PATENT
特許・実用新案
商標登録を検討する際、「出願してから登録されるまで、どのくらいの期間がかかるのか」「登録された商標権は何年間有効なのか」という疑問を持つ方は少なくありません。
なお、上記の登録までの期間は特許庁が公式に保証するものではありません。審査分野、指定商品・指定役務の内容、拒絶理由通知の有無、出願人の対応時期などによって変わります。新しい商品やサービス、会社名、店舗名などのブランドを安心して使用するためには、発売日や広告開始日から逆算して、早めに商標調査と商標出願を行うことが重要です。
本記事では、商標登録にかかる期間について、出願から登録までの流れ、審査期間が長くなるケース、早期審査制度、関連する費用、登録後の存続期間と更新手続きを解説します。
「商標登録の期間」という言葉は、次の異なる期間を指して使用されています。
商標登録願を特許庁へ提出してから、審査を経て商標権が発生するまでの期間です。
商標登録出願を行っただけでは、商標権は発生しません。特許庁の審査を通過し、登録査定後に登録料を納付し、設定登録が行われることで初めて商標権が発生します。そのため、商標出願の日と、商標権による保護が開始される日は同じではありません。
設定登録によって発生した商標権が、何年間有効であるかという期間です。
日本の商標権の存続期間は、設定登録の日から10年間です。特許権のように一定期間が経過すると更新できなくなる制度ではなく、更新登録申請によって10年の存続期間を何度でも更新できます。
この二つは起算日も必要な手続きも異なるため、分けて理解する必要があります。
商標登録に関する主な期間の目安は、以下のとおりです。
| 対象となる期間 | 期間の目安 |
|---|---|
| 国内出願から審査着手まで | 約5~9か月 |
| 国内出願から設定登録まで | 約6~10か月 |
| 早期審査の申出から最初の審査結果まで | 平均約2か月 |
| 国際商標登録出願の指定通報から審査着手まで | 約8~10か月 |
| 商標権の存続期間 | 設定登録から10年 |
| 通常の更新登録申請期間 | 満了日の6か月前から満了日まで |
| 満了後の更新可能期間 | 満了後6か月以内 |
「出願から設定登録まで約6~10か月」という期間は、審査において拒絶理由がなく、登録料も速やかに納付した場合の実務上の目安です。
拒絶理由通知への対応や補正、審判などの中間手続きが必要になった場合は、登録完了まで1年以上かかることがあります。
特許庁は、商標登録出願後、審査官が審査に着手するまでの見通しを、担当分野ごとに公表しています。2026年6月時点で公表されている国内出願の審査着手までの目安は、次のとおりです。
| 審査分野 | 主な区分 | 審査着手までの目安 |
|---|---|---|
| 化学 | 第1類~第5類 | 5~7か月 |
| 食品 | 第29類~第33類 | 6~8か月 |
| 機械 | 第6類~第13類、第19類 | 7~9か月 |
| 雑貨・繊維 | 第14類~第18類、第20類~第28類、第34類 | 7~9か月 |
| 産業役務 | 第35類~第40類 | 7~9か月 |
| 一般役務 | 第41類~第45類 | 7~9か月 |
マドリッド協定議定書に基づく国際商標登録出願については、指定通報から審査着手まで8か月から10か月が目安とされています。
ここで注意したいのは、上記が「設定登録までの期間」ではなく、審査官が審査に着手するまでの目安であることです。審査着手後、登録査定又は拒絶理由通知が発送されるまでにも一定の時間がかかります。したがって、国内出願について拒絶理由がなく円滑に進んだ場合でも、出願から登録までは、おおむね6か月から10か月程度を見込む必要があります。
特許庁が公表する期間は変更される可能性があるため、実際に出願する時点で最新情報をチェックすることが重要です。
商標登録出願から商標権の発生までは、一般に次の流れで進みます。
商標登録出願が行われると、特許庁は、出願された商標が登録要件を満たしているかを審査します。審査では、商標に商品・サービスの出所を識別する力があるか、他人の先行商標と同一又は類似していないか、指定商品・指定役務の記載が明確かなどが確認されます。登録を妨げる理由がなければ、登録査定が通知されます。
登録査定を受け取っただけでは、商標権はまだ発生しません。
