PATENT
特許・実用新案
商品名やサービス名、会社のロゴマークやキャラクターなどを商標登録すると、「商標権」という権利が発生します。
公開日:2026年7月14日
商品名やサービス名、会社のロゴマークやキャラクターなどを商標登録すると、「商標権」という権利が発生します。
これらの名称やマークは、事業者の商品・サービスを他人のものと区別し、消費者が提供元を認識する目印となります。商標権は、ネーミングやマークに蓄積される信用を守るための知的財産制度です。
商標権は、登録した名称やマークを単に所有する権利ではありません。登録した商標と、それを使用する商品・サービスとの組合せについて、商標を独占的に使用し、一定の範囲で第三者の使用を排除できる権利です。
例えば、ある商品名について商標権を取得した場合、他社が同じ名称を使用するケースだけでなく、似た名称を使用するケースにも商標権の効力が及ぶことがあります。一方、同じ名称であっても、全く異なる商品・サービスに使用されている場合には、原則として商標権の範囲外となることもあります。
以下では、商標権の概要を確認し、権利が基本的にどの範囲まで及ぶのかを具体例でわかりやすく解説します。
商標権とは、特許庁に商標登録出願を行い、審査を経て登録された商標について認められる知的財産権です。商標権は、特許や意匠と並ぶ代表的な知的財産の一つです。
商標登録出願が登録査定となった後、登録料を納付し、商標登録原簿に設定登録されることで商標権が発生します。単に商品名やロゴを考案したことや、実際に使用を始めたことだけで、自動的に商標権が発生するわけではありません。
商標権者には、主に次の権利が認められます。
商標権の効力は日本全国に及びます。ただし、日本で取得した商標権が、そのまま外国でも有効になるわけではありません。海外で商品を販売したりサービスを提供したりする場合には、原則として進出国・地域でも権利を取得する必要があります。
商標権によって名称やマークを継続的に保護することは、商標が持つ基本的な役割を維持し、ブランドの信用を積み重ねることにつながります。
商標は、どの事業者の商品・サービスであるかを消費者に示す目印です。同じ商品カテゴリーに多くの商品が並ぶ場合でも、名称やロゴマークによって提供元を区別できます。
消費者は、過去に利用した商品・サービスの品質や経験を商標と結び付けて認識します。事業者が同じ商標の下で品質を維持することで、商標に信用が蓄積されます。
商標は、広告、ウェブサイト、店舗、動画などで繰り返し使用されることにより、商品・サービスのイメージを伝える役割も果たします。
商標登録の主なメリットは、登録商標を指定商品・指定役務について独占的に使用でき、他人による同一・類似範囲の使用を排除できることです。さらに、ライセンス、フランチャイズ、事業譲渡などに利用できるため、商標権は企業の知財戦略を支える財産にもなります。
商標権の範囲は、登録された名称やロゴだけで判断するものではありません。
主に次の3つの要素から判断します。
まず確認するのは、商標登録原簿に登録されている商標です。特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)は無料で利用できる公的な検索サービスであり、このサイトでは、商標登録番号、権利者、登録商標、指定商品・指定役務、存続期間などを確認することが可能です。
登録対象には、文字、図形、記号、立体的形状、これらを組み合わせたもののほか、音商標や位置商標などもあります。どの態様で登録するかにより、権利範囲の判断が異なる可能性があります。
商標の種類そのものについては、別記事「商標の例」で詳しく解説しています。本記事では、その商標にどのような権利が発生するかを中心に扱います。
商標登録出願では、商標を使用する商品又はサービスを指定します。
指定した商品を「指定商品」、指定したサービスを「指定役務」といいます。商標権は、商標と指定商品・指定役務の組合せによって構成されるため、指定商品・指定役務の内容が権利範囲を決める重要な要素となります。
例えば、同じ「A」という文字商標であっても、次の商標権は別の権利です。
なお、商品・役務は第1類から第45類までの区分に分類されますが、区分は手続上のカテゴリーです。同じ区分に含まれている商品・サービスがすべて類似し、異なる区分であれば必ず非類似になるわけではありません。
