著作物の利用

はじめに

世の中には多数の著作物があふれています。たとえば、個人のブログやフェイスブックに記載されている記事、2ちゃんねる等に記載された記事もそのほとんどが記事作成者の著作物に該当すると考えた方がよいでしょう。

「初めての方へ」で記載した通り、著作権法はクリエイター(著作者)の作品に対する権利と有益な情報を社会に流通させ、ひいては文化を発展させることの調和を目的としています。ここで説明する著作権法に規定された制限規定と呼ばれるものは、有益な情報を社会に流通させ、ひいては文化を発展させるために、著作権者の権利を制限する(権利行使をできなくする)ものとして働く規定ということができます。

著作物の安易な利用は、著作権や著作者人格権侵害の恐れをはらんでいます。ここでは、どのような利用であれば著作権法上適法な利用と認められるのかについて解説いたします。

引用(著作権法第32条)

適法引用による利用

著作権法は第32条1項において、「公表された著作物は、引用して利用することができる」と定めています。これは、ある著作物の複製等の利用行為が著作権者の許諾を得ずになされたとしても、それが引用に該当する場合には、著作権侵害とならず、著作権者の権利行使(差止請求等)が制限されることを表しています。

さらに、同条第1項は続けて、「この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」と要件を設けています。

以下、どのような場合に引用が適法なものとして認められるのか、詳しくご説明いたします。

※注:利用と使用の区別

著作権法上では「利用」と「使用」の語は区別されています。「利用」とは、著作権法によって、著作権者が独占的に行い得る行為として定められたものであり、著作物の複製や譲渡等を指します。他方、「使用」とは、それ以外の使う行為を指し、例えば、音楽を聴いたり、小説を読んだりする行為を表します。

本項目で問題となるのは、使用ではなく利用の場面である点に注意してください。

 

2.要件について

4つの要件

第32条1項の文言から、著作権侵害とならないための4つの要件を読み取ることができます。

  • 1 対象の著作物が公表されたものであること
  • 2 問題となる利用が引用にあたること
  • 3 引用が公正な慣行に合致すること
  • 4 引用が、引用の目的上正当な範囲内で行われていること

以下順に見ていきましょう。

(1)対象の著作物が公表されたものであること

公表ついては、著作権法第4条で規定されており、それに該当するかどうかで判断されます。

例えば、第4条1項は、著作権者が著作物を上演、演奏、上映、公衆送信、口述若しくは展示の方法で公衆に提示した場合には、当該著作物は公表されたものとみなされると規定されています。

 

(2)問題となる利用が引用にあたること

引用とはどのような行為であるのかについては、著作権法上明文の規定がありません。

裁判例等では、一般的に他者の著作物の利用の形態を「明瞭区別性」と「主従関係性」の2点から分析して判断することが多いです。

ア 明瞭区別性
自らが創作した部分と、他者の著作物を借りてきた部分とが明瞭に区別できることが必要です。

イ 主従関係性
創作物全体の中で、自らが創作した部分と他者の著作物から借りてきた部分と比較して、量的・質的に自らが創作した部分こそが主であるといえる関係にあることが必要です。

一般的に、上記ア・イの双方を満たす時、引用と判断されています。

また、以下で解説する公正慣習要件及び正当範囲要件は、こうして判断された引用の中から、さらに適法なものを選別する役割を果たします。

 

(3)引用が公正な慣行に合致すること

公正な慣行に合致していない引用は適法となりません。なお、従来からの慣行があるとしても、それらすべてが当然に判断基準となるわけではなく、それらのうち法的観点から公正と認められる慣行に限られます。また、慣行が形成されていない業界等に関しては、今後あるべき公正な慣行を想定し、それに基づいて判断されることになります。

 

