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方法特許侵害における挙証を巡って -中国の司法運用の紹介-

2015年03月20日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
文責:中国支援室室長 孫 欧



製造/加工方法特許の有効な保護に直接に影響する拡大保護および特別な挙証責任は、TRIPS協定(Agreement on Trade-related Aspects of Intellectual Property Rights)や欧州特許条約(European Patent Convention; EPC)などに基づく重要な規則です。そして欧米諸国のこれらの経験を学び司法実践を進めてきた中国では、拡大保護および特別な挙証責任を反映させたのが中国特許法第11条1項および第61条1項(関連規定として、最高人民法院による民事訴訟証拠に関する若干の規定(2001)の第4条1項1号)です。

  • ※特許法第11条1項※
     発明及び実用新案の特許権が付与された後、本法に別途規定がある場合を除き、いかなる部門又は個人も、特許権者の許諾を受けずにその特許を実施してはならない。即ち生産経営を目的として、その特許製品について製造、使用、販売の許諾、販売、輸入を行ってはならず、その特許方法を使用することできず、当該特許方法により直接獲得した製品について使用、販売の許諾、販売、輸入を行ってはならない。

  • ※特許法第61条1項※
     特許権利侵害を巡る紛争が新製品の製造方法の発明特許に関連する場合、同様の製品を製造する部門又は個人は、その製品の製造方法が特許の方法と違うことを証明する証拠を提出しなければならない。

  • ※最高人民法院による民事訴訟証拠に関する若干の規定の第4条1項1号※
     新製品に係る製造方法特許に起因する特許侵害訴訟において、同様の製品を製造する部門又は個人が、その製品の製造方法が特許の方法とは異なることを挙証する責任を負う。

特許法第11条1項にいう「特許方法により直接獲得した製品」および特許法第61条1項に言う「新製品」と「同様の製品」について、中国ではこの数年にわたって多岐的に解釈され大いに論議されてきましたが、2009年、これらを含む法律解釈や法律運用のばらつきを統一させる試みとして、中国最高人民法院裁判委員会により「特許権侵害紛争案件に対する最高人民法院審理における法律応用の若干の問題の解釈」が公表されました。

では、今までは解釈がバラつき、大いに論議されてきた「特許方法により直接獲得した製品」、「新製品」および「同様の製品」は、方法特許侵害紛争を巡る法律適用にいかなる影響を与え、いかなる役割を果たすものでしょうか。そこで、中国の方法特許侵害紛争における挙証責任分配の実態を中心に、事例を挙げると共にその司法運用の一部現状を見てみたいと思います。

なお、一般にいう方法発明は、大別して(1)物に対し直接に物理/化学的に作用する製造/加工方法と、(2)測定、検査、採掘、輸送、通信や演算等のような作業/操作方法と、(3)いわゆる用途発明である使用方法との3タイプありますが、本稿では(1)のみに着目することとします。





挙証責任の分配

製造/加工方法特許(以下は単に「方法特許」)の真価はその体現物である製品にあり、方法特許を巡る侵害紛争は必ず製品が関わってくると言っても過言ではありません。

中国では、製品が関わった方法特許侵害紛争において、初歩の侵害認定手法としては、まず実際に生産された被疑製品が、特許方法により直接に獲得した原始製品と同様であるか否か、および「新製品」に該当するか否かの同定が行われます。この同定は、侵害判断、乃至後述の挙証責任分配(挙証責任逆適用)において極めて重要なステップです。

その重要性について、以下は「新製品」および「同様の製品」を挙証責任倒置(以下は「挙証責任逆適用」)の適用要件とした張喜田事件および自動追尾空間ロケーティング方法事件を例に挙げると共に、侵害判断や挙証責任分配に関する中国の司法運用の現状を少し紹介していきます。





<張喜田提審案>

特許権者の張氏(原告)が、自特許(降血圧薬の製造方法)を侵害したとして、石薬集団中奇製薬技術有限公司(以下は「中奇公司」)ら三社を相手にとった訴訟です(張喜田事件)。一審では原告の主張が認められたため、中奇公司らが高裁に上訴しましたが、二審も原判決を維持しました。2009年、最高人民法院(最高裁)が本件に対して最終裁定を出し、被告製品が「新製品」であると認定した一方、原告が提供した証拠では、被告製品の製造過程における中間産物が、特許方法(請求項1)により直接獲得した製品と同様であるという証明に至らないと結論付けました。この張喜田事件の最高裁認定は、方法特許侵害事件に関わる「挙証責任逆適用」の要件等について狭く解釈し、中国各界に衝撃を走らせました。