原則として、登録査定の謄本が送達された日から30日以内に登録料を納付する必要があります。登録料を支払い、特許庁による設定登録が行われた日に商標権が発生します。
登録料納付書を書面で提出する場合は、書類の電子化に一定の時間がかかります。早く設定登録を受けたい場合は、登録査定後、登録料納付の準備を速やかに進めることも重要です。
商標登録出願の内容や審査結果によっては、出願から登録までに1年以上かかることもあります。主な原因は、次のとおりです。
審査官が登録できない理由を発見した場合、出願人に拒絶理由通知が送付されます。拒絶理由通知を受けた場合は、指定された応答期間内に、意見書や手続補正書を提出して対応します。
出願人が書類を提出すると、審査官による再審査が行われます。そのため、拒絶理由通知を受けなかった案件と比べ、登録までの期間が数か月以上長くなる可能性があります。拒絶理由を解消できず拒絶査定となり、拒絶査定不服審判を請求する場合は、さらに長い期間が必要です。
なお、拒絶理由通知は、最終的な拒絶の決定ではありません。意見書による反論や、指定商品・指定役務の補正によって拒絶理由を解消できる場合があります。
拒絶理由通知を受けた後は、対応方針の決定や証拠資料を準備する必要があります。
指定された応答期間内に対応することが難しい場合には、期間延長申請が可能ですが、その分だけ審査の再開及び登録の時期も後ろにずれることになります。
拒絶理由通知への応答に時間を要することが予想される場合には、応答期限から逆算し、応答方針の検討、社内確認及び証拠資料の収集を早めに進めることが重要です。
早期審査を利用しない場合でも、出願前の準備によって不要な手続きを減らし、登録まで円滑に進められる可能性があります。出願前に確認すべき主な項目は、以下のとおりです。
自分で商標出願を行うことも可能ですが、先行商標の類否や指定商品・指定役務の選び方について判断が難しい場合は、弁理士又は特許事務所への依頼を検討するとよいでしょう。
出願時の内容に問題があると、登録までの期間だけでなく、取得できる権利の範囲にも影響します。
早く商標権を取得する必要がある場合は、商標早期審査制度を活用できる可能性があります。
早期審査とは、所定の要件を満たす商標登録出願について、申出を行うことにより、通常の出願より早く審査結果を得られる制度です。2026年6月現在、早期審査の申出から最初の審査結果が通知されるまでの期間は、平均2か月程度とされています。
ただし、「早期審査を利用すれば、必ず2か月で商標登録が完了する」という意味ではありません。平均2か月程度という期間は、申出から最初の審査結果が通知されるまでの期間です。拒絶理由通知を受けた場合には、その後の応答や再審査に別途時間がかかります。
早期審査を利用するためには、基本的な条件として、出願商標を既に使用しているか、使用の準備を相当程度進めていることが必要です。具体的には、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
早期審査の申出には、「早期審査に関する事情説明書」と、商標の使用又は使用準備を示す証拠資料などが必要です。申出前には、自分の出願がどの要件に該当するのか、提出すべき資料に不足がないかを詳細に確認します。
例えば、次のような事情がある場合は、早期審査の利用を検討する余地があります。
ただし、上記の事情があるだけで、必ず早期審査の対象になるわけではありません。実際の使用状況、指定商品・指定役務、提出資料などを踏まえて判断されます。
早期審査と混同されやすい制度として、商標の「ファストトラック審査」があります。ファストトラック審査は、一定の商品・役務表示のみを指定した出願について、別途の申請をしなくても通常より早く審査する運用でした。
しかし、通常の審査期間が短縮されたことを理由として、令和4年度をもって休止されています。2023年3月31日以前に出願された一定の案件を除き、新たにファストトラック審査の対象となることはなく、再開時期も未定です。
現在、商標登録を早めるために検討すべき主な制度は、早期審査です。
早期審査の申出について、特許庁へ支払う手数料はなく、申出自体は無料です。ただし、商標登録出願時の出願料や、登録査定後の登録料は通常どおり必要です。
また、弁理士や特許事務所へ早期審査の申出を依頼する場合は、事情説明書の作成や証拠資料の確認などに関する代理人費用が発生します。代理人費用は事務所や案件の内容によって異なります。
