著作権の登録・契約

日本の著作権法では、著作物の創作時から自動的に権利が発生する「無方式主義(著作権法第17条2項)」を採っているため、著作権を登録することは権利発生の要件ではありません。これは、国際的なルールであり、特許権や意匠権、商標権などの審査を経て登録される知的財産権との大きな違いでもあります。

登録せずとも権利が発生する著作権ですが、なぜ登録制度が存在するのでしょうか?

その理由として、主に以下の2点の目的があります。

  • 創作日などの事実関係の立証を容易にするため
  • 著作権を移転した場合の権利変動を公示するため

著作権登録することで、一定の法的効力を発生することになります。著作権も財産権として流通するものなので、取引の安全を確保するべく、第三者への対抗要件を備えるために登録制度が設けられています。また、著作権の移転などの権利変動については、著作権登録を受けなければ第三者に対抗することができません(著作権法第77条1号)ので、著作権の移転をした・移転を受けた場合には、まず登録されることをおすすめします。

 

著作権登録制度の内容

著作権登録制度の種類および効果は下図のとおりであり、著作権または著作物について一定の事実があった場合に、その内容を登録できます。

登録の種類 登録の内容 登録の効果 申請できる者
著作者の実名の登録
(第75条)
 無名又は変名で公表された著作物の著作者はその実名(本名)の登録を受けることができます(第1項)。  反証がない限り、登録を受けた者が、当該著作物の著作者と推定されます(第3項)。
 ⇒著作権の保護期間が公表後50年間から実名で公表された著作物と同じように著作者の死後50年間となります。
・無名又は変名で公表した著作物の著作者(第1項)
・著作者が遺言で指定する者(第2項)
著作物の第一発行日等の登録
(第76条)
 著作権者又は無名若しくは変名で公表された著作物の発行者は、当該著作物が最初に発行され又は公表された年月日の登録を受けることができます(第1項)。  反証がない限り、登録されている日に当該著作物が第一発行又は第一公表されたものと推定されます(第2項)。 ・著作権者
・無名又は変名で公表した著作物の発行者
プログラムの著作物の創作日の登録
(第76条の2)
 プログラムの著作物の著作者は、当該プログラムの著作物が創作された年月日の登録を受けることができます。※プログラムの創作後6ヶ月以内に限る(第1項)。  反証がない限り、登録されている日に当該プログラムの著作物が創作されたものと推定されます(第2項)。 ・著作者(プログラムの著作物に限る)
著作権・著作隣接権の移転等の登録
(第77条)
 著作権若しくは著作隣接権の譲渡等、又は著作権若しくは著作隣接権を目的とする質権の設定等があった場合、登録権利者及び登録義務者は著作権又は著作隣接権の登録を受けることができます。  権利の変動に関して、登録することにより第三者に対抗することができます。 ・登録権利者及び登録義務者(原則として共同申請だが,登録権利者の単独申請も可)
出版権の設定等の登録(第88条)  出版権の設定、移転等、又は出版権を目的とする質権の設定等があった場合、登録権利者及び登録義務者は出版権の登録を受けることができます。  権利の変動に関して、登録することにより第三者に対抗することができます。 ・登録権利者及び登録義務者(原則として共同申請だが,登録権利者の単独申請も可)

Source: 文化庁HP「著作権登録制度一覧表」

 

【1.著作者の実名の登録(著75条)】

 匿名や変名(ペンネーム等)で発表した著作物は、実名で発表した場合と違い、著作者の没後50年間ではなく発表後50年間までしか保護されません。しかし、実名を登録することで、その者は著作物の著作者と推定されます(法律上で「推定」を受けると、覆す証拠が出されない限り、その推定が正しい事実として扱われます)。著作者が個人の場合は、登録をすることによって、 実名で発表した場合と同様に保護期間が死後50年になるといった効果があります。

 

【2.著作物の第一発行日等の登録(著76条)】

 発行又は公表された著作物について、その「最初に発行した日(第一発行年月日)」又は「最初に公表した日(第一公表年月日)」を登録する制度です。 登録した年月日に第一発行又は第一公表されたものと推定されるので、盗作などで発行時期等を争う際、相手方は登録年月日が誤りであることを立証する責任を負担することになるため、争いを有利に進めるのに役立ちます。
 また、本などの出版物においては「発行」といい、演劇や音楽、WEBサイトなどは「公表」といいます。

 

【3.プログラムの著作物の創作日の登録(著76条の2)】

 プログラム著作物の創作年月日(プログラムが完成した日)を登録する制度です。公表、未公表にかかわらず登録できますが、この制度を悪用して実際の創作日よりも過去に遡って登録されるおそれがあるため、創作後6ヶ月以内でないと申請できないよう定められています。この場合も登録した年月日に創作があったものと推定されるので、上記と同様、争いを有利に進めるのに役立ちます。

 