※出典の明示について

著作権法上では、引用に関する出典明示について著作権法第48条1項1号で規定しています。裁判例では、これを著作権法第32条の「公正な慣習に合致するか」どうかの判断と関わる規定であり、引用の中から適法なものを峻別する過程で出典の明示内容がチェックされると判断しているものもあります。

また、出典明示として、どの程度詳しい情報を記載する必要があるかということや、どういった態様で出典を示すべきかという点は個別具体的な事案ごとにどのような慣習が形成されているかによって異なりますから、それぞれの場面ごとの事情をひとつひとつ考慮したうえで判断することが大切といえるでしょう。

 

(4)引用が、引用の目的上正当な範囲内で行われていること

これは、引用の対象とした他者の著作物の中から、正当な範囲だけを利用するよう定めたものです。

正当な範囲か否かは量と質の面から判断され、引用される著作物から多く借りすぎてはいけませんし、たとえ量的には少なくても、その著作物の価値の大部分を占める質の高い部分を引用する場合は、正当な範囲か否かは厳しく判断されることとなります。

なお、本項と先述の「(3)イ 主従関係性」は、共に利用者の著作物と被利用者の著作物との関係性に着目した要件です。ただし、正当範囲の判断は、下図のBとCを比較するものであるのに対し、主従関係性の判断は、AとCを比較するものであるという違いがあります。

 

適法と認められる利用行為と危険な利用行為について

  • ①「2ちゃんねる」などの掲示板のレスをそのまま自分のブログにコピー&ペーストし、末尾に元の掲示板のアドレス等を示す行為(いわゆる、まとめブログの作成)
     →この場合、その掲示板のレスに著作物性が認められる場合には、そのレスの複製は適法引用と認められなければ違法となります。なぜなら、いわゆるまとめブログには、ブログ作成者個人の創作による部分がほとんどないため、借りてきた部分と独自の創作による部分との間に主従関係性が認められず、引用とは言えないからです。
  • ②絵画等の展示会で作品(著作権が切れていないもの)を撮影し、その画像データを自分のブログ等にアップロードする行為
     →アップロードした画像の他に、自らの創作部分が多く付加されている場合(例えば、その作品の時代背景や鑑賞方法について自ら詳細に解説する場合など)には、作品の出典を示すことで適法引用として扱われます(出典を示さなければ適法な引用とはいえません)。
      また、単に写真だけを並べて、コメントも何も付与しない場合は、たとえ出典を明示していても適法引用にはなりません(上記主従関係性が認められない)。
      他方、撮影した作品が、画像の隅にわずかに映るにすぎないような場合は、当該画像によってその作品を鑑賞することはできませんから(著作物としての利用に当たらない)、そもそも引用の問題とはならず、出典の記載がなくとも適法です。
  • ③ネット上で画像を検索し、気に入った画像をSNS等の自分のプロフィールアイコン等で使用する行為
     →その画像を自分が作成したように偽る場合は当然違法です。また、出典を明示したとしても、その画像の使用が、自分がそのSNS上で作成する著作物(日記等)の作成にとって必要でなければ引用の問題にならず、違法です。

 

私的使用のための複製(著作権法第30条)

私的使用目的について

複製権(著作権法(以下省略します。)第21条)が著作者または著作権者の排他的、独占的な権利として我が国の法では認められているにも係らず、私たちは日常の社会生活において、著作物の複製を頻繁に行っています。著作権法が認める排他的権利を鑑みるに、当該行為は違法性を帯びる行為であるものとして理解されます。

しかしながら我が国の著作権法においては、私的使用のための複製は、著作権を制限する行為態様のひとつとして規定されています。私的使用を定めた第30条の文言は以下の通りです。

「著作物を個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときには,次に掲げる場合を除き,その使用をする者が複製することができる。」

 

要件について

それでは、どのような要件を満たせば、第30条に該当する行為となるのでしょうか。1項の要件は以下のように解されています。

  • ① 個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること=私的使用
  • ② 私的使用の目的を有すること
  • ③ 使用する者が複製すること