張喜田事件の最高裁認定:特許方法により直接に製造した製品が新製品であると証明できること、および、侵害被疑者が製造した製品が、特許方法により直接製造した製品と同様であることが、特許法第61条1項の適用要件である。被疑方法により直接に獲得した製品を中間産物としてさらに加工した所謂「後続製品」は、「新製品」であるか否かの判断対象としない。





<自動追尾空間ロケーティング方法事件>

西安宏源視訊設備有限責任公司(原告)が、自特許の疑似放送室システムにおける瞬時初期化ロケーティング方法を侵害したとして、北京華視中集数字系統科技有限公司を相手にとった訴訟(2010二中民初字第19736号)です。一審では、被疑システムが新製品に該当しないとして原告の主張が認められず、控訴審(2011高民終字第1126号)では、高裁は原判決を維持し原告の上訴を棄却しました。

一審認定:方法特許の侵害紛争における挙証責任逆適用は、新製品を構成することが前提である。挙証責任逆適用は、証明責任の特別な分配形式ではあるが、挙証不能のリスクを全て原告から被告へ転移させてはならない。特許権者は「新製品」について法的証明責任を負っている。


この両事件は複数の争点がありましたが、最も重要な法的意義をもたらしたとされたのが次の認定事項です。

  • (a)「新製品」および「同様の製品」は侵害判断の基準に入る。
  • (b)特許方法により直接製造した製品をさらに加工して得た製品(後続製品)は「新製品」の判断対象外である。
  • (c)「新製品」および「同様の製品」に該当することが挙証責任逆適用(詳細は後述する)の要件である。

つまり、「新製品」および「同様の製品」の両方を構成すれば(c)を充足することになるということです。また、新製品/同様の製品は、侵害判断要件であると同時に挙証責任逆適用要件でもあります。

(a)は相応の合理性や妥当性があると考えられ、問題視されるほどのものではないでしょうが、新製品の判断範囲から「後続製品」を除外した最高裁判断(b)では、例えば「後続製品」のような使用侵害被疑の場合、特許法第11条1項および第69条二号の適用において特許権者の過度な挙証責任が生じる虞があります。そのため、(b)の合理性や妥当性に一石を投じて、多くの裁判官や有識者に再考してもらう必要があります。

上記のように挙証責任逆適用要件ともされている「新製品」に関し、その具体的な挙証責任としては大別して次の2つだと考えられています。





挙証責任①- 新製品そのものに対する挙証責任

同様の製品であるか否か、鑑定機関または技術専門家により解析されれば大概判明できることが多いでしょうが、新製品であるかの立証はそう簡単ではありません。これに伴い、誰が立証するかの争点も生じます。

この争点について、自動追尾空間ロケーティング方法事件においては「挙証責任逆適用」が新製品自体に適用されるものではなく、その立証責任が原告側にあるという次の判断がなされています。

挙証責任逆適用は、証明責任の特別な分配形式ではあるが、挙証不能のリスクを全て原告から被告へ転移させてはならない。「新製品」について法的な証明責任は特許権者が負うべき。

ここで、「挙証責任逆適用」とは、すなわち、新製品に係る製造方法の特許侵害訴訟において、被疑生産方法が特許方法とは異なることの証明責任が、同製品を製造した者側(被疑者側)にあるということです(「最高人民法院による民事訴訟証拠に関する若干の規定」第4条1項1号)。

換言すれば、特許権者が「侵害された仮定事実」を立証する原則から、侵害被疑者が「侵害していない仮定事実」を立証する原則へと転移させる特別な規定です。ただし、注意すべきは、同第4条1項1号の規定には「新製品」自体に対する挙証責任の言及がありません。つまり、挙証責任①に必ずしも「逆適用」が認められるとは限りません。なお、自動追尾空間ロケーティング方法事件では、挙証責任①の「逆適用」が認められなかった原告による新製品の同定ができなかったのが、敗訴の直接要因の一つであったと考えられます。

新製品に該当するか否かの挙証責任は、明確な中国の法律や規定がない現状では、自動追尾空間ロケーティング方法事件の高裁判決のように、特許権者側にあるとされる可能性が高いと考えられます。これも裁判官が述べた「挙証不能のリスクを全て原告から被告へ転移させてはならない」一文が指す公平性を考慮すれば妥当でしょう。

「新製品」に対する挙証責任を負うリスクが高い以上、特許権者は自方法特許が侵害される(された)可能性を把握できた時点で、可能な範囲で「新製品」について立証可能な情報/証拠を予め収集しておいたほうが好ましいと思われます。





