目次
はじめに
令和元年の意匠法改正によってGUI・アイコン等の画像のみの意匠が意匠法で保護されるようになりました。その後、GUI・アイコン等を含む画像意匠(日本意匠分類N3_画像デザイン)の出願件数は急速に増加し、年間の出願件数に占める分類別の割合は、「包装紙、包装用容器等(F4)」に次ぐ2位となり注目の高さが伺えます。1
これらの出願はIT業界のみならず、自動車、建築、医療などあらゆる業界にわたっており、GUIデザインの重要性、デザイン経営の認識の高まりが反映されていると考えられます。
特許庁 出願等統計(2023年版)について 2023年7月28日 5.分類別統計表 (5)意匠(出願)より作成
1特許庁 出願等統計(2023年版)について 2023年7月28日
意匠権取得のメリット
意匠権の取得により、意匠権の活用という本来のメリットに加えて、創作したデザインが意匠権として登録されることによって、創作者のモチベーションが向上し、更なる利便性追求に繋がるということが期待されます。そうなるとGUIを用いた製品の品質が向上し、ブランド力や企業価値が向上するというメリットもあります。
また、アイコンの意匠権については、「よくあるアイコンだから」「新規性がないから」等と創作者が考える場合もあるかもしれませんが、実に様々なアイコンが意匠登録されている現状を鑑みれば、少なくとも各製品に共通して使用するアイコンやGUIについては安全に実施するために出願して他社の権利侵害となっていないかを確認するということも重要になってきます。
開発部門への働きかけ
しかしながら、システム開発部門やその他GUI開発部門等においてGUI・アイコンが意匠法の保護対象となっているという認識が依然として低く、創作した画像の保護がされないまま埋もれてしまっている実情が少なからずあるようです。このような場合は、類似のGUIを他社に実施されても許容せざるを得ない状況になりデザイン開発への投資が十分回収できません。
また、GUIを含む画像意匠への登録件数が急増している状況下では、特定の用途機能の画像について多数の意匠権が成立している場合もあり、十分な注意を怠ると他社の権利を侵害してしまうことになりかねません。そうなると意匠権の存在を知らなかったでは済まされず、損害賠償責任や、差し止め、デザイン変更等で多大な損失を被る可能性があります。
これらのリスクを回避するためには、知財部による啓発活動や、社内勉強会などの働きかけによって、開発部門に画像意匠が意匠法による保護の対象となっていることや、意匠保護の重要性を認識してもらい、新たな画像デザインを開発したときには、遅滞なく知財部へ情報が共有されるような仕組みを作ることが欠かせません。
最近のGUI・アイコンの登録事例
以下のように、シンプルなGUIの登録や、アイコンの登録が増加しています。これらの権利範囲については、画像自体の用途や機能の類似性が考慮されますので業界を超えて画像(GUI等)が類似するケースも出てくることが予想されます。
医療情報表示画像(意匠登録第1741373号)
富士フイルム株式会社、富士フイルム医療ソリューションズ株式会社
【画像図】
【参考画像図】
アプリケーション起動表示用画像(意匠登録第1746169号)
グーグル エルエルシー
【画像図】
【変化後を示す画像図1】
【変化後を示す画像図2】
【変化後を示す画像図3】
【変化後を示す画像図4】
アイコン用画像(意匠登録第1761055号)
東芝テック株式会社
【画像図】
【参考文献】Depositphotos, Inc、ホームページ掲載実績あり、(特許庁意匠課公知資料番号RJ04151991)
アイコン用GUI(意匠登録第1753148号)
アルトリア クライアント サーヴィシーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
【参考文献】
米国特許商標公報、(2013-1-15)、D674405、(特許庁意匠課公知資料番号 HH25301654 )
意匠調査
上記の様に、業種を問わず、既に沢山の画像意匠の意匠権が登録されている状況において、偶然に他社の意匠権に類似する意匠を創作し実施した場合でも、(意匠権侵害には依拠性が不要なので)意匠権侵害となってしまいます。このような不測の事態を防ぐためにも、意匠調査が重要になります。
特許庁及びINPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)が、「画像意匠公報検索支援ツール」を提供しており、以下のような画面から、画像意匠検索を簡単に行うことが可能です。
画像意匠公報検索支援ツールの画面
出典:特許庁及びINPIT (https://www.graphic-image.inpit.go.jp/)
ただし、上記のツールは機械的な照合によって、対象画像に近いものが順に表示されるもので、必ずしも類似する意匠が上位に表示されるということではない点に注意すべきです。
弊所では、画像意匠の侵害予防調査を承っております。当該調査では、上記ツールと異なり、弁理士が「類似」の可能性があると判断した先行意匠を抽出して、類似の程度を評価します。このような調査を合わせて活用することにより、侵害を未然に防ぎ、他社の動向を確認しつつ、オリジナリティを追求した利便性の高いGUIの創作が進められると考えます。
最後に
貴社のGUIデザイン開発者に、知財の重要性を認識してもらうことはハードルの高い作業になるかもしれません。そのようなときは、弊所のセミナーをご活用ください。弊所にお任せいただければ、デザイン開発者向けの画像意匠セミナーにて、画像意匠制度や登録事例等について分かりやすく解説し、知財についての理解を深めて頂くのにお役に立つことができます。
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