【4.著作権・著作隣接権の移転等の登録(著77条)】

 著作権・著作隣接権について、他人からこれらを譲り受けた場合には「著作権の移転」を、これらを他人から担保にとった場合には「質権の設定」を、それぞれ登録することができます。この登録をしていない場合、たとえば同じ権利が二重に譲渡された場合に後の譲受人に自らが先に譲り受けたことを主張することができません。そればかりか、後の譲受人が先に登録を受けると、原則として後の譲受人が正式な譲受人となります。
 権利の所在を明確にして、安全な取引を確保するため必要な手続だといえます。

 

【5.出版権の設定等の登録(著88条)】

 出版権を設定、もしくは移転したり、他人から出版権を担保にとった場合には、上記と同じくそれぞれ登録することができます。この登録をしていない場合、上記と同様の問題が生じます。

 

当所でも、著作権登録申請の代行およびその他著作権に関する業務を承っておりますので、お気軽にご相談ください(御見積りは無料で承っております)。

 

 

 

契約

契約書の意味・役割

日本法においては、原則として両当事者の意思の合致さえ認められれば、口頭の約束のみにおいて契約は成立します。そうすると、わざわざ契約書を作成することは面倒だと感じる向きもあると思われます。

しかしながら、ごく単純な取引関係である場合(1回あたりの商品のやり取りで終了するような場合)を除き、下記のとおり、契約書の作成は非常に重大な意味を持ちます。

  • (ⅰ)契約の具体的な内容、成立日時等を後日証明できるようにしておくことで、紛争を予防する
  • (ⅱ)当事者間の権利義務の内容を明確にしておき、予期せぬ紛争が生じた場合に、予め責任の所在を明確にしておく

 

著作権に関わる契約

著作権に関わる契約としては、主に以下のものが考えられます。

 

著作物の利用許諾

著作権者が、自ら著作権を有する著作物に関し他者に利用許諾するというものです。この場合、利用しようとする側の当事者は、相手方が真の権利者であるのか、著作者が他に存在するのかについて留意する必要があります。

 

著作権の譲渡

著作権を譲渡する契約です。この場合、移転するのは著作権だけであり、著作者人格権が移転することはありません。人格権の不行使特約を結ぶことが一般的です。

 

出版関係

出版社と著作者・著作権者の間で交わされる契約で、著作権法第79条以下に定められた出版権を設定する契約や、このような出版権は設定しないまでも単に出版を許諾するという内容の契約があります。

昨今、法改正により、電子出版物に対する出版権が認められたことから、従前のままの出版権設定契約は見直す必要があるといえます。また、出版に関する契約には、電子出版を視野に据えることが必須となるでしょう。

さらに、より具体的な場面を考えると、下記のような場合にも著作権法上の権利がかかわることから、契約書の締結が重要な意味を持ってきます。また、下記の場面については、上記(1)著作物の利用許諾や(2)著作権の譲渡さらには(3)出版関係についてもその内容に含める場合が多いと考えられます。

  具体的場面 問題となり得る権利・事項
講演会 著作権者の権利(特に複製権・公衆送信権)、著作物の二次的利用に関する権利、著作者人格権etc
演奏会や上映会 著作権者の権利(特に演奏権・上映権)、著作者人格権、著作隣接権に関する権利etc
原稿執筆、イラスト作成、写真撮影等の依頼 著作権者の権利(特に複製権・展示権・譲渡権)、著作者人格権、著作物の二次的利用に関する権利etc
原稿・イラスト・写真等の既存の著作物の利用 著作権者の権利(特に著作権の帰属)、著作者人格権、著作物の二次的利用に関する権利etc
作品の公募 著作権の移転、著作物の二次的利用に関する権利、著作者人格権etc

※上記は、特に著作権法上問題となり得る事項を例示的に列挙したもので、生じ得る問題は上記の他にも多々存在します。

 

契約書に関する注意事項

契約自由の原則により、契約で定めた条項が法令などに反しない限り、契約当時者の意思の合致により、その通りの権利義務が発生します。しかしながら、法令違反が存在する場合は、その条項は効力を持たなくなることから、契約書の作成に当たっては、各種法令の知識も必要となります。

 

一般的なチェック事項

契約書に記載する内容については、各種契約の具体的な内容にもよりますが、おおまかに下記のとおりです。

  • (a)表題
  • (b)印紙
  • (c)前文(当事者の表示等)
  • (d)契約の目的
  • (e)各当事者の権利義務の内容
  • (f)条件・期限・存続期間
  • (g)契約の解除・損害賠償
  • (h)費用負担の分配
  • (i)契約書規定外の事項の取扱
  • (j)準拠法・合意管轄
  • (k)後文(契約書の作成通数)
  • (l)契約書作成年月日
  • (m)当事者の署名押印または記名押印

 

当事務所にお任せください

当所では、専門スタッフが上記のような著作権に関わる契約につき、契約書や覚書の作成、さらにそれら内容の校正・チェックを行います。

  • 契約書を準備したいが、どのように作成したらいいのか分からない
  • ひととおり契約書を作成してはみたが、専門家のアドバイスが欲しい

というような方は、ぜひ当所にお問い合わせください。また、国内間での契約のみならず、海外の相手方との契約書・覚書につきましても、対応させて頂きます。

 

 


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