挙証責任②- 新製品の生産方法に対する挙証責任

方法特許の侵害事件では、実際に侵害被疑者の生産地や工場等に、事前に、且つ合法的に乗り込み、生産方法等を確認するのがほぼ不可能であり、被告の生産および設計方法等に関する確実な証拠の提示が極めて困難です。したがって、特に方法特許侵害訴訟の場合、新製品の生産方法の挙証責任が侵害主張側にあるとされる従来原則では、原告(特許権者)に不利な点が増えます。

となれば、「新製品」の場合と同様に、挙証責任②を誰が負うかの問題が生じます。この問題を解消させ、特許権者の利益をより広く保障すべく、上記挙証責任逆適用の規則が設けられているわけですが、張喜田事件および自動追尾空間ロケーティング方法事件では、(c)の不充足が原因で「挙証責任逆適用」が直接運用される場面がなく、挙証責任②が原告側(特許権者)にあると判断されました。とはいえ、最高裁および高裁も示唆したように、(c)要件を充足することで、特許権者が「侵害された仮定事実」を立証する責任から、侵害被疑者が「侵害していない仮定事実」を立証する責任(すなわち挙証責任②)へと転移できるため、特許権者に不利な要素の軽減が大いに期待できます。

ところで、挙証責任逆適用の前提である(c)要件に対し異議を唱える一部の有識者も存在します。これらの有識者によれば、「新製品」および「同様の製品」という要件を充足すれば、原告(特許権者)が挙証責任②を負う必要がなくなるのは一種のパラドックスであり、実際のところ、例えば「特許権侵害紛争案件に対する最高人民法院審理における法律応用の若干の問題の解釈」2009(以下、特許侵害紛争における司法解釈)の第17条に言う「特許出願日前の国内外での公知」ではないことの証明は、新製品に対する消極的事実等の証明であり、消極的事実や発生していない事はそもそも立証しようがないため、挙証責任②の逆適用による利が原告(特許権者)に帰すことができず、特許法第61条1項は形骸化しているというものです。


  • ※特許侵害紛争における司法解釈の第17条※
    製品および製品の製造方法が特許出願日前に国内外で公知された場合、人民法院は、当該製品が特許法第61条1項に規定の新製品に該当しないと認定しなければならない。

有識者の意見も一理がありますが、それをすべて受け入れますと、挙証責任逆適用原則自体を大幅に見直さなければならず、少なくとも現段階での中国司法運用にとっては現実的なものではありません。しかし合理性原則に基づく有識者の意見も無視できませんので、原告の挙証責任の軽減が目的である「挙証責任逆適用」を実際に運用する際、裁判所としては公正、公平、合理性を基に、新製品の証明基準や尺度を適度に緩め、証拠の形式に過度に拘らず、特許権者に対しより強い保障を与える姿勢が必要です。





証拠保全と秘密保護

(1)証拠保全

「現有の証拠では、被告の技術的方案が本案特許の請求項1の保護範囲内に含まれるということを証明できない。本案特許の明細書の背景技術の記載を参酌しても、被告の技術的方案に基づく被疑システムは新製品ではないと言える」という自動追尾空間ロケーティング方法事件の一審判決を見ますと、証拠の準備が十分でなかったのが原告の敗訴の一要因であったかもしれません。

方法特許はいつ侵害されるかが予知できないため、その侵害証拠の収集/準備は常に受動的であり、困難が伴います。入手可能な証拠を極力収集するのが一般論ですが、実際には収集できない場合が多いのです。最も重要な証拠はしばしば侵害被疑者のところにありますが、相手側の産地や工場等に事前に乗り込んでそれを入手することがほぼできないため、特許権者が自力で原始証拠を確保するのはやはり至難の業です。

侵害被疑者側にある証拠は、場合によっては挙証責任逆適用が認められ、裁判所から証拠提示命令が出されますが、侵害被疑者が事前に重要な原始証拠の隠滅でもすれば、すべてが徒労に終わりかねません。挙証責任逆適用の規則は、特許権者の利益を保障するためにありますが、それが証拠隠滅により十分に機能できない可能性も否定できません。

これに対処すべく、有効な訴訟スキルの1つとして考えられるのが、起訴と同時に民事訴訟法第74条等に基づいて関連技術/製品の「証拠保全」を請求する手法です。証拠保全は、被告が訴状を受け取った後、特許文献を研究し特許方法を回避したり、挙証責任②から逃れる対策を練ったり、原始証拠を隠滅したりするのを未然に防ぐための法的手段です。被告が無防備な状態にあるからこそ、その真の技術内容(生産方法等)や資料を確保できる可能性が格段に上がります。


