商標の基本的な話

商標の種類とは?商標登録の対象となる10種類の特徴と選び方を弁理士が解説

監修者 弁理士 石黒 智晴

商品名やサービス名、会社のロゴ、キャラクター、CMで流れる音などは、一定の要件を満たせば商標登録の対象になります。スポーツ用品や服、ゲーム、飲食サービス、オンラインサービスなど、事業分野を問わず、商品・サービスの名前やマークを適切に保護することは、ブランドを守る第一歩です。

日本の商標制度では、文字商標や図形商標など従来からあるものに加え、動き商標、音商標、位置商標などの新しいタイプも登録の対象とされています。商標の種類を選ぶ際に重要なのは、「何を使って自社の商品・サービスを他社のものと区別しているか」を明確にすることです。名称を保護したいのか、ロゴのデザインを保護したいのか、商品形状や音まで保護したいのかによって、適切な出願方法は異なります。

なお、「商標の種類」と「商品・役務の区分」は別の概念です。商標の種類はマークの構成や表現方法を示し、区分は商標を使用する商品・サービスを第1類から第45類に分類したものです。本記事では、商標の種類を一覧で紹介したうえで、区分との違い、商標登録の流れ、種類の選び方まで具体的に解説します。

商標とは

商標とは、事業者が、自社の商品又はサービスを他人の商品又はサービスと区別するために使用する標識です。商標法という法律により、文字、図形、記号、立体的形状、色彩、音などが保護の対象となり得ます。

商標登録を受けると、指定した商品・役務について登録商標を使用する権利を専有し、一定の範囲で独占的に使用できます。また、同一又は類似の範囲における他人の使用を排除できる場合があります。ただし、権利範囲は商標の種類だけで決まるものではありません。登録した商標の構成、指定商品・指定役務、取引の実情などを踏まえて判断されます。

商標の種類一覧

日本で登録対象となる商標は、実務上、次の10種類に整理して説明されることが多くあります。

種類主な内容例・活用場面
文字商標文字のみからなる商標商品名、サービス名、会社名、ブランド名
図形商標図形やイラストからなる商標シンボルマーク、キャラクターの図形
記号商標記号や幾何学的な形からなる商標特徴的な記号、図案化したマーク
結合商標文字、図形、記号等を組み合わせた商標文字入りロゴ、ブランドロゴ
立体商標立体的形状からなる商標商品容器、包装、店頭人形
動き商標時間の経過に伴い文字・図形等が変化する商標動画広告、画面上で動くロゴ
ホログラム商標見る角度等により文字・図形等が変化する商標カードやラベル上のホログラム
色彩のみからなる商標輪郭を伴わない単色又は複数色の組合せ包装、看板、店舗表示の色彩
音商標音楽、音声、自然音等からなる商標CMのサウンドロゴ、起動音
位置商標商品等に標章を付す位置が特定された商標靴、容器、カード等の特定位置の図形

文字商標、図形商標、記号商標、結合商標、立体商標は従来から保護されてきたタイプです。2015年4月からは、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標の5種類も登録対象になりました。以下、それぞれの特徴を紹介します。

従来からある5種類の商標

文字商標

文字商標は、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、数字などの文字で構成される商標です。商品名、サービス名、会社名、店舗名、アプリ名など、ネーミングそのものを保護したい場合に適しています。

文字商標は、特許庁が定める標準的な文字で出願する「標準文字」と、特定の書体で表した文字を商標見本として出願する方法に大きく分けられます。書体に特段のこだわりなく権利化を希望される場合には標準文字が有力ですが、特殊な書体自体がブランドの特徴である場合には、そのデザインを含む形で出願することも考えられます。

紙のパンフレットや印刷物、商品パッケージ、ウェブサイト、ブログなど、複数の媒体で同じ名前を使用する場合は、媒体ごとの表示が変わっても名称を守りやすい文字商標が有効です。

図形商標

図形商標は、イラスト、模様、図案など、視覚的な図形からなる商標です。企業のシンボルマークや、文字を含まないロゴマーク、キャラクターのイラストなどが代表的な例です。

図形商標では、図形の全体的な外観や印象が重要になります。文字がなくても、継続的な広告や販売を通じて、その図形を見ただけで特定の企業や商品を認識してもらえる場合があります。

記号商標

記号商標は、円、三角形、矢印、星形その他の記号や、記号を図案化したものからなる商標です。実務上は図形商標と近接する場合もありますが、単純な記号であっても、構成や使用方法によって自他商品・役務を識別する機能を持ち得ます。

ただし、一般的に使用される単純な記号や、商品の品質・規格を示すにすぎない表示は、識別力がないとして登録を受けられない可能性があります。

結合商標

結合商標は、2以上の文字、図形、又は記号の組み合わせからなる商標です。また、2以上の語を組み合わせてなる文字商標も結合商標に含まれます。企業やブランドのロゴは、名称とシンボルマークが一体になった結合商標に該当するケースが多く見られます。

