PATENT
特許・実用新案
商標の「読み方」は実務上「称呼」と呼ばれ、審査や他人の商標との類似判断で重要な役割を果たします。
公開日:2026年7月13日
商標の「読み方」は、実務上「称呼」と呼ばれます。自社が意図した読み方だけでなく、商標に接する需要者が何と自然に読むかが、商標登録の審査や他人の商標との類似判断で重要になります。
本記事では、商標の読み方の基本、希望する読みの出願書類への記載方法、J-PlatPatでの検索、同じ読み方の先行商標が見つかった場合の考え方を、商標制度と実務の両面からわかりやすく解説します。
称呼とは、商標に接する需要者が、取引上自然に認識する音をいいます。これは、2026年2月改訂の特許庁「商標審査基準」に示されている考え方です。
商標は、商品やサービスの出所を他社のものと区別するための標識です。文字だけでなく、図形、記号、色彩、動き、音、立体的な形状なども、要件を満たせば商標として保護され得ます。商標は知的財産の一つであり、技術的な発明を保護する特許とは保護対象が異なります。
文字を含む商標では、その文字構成から自然に生じる読み方が称呼となります。例えば、「竜田川」からは通常「タツタガワ」が自然な称呼として認定され、「リュウデンセン」のような読み方は、原則として自然な称呼とは扱われません。
| 判断要素 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 文字、図形、書体、色彩、ロゴの構成など、目で見たときの印象 |
| 称呼 | 商標を発音し、耳で聞いたときの音や読み方 |
| 観念 | 商標から自然に想起される意味やイメージ |
商標の類否は、外観・称呼・観念の一つだけで機械的に決まるものではありません。需要者に与える印象、記憶、連想、指定商品・指定役務における一般的な取引の実情などを総合して、出所の混同のおそれがあるかが判断されます。
商標の読み方は、出願人が自由に確定できるものではありません。基本となるのは、出願人の意図を知らない通常の需要者が、その商標を取引上自然にどう読むかです。
漢字には複数の読み方があるため、一つの文字商標から二つ以上の称呼が生じるケースがあります。特許庁の基準では、「白梅」から「ハクバイ」と「シラウメ」の双方が生じる事例が示されています。一方の読み方を振り仮名として付しても、他の自然な読み方が排除されるとは限りません。
アルファベットからなる商標では、英語読み、ローマ字読み、一文字ずつ読む方法、業界内で一般化した略称などが考えられます。短い欧文字列は、一語として読まれる場合と、各文字の名称で読まれる場合があるため、予定する読み方だけでなく複数の検索語を準備する必要があります。
文字要素のない図形だけの商標には、特許庁が審査の検索キーとして用いる「称呼」や「商標(検索用)」が付与されません。ただし、法的な類似判断では、動物や物品を表す図形などから名称や観念が生じる可能性があるため、「検索用称呼がないこと」と「称呼・観念を一切検討しなくてよいこと」は同じではありません。
INPITの案内によれば、漢字やアルファベットを含む商標について、希望する読み方を商標登録願に記載できます。出願書類の【商標登録出願人】欄の後に【その他】欄を設け、次のように記載します。
本願商標は「○○○○(カタカナで記載)」と読みます。
この記載は、審査官が称呼を付与する際の参考となります。ただし、希望した読み方が必ず採用されるわけではありません。出願商標の文字構成とかけ離れた読み方は、希望しても付与されない場合があります。
J-PlatPatや商標公報に表示される称呼は、特許庁が審査のための検索キーとして付与する参考情報です。したがって、希望する読み方を記載しただけで、その読み方のみが登録商標の効力として独占されるわけではありません。権利範囲は、登録商標の構成と指定商品・指定役務を基礎に個別に判断されます。
独自の読み方をブランドとして強く保護したい場合は、元の漢字・欧文字商標に加え、読み方を表すカタカナ商標や、文字と読みを併記したロゴ商標を別途出願する方法があります。どの形態で出願するかは、実際に使用する表示、将来の展開、先行商標との関係を踏まえて検討します。