(2)証拠の秘密保護

証拠開示の段階まで審理が進むと、当事者の商業秘密を如何に保護するかが一つの難点とも言えます。過度に秘密保護を認めますと、重要であるかもしれない証拠が隠蔽される虞がある一方、商業/技術内容の「一切合財全開示」も認めるわけにはいきませんので、公正、公平の観点に基づく裁判所の裁量が必要です。

商業/技術秘密の保護が認められた方法特許侵害訴訟の事例として、例えば「電子コード電話事件」があります。

<電子コード電話事件>

原告(蔡氏、張氏)が、自特許(「商品真偽に係る電話-コンピュータ検索方法」)が侵害されたとして、被告(海南国科兆信防偽科技有限公司(以下、「海南兆信」)、および海南兆信の子会社である上海兆信電子暗号化防偽技術有限公司に対し侵害停止および損害賠償を求めた訴訟(以下は「電話事件」)です。裁判所としては、被告が使用した防偽検索技術に、鑑定結果のように登録特許とは本質的な相違点があると認められ、特許侵害判断におけるオールエレメント原則に基づき、被告が使用した防偽検索技術は本案特許の保護範囲内に全て含まれておらず、侵害を構成しないと認定しました。なお、原告が主張したシステム構成は、特許方法による製品そのものではなく、所謂「使用方法」に該当するため、「新製品」の論議にまで至らないという。


 特許技術および被疑技術の両方について鑑定が行われた電子コード電話事件では、審理過程において確かに保護すべき商業秘密があるとして、裁判所は、鑑定証拠および開示証拠に関する当事者主張に対し、以下の事項を認めました。

(A)証拠交換および公開審理の過程において、被告である「海南兆信」の一部の核心的技術証拠を開示しない。

(B)鑑定過程において被告の核心的技術の秘密を保護する。鑑定機構/鑑定者に秘密保護が義務付けられる。鑑定に必須でない技術は、当事者が鑑定者(専門家)に開示しなくてもよい。当事者の技術秘密に関する部分は鑑定報告から伏せる。

(C)文書、裁判所判決文の閲覧および資料保管にあたり、当事者の商業秘密の部分は保護する。案件の結審前は、当事者の案件包袋から商業秘密に関する部分を除外し、閲覧者に見せない。

 上記(A)~(C)に踏まえ中国の司法実践の現状を考慮しますと、商業内容/技術の秘密保護に関しては大まかに次の3原則が必要だと考えられます。

<当事者請求原則>

 裁判所は、当事者から請求があってはじめて当事者の証拠を相手に提示すべきかの決定を下すため、進行の始動面では消極的です。つまり、裁判所は主に、一方側の当事者の請求理由や他方側の抗弁理由等が成立するか否かについて審査しますが、主動的に介入して秘密保護を命令することがほぼありません。つまり、当事者が証拠開示或いは秘密保護を自発的に請求するのが好ましいということです。

<合議廷原則>

 当事者には、相手側の当事者が裁判所へ提出した証拠を取得したり、知る訴訟権利があります。ただし、商業秘密保護の関係上、訴訟に係る重大事項を相手に提示するか否かは、合議廷が公正性および合法性を確保した上で討議、決定することになります。また、当事者からの開示/秘密保護の請求が成立するか否かについて合議廷により審査され決定されます。一方側の請求が成立した場合には、どの資料を相手側に開示しないかも合議廷により決定されます。さらに、相手に開示しないように被告が要求した証拠が、結審上の決定的証拠であるか否か、原告の抗弁不能を招致する決定的証拠であるか否かについて、合議廷により判断されます。

<公平合理原則>

 商業秘密保護に関する規定は、特許法には設けられておらず、民事訴訟法のみに存在します。しかし民事訴訟法による当該規定は、係る技術含量や秘密保護の必要性がそれぞれ異なる各訴訟案件に対して、秘密保護すべき内容、形式、程度を一律に規定するものではありません。つまり、証拠内容の開示可否など、方式的事項に対する裁判官の自由裁量権が広いと言えます。したがって、当事者訴権の保護と商業秘密の保護との間にバランスを見出すためには、合議廷の裁判官らが公平合理の原則に従い、それぞれの裁量範囲を慎重に規定する必要があります。





挙証責任逆適用の問題点

張喜田事件では、最高裁が「新製品」要件の充足を認めた一方、「同様の製品」要件を充足しないとして挙証責任逆適用を認めませんでした。また、最高裁の見解として、方法特許の保護範囲は、特許方法により直接に製造した製品、すなわち特許方法を使用して獲得した原始製品のみに及び、当該原始製品をさらに処理して獲得した後続製品には及ばないとされています。さらに、特許権侵害紛争における司法解釈の第13条1項に対し、最高裁は、「特許方法により直接に獲得した製品とはすなわち特許方法を使用して獲得した原始製品である」として、「直接に獲得する」の定義について同第13条1項の趣旨を狭く解釈しました。