商標権の効力は、登録商標と指定商品・指定役務に完全に同一の範囲だけでなく、一定の類似範囲にも及びます。
商標が類似するかどうかは、一般に次の要素を総合して判断されます。
商品・役務の類似についても、商品の性質、用途、販売場所、需要者、提供方法などを踏まえて判断されます。
したがって、名称の文字が一部異なっているという理由だけで、直ちに商標権侵害を回避できるわけではありません。
ここでは、架空の登録商標を使って、商標権の効力を説明します。
ある会社が、文字商標「ABCORA」を商品「コーヒー」について登録したとします。
商標権者は、指定商品であるコーヒーについて「ABCORA」を使用する権利を専有します。これを一般に商標権の「専用権」といいます。
例えば、商標権者は次のような使用を行うことができます。
商標法第25条に基づき、商標権者は指定商品・指定役務について登録商標を使用する権利を専有します。
第三者が商標権者の許諾を受けず、コーヒーに「ABCORA」と表示して販売した場合、原則として商標権侵害となります。
登録商標と使用商標が同一であり、商品も指定商品と同一だからです。
この場合、商標権者は、第三者に対して商品の販売停止や商標表示の除去などを求めることが考えられます。
第三者がコーヒーについて、例えば「ABKORA」など、外観や称呼が「ABCORA」に類似する商標を使用したとします。
登録商標と完全に同一ではなくても、需要者が商品を取り違えたり、同じ会社の商品であると誤認したりするおそれがある場合には、商標が類似すると判断される可能性があります。
商標権者は、登録商標そのものを指定商品・指定役務に使用する権利を専有するだけでなく、第三者による類似範囲の使用を排除することができます。これを一般に「禁止権」といいます。
登録商標「ABCORA」の指定商品が「コーヒー」である場合に、第三者が同じ商標を、コーヒーと類似すると判断される別の商品に使用したケースを考えます。
使用する商標が同一であっても、対象商品が指定商品そのものでなければ、専用権の範囲ではありません。
しかし、その商品が指定商品と類似する場合には、禁止権の範囲に含まれ、第三者の使用を排除できる可能性があります。
商標権の範囲は、次のように整理できます。
| 使用される商標 | 使用される商品・サービス | 原則的な位置付け |
|---|---|---|
| 登録商標と同一 | 指定商品・指定役務と同一 | 専用権の範囲 |
| 登録商標と類似 | 指定商品・指定役務と同一 | 禁止権の範囲 |
| 登録商標と同一 | 指定商品・指定役務と類似 | 禁止権の範囲 |
| 登録商標と類似 | 指定商品・指定役務と類似 | 禁止権の範囲 |
| 登録商標と同一・類似 | 商品・役務が非類似 | 原則として商標権の範囲外 |
もっとも、著名な商標について混同を生じさせる使用が行われた場合などには、商品・サービスが非類似でも、不正競争防止法などにより問題となることがあります。
「ABCORA」がコーヒーについて登録されている一方、第三者が全く異なる商品・サービスに「ABCORA」を使用しているケースを考えます。
商品・サービスが非類似であれば、同じ文字を使用しているというだけで、直ちに商標権侵害となるわけではありません。
商標権は、名称やロゴをあらゆる分野で独占する権利ではなく、登録された指定商品・指定役務と、その類似範囲を中心に効力が及ぶ権利だからです。
そのため、商標権を検索する際は、同じ名称が登録されているかだけでなく、どの商品・サービスについて登録されているかを確認する必要があります。
ある文字が登録商標に含まれていても、第三者がその文字を、商品やサービスの品質、用途、産地などを普通に説明する方法で使用している場合があります。
商標法第26条では、商品の普通名称、品質等を普通に用いられる方法で表示する場合など、商標権の効力が及ばない範囲が定められています。自己の氏名・名称を普通に用いられる方法で表示する場合にも、一定の要件のもとで商標権の効力が及ばないことがあります。
ただし、表面的には説明のように見えても、実際には商品ブランドとして目立つ態様で表示されている場合があります。