ここでは以下の事例を例に、要件とその適用範囲について考えていきたいと思います。

事例

(1) Aは個人的に楽しむ目的で録画した映画の著作物αを、録画後自己のサイトで公開した。
(2) αにつき、Aが業者Bに有償で録画を頼んだが、A個人で楽しんでいる。
(3) αにつき、Aがその映画の著作物オリジナルのDVDのコピーガードを外して録画した上で、αを自己の携帯機器に保存して個人で楽しんでいる。
(4)  (1)の事例において、Cはαが、著作者の許諾を得ずに複製されたものだとは知らずにダウンロードした。

① 個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)

「その他これに準ずる限られた範囲」という抽象的表現の具体的範囲が問題となりますが、一般的には「これに準ずる限られた範囲」とは、家庭に準じ、メンバー相互間に強い個人的結合関係があること、すなわち、家庭に準ずる程度の少人数かつ「特定」された集団であることと解されています。この基準から、会社内において自社用資料として複製する行為は私的複製には該当しないとされています(東京地裁昭和52年7月22日 舞台装置設計図事件)。

ここで事例(1)におけるAの行為を考えてみます。Aはαの複製物を不特定多数がアクセス可能である個人のホームページ上で公開しており、「特定」の範囲内であるとは言えません。したがって、「その他これに準ずる限られた範囲」内の使用には属さず、私的使用には該当しないこととなります。

② 私的使用の目的を有すること

目的という主観的要件ではありますが、これは外部に現れた行為との関係で客観的に判断されます。

事例(1)のAの行為は、インターネットで公開する以前は適法に私的複製の要件を満たしていたとしても、インターネット上にアップロードしたことにより不特定多数の人間がαを視聴できる状態にしており、この時点で私的使用の目的外の複製があったと判断されます。

③ 使用する者が複製すること

私的使用する者自身が複製を行う必要があり、私的使用する者の手足となる者や補助者が複製を行う場合もこれに該当します。

事例(2)においては、Aは業者に依頼して複製を行っています。外部の業者は利用者と対等な契約主体であり、営利を目的とする独立した事業者として利用者から依頼された複製行為を行うものであって、このことから当該複製行為の主体者は利用者であるAではなく、外部の業者となります(知財高判平成26年10月22日判決 自炊代行事件)。よって、当該要件を満たさず、事例(2) のAの行為は私的使用には該当しません。

 

適用が除外される場合

(1) 公衆の使用に供されることを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し,これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合ではないこと(1項1号)

コンビニ等に設置してあるコピー機はこの自動複製機器に該当しないわけではありませんが、著作権法附則第5条の2において、コンビニ等のコピー機はこの自動複製機から除外されています。これは国民生活において文書・図画のコピー機の必要性が高く、また家庭内ではそういったコピー機が普及していない現状を鑑みて、国民の利便性のためにこのようなコピー機を用いることは私的使用として許容されています。

 

(2) 技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより,当該技術的保護手段によって抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第1号及び第二号において同じ。)により可能となり,又はその結果に障害が生じないようになった複製,その事実を知りながら行う場合ではないこと(1項2号)

●コピーガード、コピープロテクション

本規定における技術的保護手段とは、従来、いわゆる「コピーガード」「コピープロテクション」のことを指し、このコピーガード等を外す行為のことを「技術的保護手段の回避」という文言で表現していました。このような行為は、コピーガードがあるという前提で著作権者が著作物を市場に提供しているにもかかわらず、それを外すことによってその前提を覆し、著作権者の意図しない複製が自由に行われることを可能としてしまいます。これは著作権者の経済的利益を大きく害するおそれがあるため、私的使用の範囲からは除外されました。更には利益を害する程度が著しい行為形態として、コピーガードを外すことのみを目的とした機能を有する装置やプログラムを公衆に譲渡等した者については、刑事罰を課すこととされています(第120条の2)。