  • ※特許侵害紛争における司法解釈の第13条1項※
    特許方法を使用して獲得した原始製品について、人民法院(裁判所)は、特許法第11条に言う特許方法により直接に獲得した製品に該当すると認定しなければならない。

実質的には「原始製品」のみを新製品の判断対象とする最高裁の解釈は、「新製品」の判断範囲を直接に狭めたのみならず、方法特許の権利行使範囲をも間接的に制限したものがあると思われ、多くの問題が懸念されています。例えば、被疑製品が、特許方法により直接に獲得した製品ではなく後続製品であるという主張が成立さえすれば、侵害被疑者は特許方法を実際に使用していたとしても、挙証責任②を回避できてしまいます。

少なくとも、「原始製品」に関する最高裁の認定から言えるのは、現行の挙証責任逆適用の運用範囲が、特許侵害紛争における司法解釈第13条2項に言う「特許方法により直接獲得した製品の使用行為」にまで及んでいないと見てよいでしょう。つまり、例えば「特許方法により直接獲得した製品」の使用侵害を巡る紛争では、挙証責任の逆適用が認められず、特許権者が自力で侵害証拠を取得せざるを得ないということになります。


  • ※特許侵害紛争における司法解釈の第13条2項※
    上記原始製品をさらに加工、処理して後続製品を得る行為は、人民法院(裁判所)は、特許法第11条に言う、特許方法により直接に獲得した製品の使用に属すと認定しなければならない。

「特許侵害紛争における司法解釈」の公表後、方法特許侵害紛争の最も重要な判例の1つとして位置付けられた張喜田事件を通し、中国特許侵害の司法運用における深層的問題が垣間見えました。特に、特許方法により直接獲得した「原始製品」を中間産物として、後工程を経なければ最終品が得られないような製品の侵害問題に関しては、方法特許の保護に係る直接や間接的範囲を判断する前に、張喜田事件の最高裁判断を多視点から再考しなければならないと思います。





結び

特許法第61条1項は、本来、方法特許の侵害訴訟を巡る立証の困難さを軽減させるための措置です。しかし、「新製品」の判断対象や、「同様の製品」の定義について狭く解釈し本来の立法趣旨から脱逸しますと、反って今後の司法運用を阻むことになりかねません。

特許方法により直接獲得した「原始製品」に属さないとされる「後続製品」を「新製品」の判断対象から除外した最高裁の認定は、張喜田事件の場合においては特許法第61条1項の適否判断が妥当であったかもしれません。しかし、これを方法特許侵害紛争に襲用してよいかと言いますと、難があると感じます。例えば医薬製品は、特許方法により直接製造したものをさらに後工程で加工し、最終市販品(錠剤やカプセル等)として生産するのが一般的ですが、最高裁の上記認定を一律にこのような医薬製品に適用しますと、侵害者側が、特許方法およびその製品に重要性/関連性の低い、乃至無関連の後工程を加えただけで、いわゆる「後続製品」にすれば、簡単に挙証責任②から逃れられます。最悪の場合、医薬品製造方法特許自体が容易に回避され、特許権者は開発/投資に対する公平な対価が得られなくなってしまいます。

最後に、挙証責任逆適用要件について最高裁の認定を一部踏襲したかのように見える自動追尾空間ロケーティング方法事件をはじめ、中国国内の「判例主義への傾向」が表れつつある今、最高裁の認定が中国の方法特許侵害訴訟の司法運用にいかなる影響を及ぼしていくか、その実態をさらにみていく必要がありそうです。





(ソース)

中国法院網:

http://www.chinacourt.org/article/detail/2002/06/id/6047.shtml

中国知識産権資訊網:

http://www.iprchn.com/Index_NewsContent.aspx?NewsId=64215

ウェブサイト:

(原刊行物『中国専利と商標』2011年第2号;3~10pp)


(参考)

北京知識産権律師網(判決文):

http:www.cnipr.net/article_show/asp?aticle_id=6217

中国110法律諮訊網(判例判決文):

http://www.110.com/panli/panli_42825746.html

中国専利法2009-日本語版(JETRO)

最高人民法院による民事訴訟証拠に関する若干の規定2001(中文)

特許権侵害紛争案件に対する最高人民法院審理における法律応用の若干の問題の解釈2009(中文)







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