商標権侵害に当たるかどうかは、文字の意味だけでなく、表示の位置、大きさ、書体、周囲の表示、使用目的などを踏まえて判断する必要があります。
商標権者は、自社だけで登録商標を使用するのではなく、第三者に使用を認めることもできます。
例えば、次のようなケースです。
商標権者は、第三者に通常使用権を許諾できます。また、特許庁への登録を前提として、専用使用権を設定することもできます。
通常使用権は、許諾された範囲で登録商標を使用できる権利です。専用使用権は、設定登録された範囲で使用権を専有し、その範囲では商標権者自身も使用できません。
他社の名称やロゴが紛らわしいと感じても、それだけで商標権侵害かどうかを簡単に断定することはできません。
主に次の点を確認します。
まず、対象となる商標権が現在も有効であるかを確認します。
商標登録番号、商標権者、登録商標、指定商品・指定役務、存続期間などは、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で無料で検索できます。商品・役務名検索では、「書籍」のような商品に付された類似群コードも調べることができます。ただし、検索方法によって結果が異なり、情報の反映に時間を要する場合もあるため、検索結果だけで侵害を判断することはできません。
使用商標と登録商標について、外観、称呼、観念等を比較します。
一部の文字が異なる場合や、書体や図形を変更している場合でも、全体として類似すると判断される可能性があります。
反対に、共通する文字が含まれていても、その部分が商品の品質を説明する言葉である場合や、商標全体として異なる印象を与える場合には、非類似と判断される可能性があります。
商標が似ているだけではなく、使用されている商品・サービスも同一又は類似するかを確認します。
この判断では、区分番号だけでなく、商品の用途、販売部門、需要者、原材料、サービスの目的や提供方法などが考慮されます。
名称やマークが表示されていても、すべての表示が商標としての使用に当たるわけではありません。
商品やサービスの提供元を示す目印として使用されているか、単なる説明、記事中の言及、比較のための表示などにすぎないかを検討する必要があります。
自己の氏名・名称、商品の普通名称、品質、用途等を普通に用いられる方法で表示する場合などには、商標権の効力が及ばないことがあります。
また、先使用権、権利濫用、商標権の無効理由などが問題となるケースもあります。
したがって、J-PlatPatの検索結果だけを見て、直ちに侵害又は非侵害と断定することは適切ではありません。
商標権侵害が認められる場合、商標権者は、侵害者に対して次のような対応を取ることができます。
商標権者は、侵害行為を行っている者に対し、その行為を停止するよう請求できます。
また、侵害のおそれがある場合には、侵害の予防を請求できることがあります。侵害品の廃棄や、侵害行為に使用した設備の除却等を併せて求められる場合もあります。
差止請求では、原則として侵害者の故意・過失は要件とされません。
商標権侵害によって損害を受けた場合には、原則として損害賠償を請求できます。
もっとも、侵害がなければどれだけ商品を販売できたか、侵害者がどれだけ利益を得たかを権利者が立証することは容易ではありません。
そこで、商標法第38条には、次のような損害額の算定に関する規定が設けられています。
個別の事案では、商標の売上への寄与、競合品の存在、価格差、販売能力などが考慮されます。
事案によっては、次の対応も考えられます。
実際の対処を進める前に、相手方の使用画面、商品写真、広告などの資料を保存し、商標権の有効性と侵害の成否を確認する必要があります。
商標権は、他社の使用を禁止するためだけの権利ではありません。
ビジネス上は、次のような活用方法があります。
商標登録により、商品名やサービス名を継続して使用するための法的な基盤を整えられます。
新商品を発売した後で他社の商標権が見つかると、商品名、パッケージ、広告、ウェブサイト等を変更しなければならない可能性があります。
商品・サービスの企画やネーミングの段階で商標調査と出願を行うことは、名称変更のリスクを抑え、ブランディングを安定して進めるための対策となります。
登録商標であることを取引先や第三者に示すことで、類似名称や類似ロゴの採用を抑止する効果が期待できます。