先行商標と読み方が同じであっても、直ちに登録できないとは限りません。商標法第4条第1項第11号との関係では、商標が同一・類似であることに加え、指定商品又は指定役務も同一・類似であることが問題となります。
反対に、文字の見た目が異なっていても、称呼が同一か又は類似し、商品・役務も類似する場合には、拒絶理由通知を受ける可能性があります。称呼の類似では、音質、音量、音調、音節、語の切れ方などを比較し、耳で聞いた全体的な印象が紛らわしいかを検討します。
| 想定されるケース | 確認のポイント |
|---|---|
| 同じ読み方・同じ分野 | 類似と判断される可能性が比較的高い。外観・観念、取引の実情も含めて検討する。 |
| 同じ読み方・異なる分野 | 商品・役務が非類似であれば併存できることがある。ただし区分番号だけでは判断しない。 |
| 読み方は近いが一部が異なる | 語頭、語尾、長音、促音、清濁音、アクセント、音数などから全体的な聴覚印象を検討する。 |
類似群コードは重要な目安ですが、同じコードなら必ず商品・役務が類似し、異なるコードなら必ず非類似というものではありません。個別の案件では、商品・役務の性質、用途、販売部門、需要者なども考慮されます。
J-PlatPatは、特許庁とINPITが提供する無料の特許情報プラットフォームです。商標の出願・登録情報を検索できる公的なデータベースであり、先行商標調査の第一歩として利用できます。
「称呼(類似検索)」では、完全に同じ読み方だけでなく、称呼が類似する可能性のある商標を広く検索できます。文字そのものを調べる「商標(検索用)」も併用し、漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、長音や促音の有無など、検索語を変えて確認することが重要です。
検索時の注意:J-PlatPatで問題となる商標が見つからなかったとしても、商標登録や非侵害が保証されるわけではありません。検索方法、データ反映の時差、称呼の想定漏れなどにより、重要な先行商標を見落とす可能性があります。
新しい商品名やサービス名を作成する際は、自社が予定する読み方だけでなく、第三者が自然に読む可能性のある称呼を洗い出します。音読み・訓読み、英語読み・ローマ字読み、略称、一文字ずつの読み、結合商標の一部分から生じる読みなどを検討します。
ブランドの読み方を市場に定着させるには、商品パッケージ、広告、名刺、パンフレット、ウェブサイトやECサイトの商品ページなどで、必要に応じてカナ表記を併記することが有効です。使用するロゴや表記が出願商標から大きく変わる場合は、別の商標出願が必要かも検討します。
ネーミングを決定し、広告やウェブサイトで大きく公表した後に他人の先行商標が判明すると、名称変更、デザイン変更、在庫や宣伝物の作り直しなどの負担が生じます。そのため、名称候補の段階で検索し、重要なブランドについては弁理士による調査を行うことが望まれます。
また、商標調査をしても登録が保証されるわけではありません。審査官の判断、調査後に公開された先願、使用による周知性、取引の実情などによって結論が変わることがあります。
商標の読み方である称呼は、商標登録の可能性や他人の商標権との抵触を検討する上で重要な要素です。しかし、類似判断は称呼だけではなく、外観、観念、指定商品・指定役務、需要者、取引の実情などを総合して行われます。
J-PlatPatを自分で利用することはできますが、複数の読み方、結合商標の要部、商品・役務の類似範囲まで含めた調査には専門的な判断が必要です。重要なブランド名、商品名、サービス名、会社名を採用する場合は、出願前に弁理士へ相談することをおすすめします。
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARKでは、商標の読み方の検討、先行商標調査、指定商品・指定役務の選定、国内外の商標出願について相談を承っています。同じ読み方の先行商標が見つかった場合も、商標全体と事業内容を踏まえて登録可能性とリスクを検討します。