事例(3)において、Aは複製物αを自己の携帯機器に保存するのみで、私的使用の範囲で個人的に楽しんでいると言えるものの、複製の態様はαのオリジナルDVDに掛かっていたコピーガードを外すというものでした。コピーガードは先述の通り、本規定の「技術的保護手段」に該当するため、これを回避しての著作物の複製は、私的使用に該当しないこととなります。

 

●リッピング

そして、2012年10月の著作権法の改正において、DVDやBlu-rayディスクの「リッピング」が、本規定「技術的保護手段の回避」に含まれることとなりました。リッピングとは、ディスクに記録されているデータをファイルとしてパソコンに取り込む行為を指し、リッピングによってディスクに用いられているCSSというアクセスコントロール技術を回避する行為態様が、本規定に該当します。

CSS(Content Scramble System)とは映像を暗号化して記録し、特定の機器によってしか再生を出来なくさせる技術です。単にCSSが施されたディスクからデータを抽出するリッピングを行うのみでは暗号が解除出来ず、再生を行うことは出来ません。この暗号を解除し、再生可能な状態のファイルを保存するリッピングが、CSS技術の回避として、本規定の適用範囲となります。

ここで、音楽CDについてですが、一般的に音楽CDのリッピングについては問題とはならないとされています。近年のDVD等映像ディスクについてはCSS技術が利用されていることが通常ですが、対して音楽CDについてはこのCSSその他保護技術が施されていないことが一般的です。本規定の射程はあくまでもCSS技術の回避ですから、CSS技術が利用されていない音楽CDを単純にリッピングしても、「技術的保護手段の回避」には該当しません。従って、音楽CDのデータをMP3としてパソコンに保存したり、携帯音楽プレーヤーに保存しても、当該適用除外規定にはあたらず、従前と同様に私的使用の範囲として楽しむことができます。

 

(3) 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合ではないこと(1項3号)

※自動公衆送信とは

受信者のアクセスに応じて著作物が送信されるような送信形態を指し、インターネット上のサーバー等が自動公衆送信装置に該当します。

本規定は2009年著作権法改正により新設された、いわゆる「違法ダウンロード」に関する規定です。

違法ダウンロードとは1項3号に定められた文言がその定義となりますが、よりわかりやすく一般的に言うならば、「インターネット上に違法にアップロードされている映像又は音楽の著作物を、違法にアップロードされているという事実を知りながらダウンロードする行為」のことを指します。

2012年著作権法改正により、有償著作物等に関する違法ダウンロード行為に刑罰が定められました。改正により加えられた刑罰規定(第119条3項)は、以下の通りです。

「第30条第1項に定める私的使用の目的をもって、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となっているものに限る。)であって、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」

また、第123条1項により親告罪であることが定められています。

「第119条…の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」

それでは、本行為、本罰則に関する具体的な留意点を説明します。

 

① 複製の対象が有償著作物等に限定されていること

刑事罰の対象となる違法ダウンロードは、有償著作物のダウンロードに限られます。有償著作物の具体例として、文化庁が掲載している違法ダウンロード刑事罰化についてのQ&Aでは、CDとして販売されていたり、有料でインターネット配信されているような音楽作品や、DVDとして販売されていたり、有料でインターネット配信されているような映画作品が挙げられています。

ここで特筆すべき点は、本件行為の対象は音楽・映像の録音または録画に限定されていることです。この規定はダウンロード型ビジネス市場への影響を鑑みて設けられたものであることから、画像ファイルのダウンロードや、テキストのコピー&ペーストなどは、本件違法ダウンロード行為には該当しないこととなっています。また録音・録画を伴わない違法にアップロードされた音楽・映像の単なる視聴行為は、本件行為の対象とはなっていません。