実際に模倣された場合にも、登録商標と指定商品・指定役務を基礎として、使用中止や損害賠償を求めることができます。
商標権者は、第三者に商標の使用を許諾し、契約に基づいてライセンス料を受け取ることができます。
フランチャイズ、キャラクター商品、共同ブランド、地域ブランドなどでは、商標の使用条件や品質管理について契約で定めることが重要です。
商標権は財産権であるため、事業譲渡や企業買収などに伴って第三者へ移転できます。
ブランドを承継する取引では、会社名や商品名を使用できるかだけでなく、関連する商標権が適切に移転されるかを確認する必要があります。商標権の移転は、一般承継の場合を除き、原則として登録によって効力が発生します。
特許庁の「事例から学ぶ商標活用ガイド」では、企業が商標権をリブランディング、海外展開、商品シリーズの保護、地域ブランドの育成などに利用している例が紹介されています。
商標権は、模倣対策という「守り」だけでなく、新しい商品・サービスの展開やブランド価値の向上という「攻め」の知財戦略にも活用できます。
商標権を取得する一般的な流れは、次のとおりです。
商標出願では、保護の必要性を踏まえて指定商品・指定役務を選択し、願書に記載して所定の費用を納付します。指定範囲は権利範囲に影響するため、その選択には注意が必要です。拒絶理由通知を受けた場合は、審査官の指摘に対する意見を意見書で述べ、必要に応じて補正書を提出します。手続きや費用は、区分数や審査の経過によって異なります。
日本では、原則として、先に使用した者ではなく、先に出願した者が優先される先願主義が採用されています。
そのため、商品・サービスの発表後ではなく、名称やロゴの採用を決めた段階で先行商標を調査し、出願することが重要です。
商標権の存続期間は、設定登録の日から10年です。ただし、更新登録申請を行うことで、10年ごとに何度でも更新できます。長期間使用するブランドについては、更新期限を継続的に管理する必要があります。
商品やサービスには、商標権以外の知的財産権が関係することがあります。知的財産には、商標のほか、特許、意匠、著作権などがあり、保護する対象や手続が異なります。
| 権利 | 主な保護対象 | 例 |
|---|---|---|
| 商標権 | 商品・サービスを区別する名称やマーク | 商品名、サービス名、ロゴ |
| 特許権 | 技術的な発明 | 製品の構造、製造方法 |
| 意匠権 | 物品・画像・建築物等のデザイン | 製品形状、包装、画面デザイン |
| 著作権 | 創作的な表現 | イラスト、文章、写真、音楽 |
例えば、一つの商品について、商品名を商標権、製品の技術を特許権、外観デザインを意匠権、パッケージ上のイラストを著作権で保護できる場合があります。
ただし、それぞれの権利は、発生要件、存続期間、権利範囲が異なります。商標権は、商品やサービスの提供元を区別し、そこに蓄積された信用を守ることを主な目的とする点に特徴があります。一つの商品について商標、特許、意匠等を組み合わせて保護する場合もあるため、どの権利を選ぶか判断が難しいときは、弁理士などの知的財産の専門家に相談する方法があります。
商標権は、登録した名称やロゴを無条件に独占できる権利ではありません。登録商標、指定商品・指定役務、相手方の使用態様を併せて確認する必要があります。
商標権の範囲は、主に次の要素から判断されます。
商標権者は、指定商品・指定役務について登録商標を使用する権利を専有し、その類似範囲における第三者の使用を排除できます。
また、商標権は、侵害行為を差し止めるためだけでなく、ライセンス、フランチャイズ、事業譲渡、海外展開、リブランディングなど、さまざまなビジネス戦略に活用できます。
一方、名称やロゴを先に使用していても、商標登録を受けていなければ、十分な保護を受けられない可能性があります。
新しい商品名やサービス名を採用する際は、使用を開始する前に先行商標を調査し、適切な指定商品・指定役務について商標登録出願を行うことが重要です。
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARKでは、商標調査、商標登録出願、商標権の権利範囲の鑑定、ライセンス、侵害対応、国内外の商標ポートフォリオ管理まで、事業内容に応じてサポートしています。