマークの背景地図は、1991年当時の特許登録件数を陸地の大きさと形状に擬態化して、地図状に表現したものです。

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冒認出願、共同出願違反によって登録された特許に対する移転登録請求について

2012年12月10日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
文責:淵岡栄一郎

1.特許法第74条について

平成23年法改正によって、特許が冒認出願又は共同出願違反の無効理由に該当する場合、当該特許発明について特許を受ける権利を有する者は、経済産業省令に定めるところにより、その特許権者に対し、特許権の移転を請求することができるようになりました(特許法第74条第1項)。また、特許権の移転請求に基づく特許権の移転の登録があったときは、その特許は、初めから当該移転登録を受けた者に帰属していたとみなされます(同条第2項)。

冒認出願・共同出願違反に対する特許権の移転が認められるようになった背景には、複数の大学や企業等が共同して技術開発することが一般化していること、ドイツ等の主要諸外国では、冒認出願等に対して真の権利者に対する救済制度が設けられていることがあります。

2.平成23年度法改正前について

平成23年度法改正前では、真の特許を受ける権利を有する者が、冒認出願等に対して権利取得のために採り得る手段として、特許登録前のケースでは出願人の名義変更という手段がありました。しかし、真の特許を受ける権利を有する者が、特許登録前に冒認出願に気づき、自己の権利の正当性を証明し、このような対応をするのは実際には困難であったといえます。

特許登録後のケースでは、特許権の移転登録が認められた判例があります。有名な判例、生ごみ処理装置事件(最高裁平成13年6月12日第三小法廷判決)です。本件では、原告(真の権利者)は自ら特許出願していたこと、被告(共同出願違反者)の特許権はもともと原告が出願したものであること、特許権の移転請求が認められないとすると原告は特許権者になれないこと等を理由に特許権の移転請求が認められました。対して、もう1件有名な判例にブラジャー事件(東京地裁平成14年7月17日判決)があります。こちらも共同出願違反して登録された特許権の移転請求に関するものでしたが、自ら特許出願していない原告(共同発明者)への特許権の移転登録請求は認められませんでした。

では、冒認出願又は共同出願された真の権利者は、特許出願していなければ特許権の移転請求が認められないとすべきなのでしょうか?

特許を受ける権利の持分を認められなかったブラジャー事件では、共同出願違反によってなされた特許出願に対して原告が特許を受ける権利の確認訴訟に集中していた最中に、裁判所に告知せず特許権設定登録を得た被告の行為を認容するのは著しく衡平にかけるということ、および最終的に発生した特許権の特許発明が、真の権利者の発明と同一であれば真の権利者の特許を受ける権利との連続性を肯定すべきであるということ、について指摘がなされています1。また、真の権利者が特許出願をしていなくても移転請求が認められたケースもあるようです2。どのように判断されても、先願主義を採る我が国特許法において、冒認出願に対して真の特許を受ける権利を有する者を保護するためには、いろいろと悩ましい問題があるといえます。


3.特許法74条第1項の移転請求が認められるには

では、平成23年法改正によって新設された特許法74条においては、真の権利者が特許出願しているか否かについてどう判断されるですが、特許を受ける権利を有する者が特許出願していることを要するとは条文中に規定されていません。また、経済産業省令には、「特許法第74条第1項の規定による特許権の移転請求は、自己が有すると認める特許を受ける権利の持分に応じてするものとする。」と規定されています。つまり、真の権利者が特許権の移転請求をする場合、自らが自己の発明について特許出願している必要はないといえます。

では、特許を受ける権利の持分を立証すべきなのは、真の権利者と冒認出願した者のいずれでしょうか?

特許無効審判においては、無効審判を請求された特許権者側に自己の特許権の正当性を立証する責任があるとされた判例があります(審決取消請求事件 平成17年(行ケ)第10193号)。しかし、それは特許無効審判での話です。上述の生ごみ処理装置事件、ブラジャー事件共に原告は、自己の特許を受ける権利について確認訴訟を提起していました。条文及び省令上に規定されてはいませんが、特許権の移転請求についての自己の持分の立証責任があると考えるのが妥当でしょう。


4. 最後に

平成23年法改正では、冒認出願、共同出願違反に対する対応がいろいろと明確にされています。しかし、どんなに法が整備されても結局は特許を受ける権利を有する方々の準備が重要であるといえます。自己が特許を受ける権利を有することを明確にするためにも、共同発明については特許出願についてどうするか、しっかりと契約しておくことが重要であるといえます。



参考文献
1 特許判例百選[第三版] 別冊ジュリスト170号 2004年50~51項
2 知的財産法政策学研究 Vol.10 2006年87~88項
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