結合商標として登録した場合、原則として登録された全体の構成が権利の基礎になります。そのため、名称部分を単独でも使用する予定があるときは、文字商標と結合商標を別々に出願する方法も検討すべきです。出願件数が増えると費用もかかるため、実際の使用態様と保護の優先順位を整理することが重要です。

立体商標

立体商標は、商品、容器、包装、店舗設備、キャラクター人形などの立体的形状からなる商標です。単に新しいデザインであるだけでは足りず、その立体形状が商品・サービスの出所を示す標識として認識される必要があります。

特に、商品の機能を確保するために不可欠な形状や、同種の商品に一般的に採用される形状は、商標登録が難しい傾向があります。

長年の使用や広告によって特定の企業の商品であると広く認識されていることが、登録判断で重要になるケースもあります。

新しい製品形状については、商標権だけでなく、意匠法に基づく意匠権による保護が適する場合もあります。商標と意匠では保護の目的、登録要件、存続期間が異なるため、開発段階で知財戦略を検討すると効果的です。

2015年から登録対象となった5種類

動き商標

動き商標は、文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標です。テレビCM、ウェブサイト、アプリの起動画面などで、企業ロゴやキャラクターが一定の順序で動く表示が例として挙げられます。

出願時には、一つ又は複数の図や写真によって変化の状態を示し、商標の詳細な説明を記載して、動きの順序や内容を特定します。単なる動きだけではなく、変化する文字や図形等が商標の構成要素となります。

≪登録例

ホログラム商標

ホログラム商標は、ホログラフィーその他の方法により、見る角度などに応じて文字や図形等が変化して見える商標です。カード、証票、商品ラベルなどに付されたホログラムが、特定の事業者を示す表示として機能する場合が考えられます。

出願では、変化の前後を示す複数の図又は写真と詳細な説明によって、保護を求める商標を明確に特定します。光沢のある素材や装飾であるだけでは、直ちに商標登録できるわけではありません。

≪登録例

色彩のみからなる商標

色彩のみからなる商標は、文字や図形の輪郭を伴わず、単色又は複数の色彩の組合せのみで構成される商標です。商品の包装、広告用看板、店舗設備などに一貫して使用される色彩が、ブランドの出所を示す場合があります。

色彩は、多くの事業者が自由に使用する必要があるため、一般に識別力が認められにくく、登録のハードルは高いといえます。使用期間、販売実績、広告の状況、需要者の認識など、使用によって識別力を獲得したことを示す資料が重要になる場合があります。

≪登録例

音商標

音商標は、音楽、音声、自然音その他の音からなり、聴覚によって認識される商標です。CMで繰り返し使用される短いメロディ、企業名を読み上げる音声、製品の起動音などが代表例です。

出願する音は、文字又は五線譜等を用いて商標記載欄に表し、音声ファイルを提出して特定します。商品が通常発する音や、ありふれた効果音、単に楽曲として認識される音は、登録が難しい場合があります。

≪登録例

位置商標

位置商標は、文字や図形等の標章を、商品等の特定の位置に付すことによって構成される商標です。例えば、靴の側面、容器の一定の場所、カードの特定部分などに、同じ図形を継続して配置するケースが考えられます。

出願時には、保護を求める標章を実線で、商品等のその他の部分を破線で示すなどして、標章とその位置を特定します。商品形状そのものを保護する立体商標とは異なり、位置商標では「どの標章を、どこに付すか」が権利内容の中心になります。

≪登録例

キャッチフレーズやキャラクターは何商標か

キャッチフレーズは、商標法上の独立した「種類」ではありません。文字だけで出願すれば文字商標、特徴的な書体や図形と組み合わせれば結合商標として扱われます。

キャッチフレーズが、商品の宣伝文句や企業理念を普通に表したものとしてのみ認識される場合は、識別力がないとして拒絶される可能性があります。一方、指定商品・指定役務との関係で直接的な意味を持たない造語的な表現である場合や、長期間の使用によって出所表示として認識されている場合などは、登録が認められる余地があります。

キャラクターについても同様に、キャラクター名は文字商標、イラストは図形商標、名称とイラストを組み合わせたものは結合商標、人形の立体的形状は立体商標として出願することが考えられます。保護したい対象を分けて検討することが必要です。

≪登録例

商標の種類と区分の違い

商標の種類は、文字、図形、音など、商標の構成や表現方法を示します。これに対し、商標登録の区分は、商標を使用する商品・役務を整理するための分類です。

区分は国際的な分類に基づく第1類から第45類まであり、第1類から第34類は商品、第35類から第45類はサービスに関する区分です。例えば、化粧品、菓子、服を含む被服、広告、通信、教育、飲食物の提供などは、それぞれ関係する区分や指定商品・指定役務が異なります。

同じ名称やロゴであっても、指定商品・指定役務が異なれば、別の商標登録が併存することがあります。ただし、区分が異なれば必ず非類似になるわけではなく、同じ区分であっても全部の商品・役務が類似するわけではありません。商標の類似と商品・役務の類似を個別に確認する必要があります。