早期審査を利用するかを検討する際は、期間短縮の必要性だけでなく、準備にかかる時間、必要資料、費用も併せて確認します。
商標権の存続期間は、出願日からではなく、設定登録の日から10年間です。例えば、2026年10月1日に設定登録された商標権は、原則として2036年10月1日に存続期間が満了します。
ただし、商標権は更新登録申請を行うことにより、10年の存続期間を何度でも更新できます。更新を続ける限り、ブランドを商標権によって長期間保護することが可能です。
通常の更新登録申請期間は、商標権の存続期間満了日の6か月前から満了日までです。
この期間内に更新登録申請ができなかった場合でも、満了後6か月以内であれば、更新登録料と同額の割増登録料を納付して更新申請を行うことができます。満了後6か月の期間も経過し、所定の救済要件も満たさない場合は、商標権を維持できません。
会社名、商品名、サービス名、ロゴなどを継続して使用する場合は、更新期限を社内又は代理人によって管理することが重要です。
商標登録料は、10年分を一括で納付する方法のほか、前期5年分と後期5年分に分けて納付することもできます。5年分を分割して支払う場合でも、商標権の法定の存続期間が5年間になるわけではありません。
商標権の存続期間は設定登録から10年間ですが、6年目以降も権利を維持するには、後期分の登録料を期限内に納付する必要があります。
A. 2026年6月時点では、国内の商標登録出願について、審査着手まで5か月から9か月が目安です。拒絶理由通知を受けずに進んだ場合、出願から設定登録までは、おおむね6か月から10か月程度が実務上の一つの目安です。ただし、案件ごとに異なります。
A. 早期審査の対象となり、審査で拒絶理由が発見されず、登録料も速やかに納付した場合は、通常審査より大幅に早く登録される可能性があります。ただし、特許庁が公表している「平均2か月程度」は、早期審査の申出から最初の審査結果までの期間です。設定登録までの期間を保証するものではありません。
A. あります。拒絶理由通知への対応、審査官による再審査、拒絶査定不服審判などの中間手続きが必要となった場合は、出願から登録まで1年以上かかることがあります。
A. 取得できません。商標登録出願を行った段階では、まだ商標権は発生していません。審査を通過し、登録料を納付し、設定登録が行われた時点で商標権が発生します。
A. 出願人が自分で早期審査の申出を行うことも可能です。ただし、早期審査の要件に該当することを説明し、商標の使用又は使用準備を示す証拠資料を提出する必要があります。要件の判断や資料の選択が難しい場合は、弁理士へ相談する方法があります。
A. 特許庁に対する早期審査の申出自体は無料です。ただし、弁理士や特許事務所へ手続きを依頼する場合は、別途代理人費用が発生します。
A. 商標権は、設定登録の日から10年間有効です。満了前に更新登録申請を行えば、10年ごとに何度でも更新できます。
A. 商標権者が自ら更新期限を管理することが基本です。特許庁には、登録料などの支払期限を知らせる通知サービスがありますが、利用には登録が必要です。重要な商標については、社内管理に加え、弁理士や特許事務所による期限管理を利用する方法もあります。
商標登録の「期間」には、出願から登録までにかかる期間と、登録後の商標権の存続期間という二つの意味があります。
2026年6月時点では、国内の商標登録出願について、審査着手までの期間は5か月から9か月が目安です。拒絶理由がなく円滑に進んだ場合、出願から設定登録までは、おおむね6か月から10か月程度が一つの目安となります。拒絶理由通知への対応や補正、審判などが必要になると、登録まで1年以上かかることもあります。
早く権利を取得する必要があり、所定の要件を満たす場合は、早期審査制度を活用できます。早期審査の申出から最初の審査結果までは平均2か月程度であり、特許庁への申出手数料は無料です。
登録後の商標権の存続期間は、設定登録の日から10年間です。満了前に更新登録申請を行えば、10年ごとに何度でも更新できます。
商品やサービスの発売時期、ブランドの公表、広告の開始、海外出願などの予定がある場合は、登録までに必要な時間を見込んで、早めに商標検索と出願準備を進めることが重要です。出願内容、早期審査の要件、登録までのスケジュールがわからない場合は、知財の専門家である弁理士又は特許事務所へ相談することも検討しましょう。