② 違法にアップロードされている事実を知りながら行う場合に限定されていること

違法にアップロードされているという事実を知っていながら、あえてそれをダウンロードした場合に限られます。

事例(4)において、Cはαが合法的にアップロードされたものであるという認識の下、αをダウンロードしています。このような場合においては、Cの行為は刑事罰の対象とはなりません。

 

このようなインターネット利用上の罰則が設けられるに当たって、インターネット利用が不当に制限されることのないよう、政府は以下のような附則を設けました。これにより、警察には恣意的な捜査権の濫用につながらないよう配慮を求めるとともに、関係者である権利者団体は、告訴前に事前に警告を行うなどの配慮についても定められています。

著作権法改正法附則7条(国民に対する啓発等)

1項「国及び地方公共団体は、国民が、新法第30条第1項(新法第120条第1項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもって、有償著作物等(新法第119条第3項に規定する有償著作物等をいう。以下同じ。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害する行為(以下「特定侵害行為」という。)の防止の重要性に対する理解を深めることができるよう、特定侵害行為の防止に関する啓発その他の必要な措置を講じなければならない。」

2項「国及び地方公共団体は、未成年者があらゆる機会を通じて特定侵害行為の防止の重要性に対する理解を深めることができるよう、学校その他の様々な場を通じて特定侵害行為の防止に関する教育の充実を図らなければならない。」

3項「附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日の前日までの間における第1項の規定の適用については、同項中「新法第30条第1項(新法第120条第1項において準用する場合を含む。)」とあるのは「著作権法第30条第1項(同法第120条第1項において準用する場合を含む。)」と、「新法第119条第3項に規定する有償著作物等」とあるのは「録音され、又は録画された著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像(著作権又は著作隣接権の目的となっているものに限る。)であって、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)」とする。

同附則第8条(関係事業者の措置)
「有償著作物等を公衆に提供し、又は提示する事業者は、特定侵害行為を防止するための措置を講じるよう努めなければならない。」

同附則第9条(運用上の配慮)
「新法第119条第3項の規定の運用に当たっては、インターネットによる情報の収集その他のインターネットを利用して行う行為が不当に制限されることのないよう配慮しなければならない。」

なお、視聴のためにサイトの情報を一時的にブラウザに保存する「キャッシュ」については、第47条の8(電子計算機における著作物の利用に伴う複製)における「当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度」である限り適法とされています。ただし、一時保存のデータをキャッシュホルダーからコンピューターの内部又は外部に保存した場合には、複製の目的外使用(第49条1項)として、第47条の8は適用されません。

 

私的録音録画補償金制度(第30条2項)

私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であって政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であって政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

デジタル方式による複製は、劣化が少なく、そのオリジナルと同等の品質を有するものを作ることが可能であることから、コピー品がオリジナルとして中古市場に流出するといった損害が権利者に発生することとなります。そのため、政令で指定するデジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器・記録媒体を用いて、録音・録画を行う者は、権利者に対して補償金を支払うという「私的録音録画補償金制度」が設けられています。

(平成27年度文化庁長官官房著作権課「著作権テキスト―初めて学ぶ人のために」65頁)

第104条の4においては、上述の特定機器・特定記録媒体の購入者は、購入に当たり指定管理団体から当該私的録音録画補償金の支払請求があった場合、補償金を支払わなければならないこととされています。また第104条の5では、特定機器・特定記録媒体の製造又は輸入を業とする者は、当該補償金の支払請求及びその受領に協力しなければならないと定められています。

<参考文献>
松村信夫・三山峻司著「著作権法要説(第2版)実務と理論」世界思想社
中山信弘・大渕哲也・小泉直樹・田村善之編「著作権判例百選(第4版)」有斐閣
平成27年度文化庁長官官房著作権課「著作権テキスト―初めて学ぶ人のために」
平成24年文化庁「ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A」
牧野武文著「『DVDリッピング違法化』にまつわる誤解を読み解く」
http://news.mynavi.jp/articles/2012/06/19/copyright/

 

 


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