1.契約書の意味・役割
日本法においては、原則として両当事者の意思の合致さえ認められれば、口頭の約束のみにおいて契約は成立します。そうすると、わざわざ契約書を作成することは面倒だと感じる向きもあると思われます。
しかしながら、ごく単純な取引関係である場合(1回あたりの商品のやり取りで終了するような場合)を除き、下記のとおり、契約書の作成は非常に重大な意味を持ちます。
- (ⅰ)契約の具体的な内容、成立日時等を後日証明できるようにしておくことで、紛争を予防する
- (ⅱ)当事者間の権利義務の内容を明確にしておき、予期せぬ紛争が生じた場合に、予め責任の所在を明確にしておく
2.著作権に関わる契約
著作権に関わる契約としては、主に以下のものが考えられます。
(1)著作物の利用許諾
著作権者が、自ら著作権を有する著作物に関し他者に利用許諾するというものです。この場合、利用しようとする側の当事者は、相手方が真の権利者であるのか、著作者が他に存在するのかについて留意する必要があります。
(2)著作権の譲渡
著作権を譲渡する契約です。この場合、移転するのは著作権だけであり、著作者人格権が移転することはありません。人格権の不行使特約を結ぶことが一般的です。
(3)出版関係
出版社と著作者・著作権者の間で交わされる契約で、著作権法第79条以下に定められた出版権を設定する契約や、このような出版権は設定しないまでも単に出版を許諾するという内容の契約があります。
昨今、法改正により、電子出版物に対する出版権が認められたことから、従前のままの出版権設定契約は見直す必要があるといえます。また、出版に関する契約には、電子出版を視野に据えることが必須となるでしょう。
さらに、より具体的な場面を考えると、下記のような場合にも著作権法上の権利がかかわることから、契約書の締結が重要な意味を持ってきます。また、下記の場面については、上記(1)著作物の利用許諾や(2)著作権の譲渡さらには(3)出版関係についてもその内容に含める場合が多いと考えられます。
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具体的場面 |
問題となり得る権利・事項 |
① |
講演会 |
著作権者の権利(特に複製権・公衆送信権)、著作物の二次的利用に関する権利、著作者人格権etc |
② |
演奏会や上映会 |
著作権者の権利(特に演奏権・上映権)、著作者人格権、著作隣接権に関する権利etc |
③ |
原稿執筆、イラスト作成、写真撮影等の依頼 |
著作権者の権利(特に複製権・展示権・譲渡権)、著作者人格権、著作物の二次的利用に関する権利etc |
④ |
原稿・イラスト・写真等の既存の著作物の利用 |
著作権者の権利(特に著作権の帰属)、著作者人格権、著作物の二次的利用に関する権利etc |
⑤ |
作品の公募 |
著作権の移転、著作物の二次的利用に関する権利、著作者人格権etc |
※上記は、特に著作権法上問題となり得る事項を例示的に列挙したもので、生じ得る問題は上記の他にも多々存在します。
3.契約書に関する注意事項
契約自由の原則により、契約で定めた条項が法令などに反しない限り、契約当時者の意思の合致により、その通りの権利義務が発生します。しかしながら、法令違反が存在する場合は、その条項は効力を持たなくなることから、契約書の作成に当たっては、各種法令の知識も必要となります。
4.一般的なチェック事項
契約書に記載する内容については、各種契約の具体的な内容にもよりますが、おおまかに下記のとおりです。
(a)表題
(b)印紙
(c)前文(当事者の表示等)
(d)契約の目的
(e)各当事者の権利義務の内容
(f)条件・期限・存続期間
(g)契約の解除・損害賠償
(h)費用負担の分配
(i)契約書規定外の事項の取扱
(j)準拠法・合意管轄
(k)後文(契約書の作成通数)
(l)契約書作成年月日
(m)当事者の署名押印または記名押印
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当所では、専門スタッフが上記のような著作権に関わる契約につき、契約書や覚書の作成、さらにそれら内容の校正・チェックを行います。
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