自社に適した商標の種類を選ぶ方法

名称を継続して使うなら文字商標を検討する

商品名やサービス名をさまざまな書体やデザインで使用する予定がある場合は、名称そのものを標準文字で出願する方法が基本的な選択肢になります。ロゴを変更しても、登録した文字商標の範囲で名称を保護しやすい点がメリットです。

ロゴがブランドの中心なら図形・結合商標を検討する

図形や文字のデザインが顧客に強く認識されている場合は、図形商標又は結合商標の取得を検討します。名称とロゴの両方を重要なブランド資産として使用する場合には、文字商標とロゴ商標を別々に登録する戦略もあります。

使用態様が変わりにくい形で出願する

商標権は登録された商標を基礎とするため、登録後にロゴの構成や色彩を大きく変更すると、登録商標の使用と評価されない可能性があります。将来のリニューアルや海外展開も見据え、長期的に使用できる形を選ぶことが重要です。

外国で商標権を取得するには、原則として対象国・地域ごとに権利化を検討する必要があります。海外向けの名前、翻訳、現地で使用するロゴが国内と異なる場合は、外国出願を含む国際的なブランド戦略も早めに整理しましょう。

特殊な表現は証拠と出願方法を早めに検討する

立体商標、色彩のみからなる商標、音商標などは、識別力や商標の特定方法が問題になりやすい種類です。販売実績、広告資料、使用期間、メディア掲載、需要者調査などの証拠が必要になるケースもあるため、企画段階から弁理士に相談すると出願方針を立てやすくなります。

商標登録の基本的な流れ

商標登録の一般的な流れは、①先行商標の調査、②願書の作成と出願、③特許庁による方式審査・実体審査、④登録査定、⑤登録料の納付、⑥設定登録です。登録後は商標登録番号が付され、「商標登録第○○号」のように確認できるようになります。

出願前には、J-PlatPatの検索画面で名称や読み方を入力し、似た商標の存在、出願人、指定商品・指定役務、登録番号などを調べます。簡単な検索は自分で無料で行うことも可能ですが、類似判断や適切な区分の選定には専門的な検討が必要です。

審査で登録できない理由が見つかった場合は、拒絶理由通知が発せられます。この場合、指定された期間内に意見書や補正書を提出して対応します。最終的に拒絶査定となった場合には、拒絶査定不服審判を請求できるケースもあります。

商標登録を進める際の注意点

第一に、出願前に先行商標を調査することが必要です。J-PlatPatでは無料で登録商標や出願中の商標情報を検索できますが、完全一致する名称だけでなく、読み方、外観、意味が類似する商標も確認しなければなりません。

第二に、商標の種類と指定商品・指定役務を一体で設計することが重要です。商品名だけを決めても、どの商品・サービスについて権利を取得するかが不明確では、事業に必要な範囲を十分に保護できません。

第三に、登録可能性と使用上のリスクは別に検討します。特許庁の審査を経て登録された場合でも、著作権、意匠権、不正競争防止法上の問題や、他人の周知表示との関係が生じることがあります。反対に、商標登録を受けていない表示であっても、他人の権利を侵害しないとは限りません。

商標出願の手続きでは、願書、商標見本、指定商品・指定役務等を適切に記載し、必要な費用を納付します。新しいタイプの商標では、商標の詳細な説明や音声ファイルなど、通常の文字商標とは異なる書類・資料が必要になる場合があります。出願内容に不備があると、補正や拒絶理由への対応が必要となるため、事業上重要なブランドについては、弁理士又は特許事務所への依頼を検討するとよいでしょう。

個人事業主や中小企業が自分で出願することもできますが、指定商品・指定役務の記載や先行商標との類似判断を誤ると、権利取得までに余分な時間や費用がかかることがあります。専門家のサポートを利用する場合は、調査、願書作成、出願手続の代行、審査対応、海外展開まで、依頼できる内容を事前に確認しましょう。

登録後の管理も重要

商標権の存続期間は設定登録の日から10年で、更新登録によって権利を維持できます。更新期限を管理するとともに、登録した商標と実際に使用しているロゴや名称が大きく変わっていないか、事業の拡大によって新たな商品・サービスの保護が必要になっていないかを定期的に確認することが大切です。

また、他社による類似商標の出願や不正な使用が発生していないかを調べ、必要に応じて異議申立て、無効審判、警告、訴訟などの対応を検討します。商標登録は取得して終わりではなく、ブランドの運営方針に合わせて継続的に管理する必要があります。

まとめ

商標には、文字商標、図形商標、記号商標、結合商標、立体商標に加え、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標があります。

自社に適した種類を選ぶには、名称、ロゴ、形状、色彩、音などのうち、顧客が何を手掛かりに商品・サービスを識別しているかを考えることが出発点です。また、商標の種類だけでなく、商品・役務の区分、指定商品・指定役務、先行商標との類似、実際の使用方法、将来の海外展開まで総合的に検討する必要があります。

商標は、ブランドを守り、模倣や他社による先取り出願に対応するための重要な知的財産です。名称やロゴを決定した段階で調査を行い、事業計画に合った種類と区分で商標登録を進め、その後も適切に管理することをおすすめします。

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